The end(仮)

音央とお

プロローグ

3日後に世界はリセットされる



それは夕飯時のことだった。

緊急速報が流れ、人々は混乱の渦に陥った。テレビもラジオも特別番組に切り替わり、阿鼻叫喚の書き込みで埋め尽くされるSNS。これまでの日常が非日常に変わるのなんて瞬く間だった。


あまりに急な話なので、伊丹澪いたみれいはその事に気付くのに出遅れた。

バイトから帰宅して、スーパーで買った弁当を温め、食事の片手間に父親からのビデオチャットに応じようとしてやっと気付かされたのだ。


五十も近い父親が泣いている。元々何かと感情表現の豊かな人であったから驚くほどのことではないのだが、いつにも増して落ち着かない様子で喋っている。



この世は終わった

こちらは既に暴動が起き始めている

飛行機のチケットはもう取れそうにない

最期の時を1人で過ごさなければならない



そして、また連絡をすると名残惜しそうに父は通話を終えた。

現実味のない話に澪の口から溢れた言葉は呑気なものだった。


「こんなことなら3割引の弁当にするんじゃなかった」


節約なんてもう意味がない。


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