第7話 旧世界を殺した者2
「こ、こいつ…傷1つ負ってねぇぞ!!。」
「動じるな!。予想はしていた。」
白すぎる肌…これはただお家に篭ってゲームをしているからでは無い。
接合点…彼らは膨大な魔素を体内に『有している』。異世界の種族は保有量や特性に差はあれど体構成を魔素によって強化している。
当然この接合点も然り。
膨大な魔素が全身…特に炭素を凝縮&強化していく結果、体の炭素が白色化して行った先がこの白い外皮だ。
炭素は最高高度&強度とされる物質だ。繊維状にすれば鉄の数倍・数十倍の強度を持ち、結晶化すれば知らぬ者は居ない最高高度の鉱物…ダイヤモンドになる。
金属においても純金属より炭素をいくらか含有させた方がその硬度は高くなる(法化物質は純度が高い程高い法化レベルでできる為このような合金の類は使用されないが)。
つまり…この接合点と呼ばれる生物は…。最高硬度の外皮を持ち、その裏に絶大な量の魔素を含んでいるのだ。
触っただけで純人間が法化してしまう程に…。
「……、 …… …、…」
白すぎる男が口をパクパクさせている。
「キャプテン、なんか言ってますよ。」
「おう、殺せ。」
再びアサルトライフルの照準を接合点の頭に、
「貫通は無理でも頭を撃ち続ければ昏倒するだろ。後は試せる事試して無理なら帰ってビールだ。」
「なぁ、君達…。デモスレの20巻知らない?。」
3人揃って射撃に移る。
しかし、接合点は1人の男に向かって走る。
「ポテトッ!!。」
「任せて下さい!!。」
この隊で唯一ぽっちゃりした体型の獣人。しかしぽっちゃりとは見た目の話で…この隊で1番の体重・体格…すなわち筋肉量を有するヘビーナイトである。
「死ねデブッ!。その血と脂肪を撒き散らせ!!!」
「僕はデブじゃなぁぁい!!。」
接合点の高速右ストレート。走り込んだスピードも余すことなく乗せたその拳は凶器そのもの。
しかし、ぽっちゃりこと筋肉系ヘビーナイト…ポテトは持久走ならともかくその瞬発力は凄まじく、その拳を紙一重で避ける。
「寝てろもやし野郎。」
そのまま前に出た接合点の右足を体の外に飛ぶように内側から強く蹴る。
これによって倒れた接合点の頭部に弾をぶち込む。…はずが…。
「倒…れないっ?!。」
接合点の筋肉質ながら細い足が、ポテトの太い足を微動だにせず受け止める…。
「『軽いね』君…。何キロよ?。」
「……98キロだ…。」
ポテトの身長は176cm。おそらく接合点の身長は174cm程か…。
「ふふ(笑)……僕ね、『240キロ』なんだ。動物園の体重計で測ったよ。」
再び右ストレート。
体格差に絶対の自信が有ったポテト。しかし、相対する者が自分より遥に上級のヘビーナイトだとゆう事への衝撃にほんの僅かな隙が生まれる。
「避けろッッ!!ポテトォッッ!!!。」
「はっ!しまっ…」
ぶつかる。
超高硬度かつ高速の重量鈍器が、
柔らかい肉が、脆い骨の周りに付いた物に。
パァァアンッッ!!!!
そして弾け飛ぶ。
あまりの質量・速度にポテトの頭部は耐えきれず。その運動エネルギーを吸収しきり、体が吹っ飛ぶ前に、命中した頭部のみが吹き飛ぶ。
「ポテトォッッ!!!。」
「隊長!、殺るか逃げるか決めてください!!。どっちでも俺は腹括ります!!。」
崩れ落ちるポテトの死体と…吹き飛び、巻き散らかされた血と肉と骨片。
濃い血の匂いが辺りを覆う。耐性のない者ならこのグロテスクな光景とのダブルパンチで胃の内容物を吐き出してしまうだろう。
「…逃げるぞファイター!。ロングショット!援護しろ!!。」
口で1人に、無線で残る1人に指示を出し。近くのビル…その3階の窓へ跳躍する。
もう1人の男もそれに続く。
「おい、まだデモスレの弁償の話ンンがァッッ!!」
カアァァァンッ!!
