最終話:新たなる場所へ、旅立ち
蛮刀を自分の愛剣に吸収。
色んな変化が起きてしまった。
とにかく分からないことばかり。
いつもの酒場でマリアと合流することにした。
◇
「……という訳で、色んなことがあったんだ、マリア」
「なるほどですね。私もいきなりレベルアップした感じにも、驚きました。でもハリト君の方が何倍も、事件が起きていたんですね」
マリアに聞こえる天の声は、聖女関連ものものだけらしい。
レベルアップの声は聞こえていないので、体感でメインレベルアップを知ったという。
「それにしても《反転者の証》と“《反転者の証》争奪戦”ですか。不思議な言葉ですね?」
「そうだね。ボクも初めて聞くけど、実は《反転》だけは聞いたとがあるんだ」
あの不思議な空間に落ちていった時、『【成長阻害の呪印】反転完了』という、天の声が表示された。
恐らく悪い呪印が、この新しい刻印になったことを、『反転』と呼ばれているのだろう。
「なるほどです。ハリト君の左甲に、そんなことがあったのですね。つまりハリト君以外にも、あの
「うん、たぶん、そうだと思う」
あの
それが反転して、あの新しい力を得たに違いない。
今となっては、そう思う。
「それなら、これからハリト君は、どうするつもりですか?」
「うーん、実のところよく分からないかな。だから今で通り冒険者の生活を続けていこうと思う」
冒険者を続けていけば、定期的の天の声が聞こえてくるだろう。
それに従っていけば、道は開けていくはずだ。
「たしかに、そうですね。ハリト君らしい前向きな姿勢ですね」
「そうかな? とにかく、改めて今後もよろしく、マリア!」
「はい、こちらこそ!」
“《反転者の証》争奪戦”という言葉は、気になる。
だが無い頭で考えても、意味がない。
だから冒険者を続けていく。
きっと道は自然と開けていくだろう。
◇
それから三日後。
約束通り、ギルドマスターの部屋にやってきた。
「ライザックさん、失礼します」
「おう、入れ」
ギルドマスターの部屋に、マリアとやってきた。
話はたぶん、依頼か何かだろう。
それならマリアと一緒に聞いた方が良いのだ。
ライザックさんの話を聞くことにした。
「さて、ハリト。一つ、聞く。お前は冒険者として“上”を目指したいか?」
「えっ、上ですか? はい、もちろんです!」
今のオレは未熟な冒険者。
上は常に目指していきたのだ。
「いい目だ。それなら、これをやる」
「ん? これは……?」
ライザックさんが渡してくれたのは、一枚の書類。
あとは何かのタグだ。
「それは新しいお前の冒険者証のタグ。今日からハリトはランクDだ」
「えっ……オレが、ランクDに昇格を⁉」
「ああ、そうだ。そっちの嬢ちゃんの分もある。今日から二人はランクDパーティーだ」
「えっ……私もですか⁉」
マリナも言葉を失う。
何故なら、こんな短期間で昇格できると、オレたちは思っていなかったのだ。
――――◇――――
冒険者ランク(レベルは冒険者協会が公表している大よその目安)
Sランク:レベル81~ :大陸にも数人しかいない
Aランク=レベル61~80:各迷宮都市に6人しかいない
Bランク=レベル41~60:迷宮都市に60人しかいない
Cランク=レベル31~40:各迷宮都市に600人しかいない
Dランク=レベル11~30:平凡な冒険が一生かけて到達できるレベルの限界
Eランク=レベル1~10:初心者~才能がない者が到達できる限界
―――◇――――
この迷宮都市には数千人の冒険者がいると、言われている。
その中でも本当に冒険者と呼ばれるのは、Dランク以上。
Eランクは新人と半人前。
つまりオレたちは半人前から、本当の冒険者に足を踏み入れたのだ。
「
「えっ、オレがCランクですか⁉ いえ……まだランクDで大丈夫です」
魅惑的な提案だった。
だがオレは断ることにした。
何故なら、あの
スキルポイントや特殊な能力があって、何とか倒せたもの。
だから自分にはランクCは、まだ早すぎるのだ。
「はっはっは……相変わらず謙虚だな。だが、そう言うと思ったぜ。だから、これがオレからプレゼンだ」
