第24話-B面 瀬戸環は誤解している。
最近アキラの様子がおかしい。
一人暮らしをはじめてからずっと。
「うーん」
今日も何か考え事をしているようで、授業は上の空で、休み時間も唸っている。
ここ数日ですっかり(アキラの)話をするようになった三波さんと顔を見合わせて、頷き合った。
連れだってアキラの席に行く。
「どうしたのアキラちゃん」
「何かあった?」
尋ねるとアキラは言葉を選びながら、
「えーとね、ちょっと会いたい人がいるんだけどね。会おうとするんだけど全然会えない時って、どうすればいいと思う?」
「「えっ!?」」
私と三波さんは同時に驚愕の声を上げた。
会いたい人って、好きな人?
誰それ?
三波さんに視線を投げると彼女も初耳のようで首を振っている。
この子も知らない相手か。
「アキラ、もしかして、その……、気になる人でもいるの?」
私が問うと、アキラは素直に頷いた。
「うん。気になると言うか、早く会わないとソワソワするっていうか」
うわあ。
私は三波さんの顔がひきつっているのを見た。
たぶん私も似たような表情をしていることだろう。
そんな私たちをアキラは抉ってくる。
「僕、どうしたらいいと思う?」
「どう、って言われても……」
「その気になる人って、アキラの知り合い?」
「僕の、っていうか、父の紹介っていうか」
「「親公認!?」」
まさか許嫁とか?
今時そんなことがあるものなのだろうか?
「どうかしたの?」
きょとんとしているアキラに私たちは揃って手を横に振った。
「ななななんでもないわ」
「うん! なんでもないよアキラちゃん!」
「朝も放課後も会えないから困ってるんだよね……。どうしようかなぁ」
ふう、と溜息をつくアキラ。
これは相当だ。
「ちょっと三波さん」
アキラから顔を背けて三波さんと顔を突き合わせてこそこそ小声で相談する。
「相手のこと本当に知らないの」
「私だってびっくりしてるよ」
「とりあえず相手のことはおいおい聞き出すとしましょう。アキラには元気出してもらいたいし」
「そ、そうだね。ここは何かアドバイス的なことを」
「うん。じゃ、そういうことで」
アキラに向きなおり、
「と、とりあえず、連絡取ってみたら?」
「電話なり、メールなりで、ね」
三波さんと私が口々に言った。
「連絡かあ。そうしてみようかな。ありがとうふたりとも」
「「どういたしまして……」」
「あれ? 二人とも元気ない?」
「ううん」
「そんなことないって」
暗澹たる気分で私たちは自分の席に戻っていくしかなかった。
Unhappy Endless ~厄病神(見習い)の毒島さんは僕を不幸にしたいのかどうかよくわかりません~ 江田・K @kouda-kei
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