再び頭部に、今度は額のど真ん中に法化ウラン弾が命中し大きく仰け反る接合点。
「またこれかぁ!!。1発ぶん殴ってやる!!。デモスレの仇だァ!!。」
姿勢を低くし駆け出す接合点。最早生物の域を超えた体組織による走力は例え異世界人の血統を持ってしても易々と出せる速度では無い。
ましてやその体重は破格の240キロ。質量と速度の衝撃で道を舗装するアスファルトにヒビを入れていく。
再び迫る弾丸。
だが今度は当たらない。
光の速度は全ての速度を置き去りにする。
銃口を見てないならまだしも、銃口を見ている際はマズルフラッシュと呼ばれる発射時の光を確認出来る。
勿論、数百メートル先のマズルフラッシュを確認し、そこから音速を超える弾丸を避けるのは生物の到達点である彼らの特権と言えるが…。
そう、避けたのだ。接合点は跳躍するような大股で走る中、その体を大きく横に逸らす事で頭部を目掛けて迫ってきた弾丸を避けた。
「それめちゃくちゃ痛いんだぞ!!。ファッ○ューッッ!!!。」
両手を握り中指を立てた状態で走る。シュールな光景とは裏腹にその怒りの鉄拳を受ければ無惨な死体に変わる。
だが、彼は気付かなかった。
ビルの屋上に居る宿敵を睨んでいた為。
道に転がる…ピンが抜かれた手榴弾に…
そして炸裂。
凄まじい爆音と共に…高温高圧の大気の壁が接合点を吹き飛ばし、巻き散らかされた金属片が球状の破壊を生み出す。
「隊長、今のは効いたんじゃ無いですか?。ポテトの仇を取りましょうよ!!。」
「…いや、あれのフラグ(破片として散らばる部分)はただの法化鉄だからな。吹き飛ぶが傷は負ってないだろう。大人しく帰って報告をせねば…。」
「……了解です…。」
その様子を屋上から眺めて居た2人はもう1人の仲間と合流するべくその場を去る。
「痛ってぇな…クソっ。」
吹っ飛んだ先にあった壁を突き破り、八百屋だった店の中から出て来た接合点。
「信じられねぇ。あいつらデモスレを2巻ともダメにしておきながら逃げやがった…。全身痛えしよ。」
そう言って体の節々を撫でる接合点。その目は疲れのせいか曇っている。
「呆れた…。もう勝手にしてくれ……。」
………………………
「いや、やっぱ無理だわ殺す。この『方角』ってのは分かってんだよ。」
サッカー選手がPKを蹴る前のように。両手で頭の中にゴールを思い描く。
「お前らは魔素について全く知らない。魔素は同じ魔素のエネルギーは非常に伝播しやすい。熱や電気…そして『振動』… 。」
空手家の型のように。腰を落とし、右手を大きく引く。
目を閉じ意識を右手に集める。
すると右手が『輝き始める』。
法化炭素も密にしていけば…ダイヤモンドの用に澄んだ輝きを放つ。
接合点が体内に含まれる膨大な魔素を収束させることで一時的に結晶化するまでのレベルに法化が進む事で右手が輝くのだ。
それと同時に周囲の魔素から発せられる極々わずかだった青い光が強まっていく。
青い光に包まれる廃墟…その中心には構えを取り右手が輝く白い男。
正しくファンタジーから現れた存在。幻想的な光景がこの男の…言うなれば『気』 のみで描かれる。
「良くも俺のデモスレを…許せん。」
…とはいえこれもただの知的生命体。その行動には理由が伴う。神の怒りや天使の気まぐれなどとゆうポッとでの災厄では無く。純粋な『怒り』によってこの光景は生まれる。
…例えそれがマンガを燃やされたり、ボロボロにされたりした…そんな事であっても…。
「よし、ここは主人公の大技風に行こう。鬼畜外道を葬るは我が聖拳…」
その感情の昂りに応えるかのように周囲の魔素が強く、強く、輝く。
「人の幸を踏みにじるは正しく悪、背を向け逃げるも正しく悪っ!!!」
震え出す。
既に死した『街』が…かつての人混みの雑踏を思い出したかのようにザワザワと…震え出す。
「ならばその背を砕く我こそ善っ!!。爆ぜろ悪党っ!!」
接合点が強くその拳を握る。
それと共に街を照らす青い光が突如『白く』変色する。
「…んな事言ってる間に隠れてたら承知しねぇっ!!。轟け…『
」
長い前ゼリフの間に射線から逃れてない様にと願いながら接合点はその右手を前に突き出す。
すると接合点の周囲と前方広範囲の魔素の白い輝きが凄まじい『閃光』となって世界を照らす。
動きとしてはただの突き…しかし、莫大な魔素が短いとはいえ凄まじいスピードで動いた。
それに合わせ周囲の…この街を覆う励起された魔素が…『大きく』、そして『激しく』…『震える』…
大気が震える。そして大気に接する物質全てが揺れ。それは『大崩壊』へと成長する。
大きくなびいた大気が爆風となり、ヒビの入ったアスファルトや崩れた家屋をむしり取る。
細かく…しかし激しく震えた建造物は脆い部分から木っ端微塵に爆散し、大小様々な破片となる。
そして生物も同じく…例えデッドマンだとしてもその震えの前では、硬い部位は粉々に、柔らかい部位はズタズタに…崩れ去る。
結果、ただの正拳突きから始まったこの震えは爆音を轟かせる大崩壊となって接合点から前方50°、距離700mの膨大な面積を『更地』に変えた。
血の繋がりは傷の上で @papikon
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