「えっ? これは……?」
渡されたのは見慣れないタグ。
冒険者証にも似ている。
「そいつは中央区画への、特別な入場許可証だ」
「えっ……中央区画に、オレたちが⁉ それって……」
「ああ、そうだ。中央区画にある上級迷宮にも入れる」
「ああ、やっぱり! ありがとうございます!」
これは素直に嬉しいプレゼンだった。
何故なら上級迷宮には、更なる冒険がある。
自分の実力を高めていくには、最高の環境なのだ。
「はっはっは……相変わらず面白い奴だな。ランクCは断っておいて、上級迷宮には行きたいか」
「あっ、そうですね。なんか、すみません」
「いや、悪くはないぜ。一流の冒険者になるには、そうした図太い神経も必要だ。上級迷宮からは他のパーティーと、競い合いになるからな!」
基本的に初級と中級迷宮では、他の冒険者と競合しないように、迷宮のシステムが構築されている。
だが上級迷宮以上は、他のパーティーと遭遇率が高まるという。
つまり危険が増えていくのだ。
「それでもいくか、中央区画に?」
「はい、行きます!」
もちろん望むところだった。
あっ、そうだ。
マリナも確認しないと。
「もちろん私も大丈夫ですよ、ハリト君。聖女を目指すには、上級迷宮以上も攻略していかないと」
「そうか、ありがとう、マリア!」
パートナーの了承も得られた。
オレは改めてライザックさんから、特別許可証を頂く。
「それじゃ、気を付けていくんだぞ。まぁ、とは言っても、同じ迷宮都市の中だ。何か困ったことがあったら、いつでも相談に来い」
「はい。分かりました!」
中央区画から下町区画は、それほど距離は離れていない。
オレたちは拠点を、違う区画に移すだけなのだ。
「まぁ、あと、これはアドバイスだ。本気で上級迷宮以上を攻略するなら、パーティーメンバーを、最低でも、あと一人は増やした方がいいぞ。しかも信頼のおける仲間を」
「なるほど。分かりました。アドバイスありがとうございます!」
ライザックさんの指摘は正しい。
今後の課題として有り難い考慮していく。
「それでは失礼します」
ギルドマスターの部屋を出ていく。
その後は受付のお姉さんの所に、報告に行く。
「……という訳で、少し中央区画に行ってきます」
「パパから聞いていたけど、本当に行くのね。あっちは無理をしないのよ。あと、辛くなったら、ここに戻ってきてもいいから」
「はい、ご心配ありがとうございます」
お姉さんは相変わらず、過保護な感じだった。
でも戻ってきていい、というは有り難い言葉だ。
さて、それじゃ、この冒険者ギルドとも、しばしの別れか。
ギルドを後にするか。
なんか急に寂しくなってきたな。
――――そんな時だった。
見覚えがある集団が、こっちに近づいてきた。
孤児院の同期組の連中。
今日は全部で十数人いる。
「ハリト君……?」
「大丈夫だよ、マリア」
マリアはトラブルかと、心配している。
だが今日の彼らは雰囲気が違う。
何か話があるようだ。聞いてみる。
「……なぁ、ハリト。お前たち、中央区画に行くんだってな?」
「ああ、そうだよ」
「……やっぱり、そうか。なぁ……今まで悪かったな」
「今まで、お前のことを悪く言ってきて……」
驚いたことに同期組は、オレに謝ってきた。
幼い時からの愚行と暴言のことを、頭を下げて謝ってきたのだ。
「オレたちは……お前に嫉妬していたんだ……」
「呪いがあるのに、絶対に挫けなった、お前の努力の姿によ……」
そして自分たちの本音を話してきた。
今までの十数年間のことを。
勇気を出して謝罪してきたのだ。
「だから……中央区画に行っても、頑張れよ、ハリト!」
「死んでいった同期の奴の分まで、立派に冒険をしてこいよ!」
そして彼らからエールをもらう。
同じ釜の飯を食ってきた、同期の仲間からの応援の言葉だった。
「みんな……」
この《迷宮都市ガルド》で、オレたち孤児の運命は過酷だった。
七歳を越えると全員、生きるために院を出て、冒険者見習いとなった。
最初は他の冒険者の靴磨きや、身の回りの世話の仕事。
奴隷のような毎日だった。
