第1詩

死んだはずの親父から手紙が届いた。

とりあえず一呼吸置いて、家の中に戻る。居間に着いて、封筒を開く。そこには、二枚の紙類と共に手帳が入っていた。まずは、手紙から手を出すことにし、丁寧に折られた便箋を開ける。


〈雄太へ〉

この手紙が届いてる頃には、恐らく、いや、必ず俺は死んでいるだろう。

取り敢えず時間がない。

 俺の刑事人生の最後の事件。解決することのなかった未解決事件。そして、俺の人生最後の博打。それにおいて、重要な人物に出会えることができた。

 兎に角時間がない、場所だけ記した地図だけ伝えておく。

すまない。守ってやってくれ。

 父

ーーーーーーー


手紙と共に封入されていたもう一枚の紙には、手書きの地図が描かれていた。

 懐かしい温もりを感じた。同時に虚しさも感じた。

幼い頃、物心付かないうちに母を亡くした俺を男手ひとつで育ててくれた父さん。

 もし、父さんが単なる事故で死んだのでないなら、父の死の真相を知りたい。

 向かう以外の選択肢はなかった。父の地図には目標の場所に罰印が押されている。地形から見るに山奥。父が勤務していた交番の裏の山であろう。

 全速力で自転車を走らせて、全速力で山を駆け上がれば日暮れまでには、着けそうだ。そうと決まれば行動だ。

 父の残した手紙と地図と手帳を持ち、戸締りをして、自転車に股をかける。ペダルを配置に着かせて、一斉に漕ギ始メ。

 鉄の馬は、風を斬るかの如く颯爽と駆け抜ける。父が職場に向かう為に使っていた航路を辿り、向かう。

 無我夢中に漕ぎ続け、あっという間に裏山の入り口に自転車を止める。盗まれないように鍵をかけ、人目のつかない茂みに自転車を隠し、山を登りはじめる。

 わずかに開いた細道は立ち入る物を拒むかのように少しずつ狭まっていく。

 手書きの地図の正確性にも限りがある。太陽の位置を確認し方角を確認しながら、慎重に進む。

 山に入って4時間ぐらい経っただろうか。 真上に昇っていた太陽もいつのまにか、西に傾いていた。

日が沈むまで、およそ1時間30分近く、進んでる方向が正しければもうそろそろ着くはずだが...

不安を覚えながら足を進める。

しばらく進むと、開けた土地に出た。地形から見るに、恐らくここが目指して場所だろう。周りを見渡して見ると小さな小屋がひっそりと佇んでいる。

 慎重に近づいて、小屋の中を覗く。

どうやら誰か住んでいるようだ。恐らく、父さんが追っていた事件の鍵にを担う人物が住んでいるのだろう。

 どんな人が住んでいるのだろう。


とんとん


不意に叩かれた肩、振り返ると銀髪の少女が立っていた。

「何してるんですか?」

少女は疑いの眼差しよりも、純粋無垢の眼差しを向けてきた。白銀に輝く瞳につい見惚れてしまった。

「あ、あぁ父さんにここに来るように言われたんだけど」

「お父さん?」

どうも、父さんが言っていたような重要な鍵を握る人物には思えない。それでも何か、初めて会ったような感覚がしない。この子になら全てを明かしても良い気がする。


「渡邊 勇雄って言うんだけど分かる?」

父の名を聞いた時の彼女の反応は、まるで餌をねだる猫のように必死なら訴えようとしてきた。

「イサオ、イサオの息子さんなんですか!?」

どうやら、父さんがあるようだ。俺がイサオの息子だと知った彼女は家の中に招き入れてくれた。

 彼女の話を聞くからに、名前は鈴。年齢は15歳。元々、母と二人で暮らしていたらしく、4年前に母親が行方が消えてしまい、入れ替わるかのようにイサオが現れたと言っている。

 生前の父は、一週間に一度程度会いに来てくれてたらしい。父の事を嬉しそうに話してくれる鈴を見て俺は微笑ましいと思ってしまい、父が亡くなってしまった事を話そうか戸惑いを覚えてしまった。それでも、話さなきゃいけないと思い、父に起こった悲劇と父の残した手紙について、彼女に全てを打ち明けた。

 彼女にとっての、母親の代わりのような存在で瞳からぼろぼろ、涙が溢れ出ていた。

 守ってやってほしい。

親父はそう言っていた。守らなきゃいけない。本能がそう言っている。彼女の悲しみのダムが塞き止められる頃には、もう太陽は沈み切っていた。

 と言いつつ、何から守れば良いんだ。そこまで教えてくれれば良かったのに。

 ガサガサ

茂みの方から、物音がした。危険な匂いがする。俺は、咄嗟に彼女とベッドの下に隠れ

た。足音は段々と、こちらに近づいて来る。

扉が開く、雄々しい足音は威圧感がある。

暗闇に慣らした目で足音を覗く。

そこには、黒色のスーツに身を包んだ巨漢が立っていた。奴の右手には、拳銃が握られている。

 巨漢は、辺りを見渡し標的を探しながらも、諦めたかのように家から出て行った。

 小1時間程だった頃俺たちは警戒をやめ、出ようとするが!?

鈴が、

「もう少し、こうしていたいです...」

どうやら落ち着くらしい、別に嫌な思いをするわけでもないので願いを聞き入れ1日が終わった。 

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涼風の歌 妄想癖 @babuuumamar

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