第2話

「隆、クラスどうだった?」


冬の寒さが落ち着き、心地よい春風が吹き始める4月、僕は幼馴染の樹と、高校の入学式に来ていた。


校門をくぐって直ぐにある掲示板前は、新入生で溢れている。


みな、卸たてのしわ1つない綺麗な制服に身を包み、掲示されている自分のクラスを必死に探している。


そんな人混みに、僕も混ざって自分のクラスを確認する。


ついでに、背の低い幼馴染の為に彼女の名前も探す。


「あった、僕が2組で樹は5組だ」


「ありゃ、やっぱり同じクラスにはならないか…」


「当たり前だろ、同じにならないように分けられてんだから。ましてや僕達の中学から入ったのは僕と樹だけだし」


僕の返答が気に入らなかったのか、ふぅん、とつまらなそうに呟く樹。彼女とは家が隣同士である事と、親同士の仲が良かったことから幼稚園からの付き合いだ。


しかし、小学校だけは別だった。僕と彼女の家が町の端っこという事もあってか、ギリギリで違う学区になってしまったのだ。


それでも、朝は毎日の様に会うしサッカークラブは同じチームだったので疎遠にはならなかった。


「隆、部活はやっぱりサッカー?」


「うーん、どうしようかな。正直帰宅部でも良いと思ってる」


「そうなんだ。…じゃあさ、他の部活の見学後で行ってみようよ」


「あー、分かった。じゃあホームルーム終わったら連絡する」


玄関をくぐり、互いのクラスに向かって歩き出す。


僕達の通うこの高校は一応進学校と言える位の偏差値で、校舎は昨年改装したばかりなのでとても綺麗だ。未だ汚れる事を知らない真っ白な壁に沿って歩いてると、1年2組の教室が見えてきた。


クラスのドアに付いている看板は以前のものをそのまま使っているようで、薄汚れている。


教室の中には30個ほど机が置いてあり、そのうちの半分くらいにクラスメイトと思わしき人たちが座っている。


しかし、みなしんとしていて、誰一人喋る人はいない。こう言う時、漫画や小説であれば絶対一人はいる委員長キャラやコミュ力お化けが仲の良いグループをすぐに作る物なのだが、現実はそうではないらしい。


少し驚い僕は教室の全体をじっくりと見回してみる。新校舎ということで、前黒板も後黒板もかなり綺麗だ。部屋は結構広く、机と机の間に人二人は通れるスペースがある。


「あ、座席表...」


前黒板に貼り出されている、小さなb5サイズのプリントをよく見てみると座席表であった。


僕の席は一番後ろの窓側の様だ。普通、最初の席順といえば番号順であるがここは違うらしい。あれって席決めるのが面倒くさいのもあるけど、何より入学後すぐに配られる書類を回しやすくするのもあるのに不思議である。


「ま、気にするほどのことじゃないね」


ボソリと呟きながら僕は自らの割り当てられた席に座り、スマホのメッセージアプリを開き樹へとメッセージを送るのだった。


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拝啓、 茶牛/Sagyu @ChauC10new

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