十歳を過ぎてからは、迷宮での荷物持ちや、解体とゴミ漁りの仕事。
過酷な迷宮での仕事で、かなり貧しい毎日だった。
十二歳まで生き残ると、ようやく希望が見えてくる。
身体も大きくなり初級冒険者として、半前として迷宮に挑戦が可能に。
分け前は半分しか貰えないが、生活は一気に改善された。
だが半数以上の孤児たちは、十二歳までは長生きできなかった。
オレの同期も既に、半数以上に減っていたのだ。
だから皆は託してきたのだ。
“エリック孤児院”の第二十期卒院生としての言葉を。
自分たちの想いを、勇気を出してオレに伝えてくれたのだ。
だからオレも応える。
「ああ、任せて! 皆の分まで頑張ってくるから! あと、皆が来るもの、あっちで待っているよ!」
「「「ああ!」」」
同期組の皆とタッチを交わしていく。
これはエリック孤児院の子供たちの、挨拶に仕方。
オレは約十年ぶりに、彼ら……同期の仲間とタッチを交わしていく。
その後に、同期組はマリアにも謝ってきた。
前に呪いの神官と、蔑んだとこを謝罪したのだ。
「いえ、気になさらずに」
マリアも快く許していた。
彼女は呪印が無くなってから、前を向いて生きているのだ。
そんな真剣な話も終わり、オレたちはギルドの建物を後にする。
「さて、これからどうしますか、ハリト君?」
「そうだね。とりあえずは中央区画に向かって、《
中央区画には、新しい場所が沢山ある。
無理をしないで、一つずつ訪ねていきたい。
「そうですね。賛成です。楽しみですね」
「ああ、そうだね。よし、それじゃいこう!」
オレはマリアを歩きだす。
向かう先は未知なる場所、《迷宮都市ガルド》の中央区画……新たなる冒険の場所だった。
◇
◇
◇
ピコーン♪
☆《“初心者育成モード”終了。【実戦モード】に移行します》
こうして理不尽な呪いでも決して諦めなかった、冒険者ハリトの新しいステージが幕を開けるのであった。
◇
第1章【完】
◇
最後まで読んで頂きありがとうございます。
なんとか今のボクで書けるところまで、書ききることが出来きました!
このお話は、ここで一度完結になります。
今後の予定は未定です。
でも、書籍化したいので、色んな編集部に持ち込みをして、コンテストにも応募もする予定です。
万が一、成功した時は、また報告します!
ボク的には、この作品は好きなので、もっと書きたいです!
◇
あと「面白かった!」「いつか、また続きが気になる!」と思ったら
評価の☆で応援していただけると、私も嬉しいです。
あなたの評価と応援が、今後の作者の励みと力になります!
◇
あと【新作】を今日からスタートしました。
こちらも当作品と同じように、主人公が凄い力で大活躍していく物語です。
ブックマークして最初だけでも、読んでもらえると凄く嬉しいです。
――――◇――――
《タイトル》【世界ランク1位の冒険者、初心者パーティーに紛れ込み、辺境で第二の人生を満喫する】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054895867096
《あらすじ》
青年ザガンは《武王》の称号をもつ最強の冒険者で、天神の啓示による世界順列でも最高位に君臨。しかし王都での上位ランカーとの殺伐とした、ランク戦の日々に疲れ果てていた。
そんなある日、《身代わりコピー人形》を手に入れ自由の身となる。自分の能力に99%激減リミッターをかけ、新人冒険者として辺境の村に向かう。そんなザガンのことを、村の若い冒険者たちはあざ笑う。
だが彼らは知らなかった。目の前にいるのが世界最強の男であることを。
これは99%激減でも最強クラスな男が、困っていた新人パーティーを助けながら、荒廃していた村を再建、高ランカーを押しのけて、新たな偉業を達成して物語である。
理不尽な呪いでも決して諦めなかった冒険者、【反転】スキルポイントで最強へ駆け上がる ハーーナ殿下 @haanadenka
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