第24話「201号室(2)」

第24話-A面 時任秋良は出会えない。

 レーコさんと下着の件でドタバタした翌朝、僕は登校前に201号室を訪ねました。

 チャイムを一度鳴らして少し待ちます。

 返事はないです。

 もう一度。

 やっぱり出ません。


 ――放課後。帰宅後にも201号室に寄ってチャイムを鳴らしましたが、駄目でした。

 そんな朝夕を幾日か繰り返しました。

 不毛です。

 なんとか会う手段はないものでしょうか。


「うーん」

 学校の休み時間にもそのことを考えていました。

「どうしたのアキラちゃん」

「何かあった?」

 笑美ちゃんと瀬戸さんでした。

 三人寄れば文殊の知恵ともいいますし、意見を聞いてみるのもいいかもしれません。

「えーとね、ちょっと会いたい人がいるんだけどね。会おうとするんだけど全然会えない時って、どうすればいいと思う?」


「「えっ!?」」


 そんな驚かなくても……。


「アキラ、もしかして、その……、気になる人でもいるの?」

「うん、気になると言うか、早く会わないとソワソワするっていうか」

 あの下着がいつまでも自分の部屋にあるのはどうにも落ち着かないです。

「僕、どうしたらいいと思う?」


「どう、って言われても……」

「その気になる人って、アキラの知り合い?」

「僕の、っていうか、父の紹介っていうか」

 102号室の辻村さんと201号室の女性はあの人の紹介でアパートに住んでいます。


「「親公認!?」」

 こういうのを公認というんでしょうか。

 なにか二人とも変なカオ? してます?

「どうかしたの?」


「ななななんでもないわ」

「うん! なんでもないよアキラちゃん!」


「朝も放課後も会えないから困ってるんだよね……。どうしようかなぁ」


 ふたりは何かごにょごにょと囁き合って、同時に僕にずいと顔を寄せて来ました。

「と、とりあえず、連絡取ってみたら?」

「電話なり、メールなりで、ね」

「連絡かあ。そうしてみようかな。ありがとうふたりとも」


「「どういたしまして……」」

「あれ? 二人とも元気ない?」

「ううん」

「そんなことないって」


 そう言い残してふたりは席に戻っていきました。

 やっぱり変なカオしてるなあ、と思っていると、

「オメーはマジで人の心が分かんねえヤツだなあ」

 と頭上からレーコさんの声が降ってきたのでした。

 どういう意味でしょう……。

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