第16話聞きたい話

 立ち上がった僕は、木箱に置いてあるランタンを右手に持ち、倒れている悪魔の方へと歩いていく。


「あの、立てますか?」


 僕よりもひとまわり大きい悪魔に手を差し伸べる。


「は! 殺さないでくれるのかよ。それはお優しいこった! 自分のことを殺そうとした相手に手を差し出してくれるなんて、随分ずいぶんと慈悲深いじゃねぇか!」


 悪魔はグイッと僕の手を掴んで立ち上がると、


「別に俺はお前らに悪いことをしたとは全く思ってねぇ。命拾いしたな、小僧」


 そんな悪態をついて、扉の向こうへ歩いて行ってしまった。そういえばここはどこだ?

 ランタンの光だけでは、よく見えない。

 とりあえず、扉の外に出て行くか……。

 悪魔が出て行った後をついて行くように、僕は扉のドアノブをガチャリと捻り、外に出て行く。

 外に出ると、居間らしき場所でくつろいでいる先ほどの悪魔がいた。


「あん? 早く出てけ。天使臭くなっちまう」


 自分から拉致しておいてその物言いはどうなんだと思ったが、いちいちそんなことも言ってられないな……。


「お……おじゃしました」


 拉致さえれたのにこんな礼儀正しくする必要があったのか……?

 まあいいか。悪魔の家のドアを抜けると、外は夕暮れだった。

 僕はどのぐらい眠っていたんだろう……。3〜4時間ってとこか?

 そういえば、カナさんは!?

 僕は慌てて後ろを振り向くと。


「やぁ、ずっと暗いところにいた割には元気っぽいね」


「はは……おかげさまで」


 そんなやり取りをして。


「あの……助けてくれてありがとうございます。あと、さっき逃げ出してごめんなさい……」


 お礼と謝罪を込めて、僕はお辞儀をする。本当に助かった。カナさんは本当に僕の命の恩人だ。

 まだ信用できない部分はたくさんあるけど、それでも出来る限りカナさんのいうことはに受けよう。

 

「別にお礼なんていいよ。君と旅をすると決めた以上、私には君を守る義務があると思うからね。それにこうなったのも、元はと言えば私が変な冗談を言ってしまったからだしね」


 カナさんはははっと笑っている。さっきのあれは冗談だったのか。全然そうは見えなかったけど……。

 とりあえず、カナさんとは話がしたい。さっきの少女との会話をカナさんに聞かせれば、何かわかるかもしれないし……。

 

「あのカナさん、再開してすぐに申し訳ないんですけど、話をしませんか? もしかしたら僕がどういう人物なのか、わかるかもしれないので」


「ん? 君が私のいないあいだに何があったのか知らないけど、もう手がかりが掴めたのかい?」


「はい、なので話を……」


「あーじゃあ宿屋に行こう。ずっと歩きっぱなしで疲れたよ」


「そ、そうですね。じゃあ早く行きましょう」


 僕はカナさんが向かった行った方向についていった。




















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たとえ異世界を何度やり直してでも ラリックマ @nabemu

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