第5話猫ってかわいいけどずる賢いよね

「ヒック、お酒~、おいし~なぁ~」


 月の綺麗な夜に

 夜道を酒瓶と共に闊歩するエルフの女性

 私はそんにゃ、彼女に狙いを定め近づいていく

 狙いは彼女の腰に巻いてある袋だ。

 あそこにはたんまりと金が入っている。

 なぜそんなことを知っているかというと、それは先日まで話しが戻る。


「うわああああ、まぶしいにゃ、なんなんにゃ?」


 大量の魔石を換金した男が、連れの女エルフに男が絡んでるのを助けるために何かしらの魔法を使ったようで、あまりのまぶしさに目をつむるほかなかった。

 光が弱まりやっと目を開けられるようになるころには男の姿は見えなくなっていた。

 周りの者達はあの男が発動した魔法が、フラッシュライトだと口々に言っているが

 フラッシュライトはほんの一瞬のみ光を発生させる程度の魔法なのに、あの男の発動したフラッシュライトは、およそ一分もの間強い光を出していた。

 本当にあれが、フラッシュライトであれはあの男の魔力量は恐ろしいものになる

 冒険者にでもなれば即戦力に間違いない

 何なら王国の聖魔導士にもなれるかもしれないほどだ。

 しかし、私からしたらそんにゃことは関係なく

 問題はその前、あの男の換金した魔石の量だ。

 重さだとおおよそ10キロほどはあるであろう魔石を持ってきた男だが、私の見立てならば、だいたい15~18枚ほどの金貨で換金されたはずだ。

 一度で冒険者ならば五人ほどのパーティーで一週間狩り続けて、やっと手に入れられるほどの、高額な金額をあの男はさも当然のように稼ぎ、さも当然のように振舞っていた。


 そして今日の昼過ぎくらいにその男はもう一度ギルドに現れて

 なんと今回は前回の倍以上の金額を換金して帰って行った

 一緒にいた女エルフの衣服が大変なことになっていたので、男は自身の衣服を貸したのだろう

 しかし薄着になった男の体は、屈強な戦士にも負けない筋肉を身に着けていた

 ギルドの者達が騒ぐ声が聞こえる


「おい、誰か!あいつを冒険者になるように説得してこい、あれは大物だぞ!」

「分かっているさ、だが昨日も少し話をしてみたら、興味ないといわれてな」


 ギルドの者達がガックリとしているが、男はどうやら冒険者になることに興味がないようだ


「ふふん、あの男だけならどうしようかと思ったけど~」


 私は盗賊

 冒険者登録はしているが、それはあくまでも副業

 本業は盗賊のほうだにゃ。

 そして、大きな獲物がいて手を出さないでいるのはもったいにゃい

 つけ入る隙は必ずあるはずにゃ

 私は男と女エルフを尾行していると、なんと男が女エルフにお金を預けたではないにゃいか!

 そしてあの女エルフはおそらく弱い

 今日も服があんなことになった原因もスライムだろう

 あの女がスライムよりも弱いという証拠だ。

 最弱のモンスタースライムよりも弱いエルフ、なかなか滑稽だにゃ


「黒魔法バインド」


 私は酔っぱらいの女エルフとすれ違いで魔法を放ち女エルフはバインドの効果で身動きが取れなくなる


「え~、なに~、うごけな~い、うける~」


 動けなくなったというのになぜか笑っている。変人だ。いや変態だにゃ。

 きっと酒のせいにゃ、きっとそうだにゃ

 私は女の持つ袋だけを取り 

 すぐさまその場を離れる


「やった!やった!こんにゃにも!うまくいくんにゃんて最高だにゃ!」


 宿に帰り

 袋を開けると、なんとその中には

 金貨にして50枚

 冒険者五人組で一か月はかかるほどの量の金

 私一人ならもっとかかる量の金を手に入れた!


「これで、あの子たちにもおいしいものを」


 私はそのお金を隠し

 包んでいた袋は自分の懐にしまう


「よし、明日のダンジョン探索のクエストが終わり次第、みんにゃのところに戻ってこのお金を届けるにゃ」


 夜があけてから私はすぐさまダンジョンに向かった。

 ダンジョン内のモンスターは黒魔法のブラックカーテンという姿を消せる魔法で切り抜け

 万が一見つかった場合は黒魔法のブラックアウトを使いモンスターの視界を奪う

 ブラックカーテンでは匂いや音までは消せないので、相手の視覚を奪えるブラックアウトは重宝する。

 色魔法のうち黒魔法しか使えにゃい私はこうして工夫して進むしかにゃい


「よ~し、あれが最後の部屋かにゃ~」


 ダンジョンでの私のクエスト内容はダンジョン探索

 盗賊などをやっていることもあり、隠密系の魔法が多い私にはうってつけのクエストで

 クエスト報酬などもかなり奮発している

 さらにダンジョン内にあったお宝は自由にもっていってもよいらしいという最高の内容

 これはもうクエストを受けるしかない

 何より私はお金がいる 

 私のためではにゃい

 家族のために金が要る

 そして最後の部屋の扉を開くと

 部屋の真ん中のところに宝箱があった


「まずはミミック警戒にゃ、黒魔法は使うまでもないにゃ」


 私は手近な小石を拾い

 その宝箱に投げつける

 ・・・・・・・・・

 反応はないミミックなら近づくか何かが触れたり当たったりすれば反応して口を開くから

 この宝箱はミミックではない

 私はその宝箱に近づいて開ける


「にゃああ、すごいにゃ」


 中には金銀財宝が入っていた。

 これなら、あの子達もおいしいものを食べれるにゃ

 私はその宝箱を持ちあげ部屋を出て行こうとすると

 モンスターの雄たけびが耳に届く 

 声は後ろから響いてきて

 部屋の扉とは真逆の岩壁から

 モンスターが出てくる


「ミ!ミノタウロス!し、しまったにゃ!ダンジョントラップかにゃ!」


 あまりの嬉しさに基本中の基本であるダンジョントラップの確認を損なってしまっていた。

 私のそんな凡ミスで出てきてしまったのは、頭は牛、体は人間のミノタウロスというモンスターだ。

 私のレベルでは倒すことなんて到底無理な相手

 ミノタウロスは突進して来て私はブラックアウトでミノタウロスの視覚を奪うが


「ニャイ!」


 腕をミノタウロスの角がかする

 血がにじむ腕

 ミノタウロスは視覚を奪われたことで周りのものに当たっては砕く、当たっては砕くという見境のない状態になり


「今のうちにゃ」


 私が宝箱を持ちあげたとき

 宝箱の蓋が開き中から金が落ちてしまう


「あぁ、しまったにゃ!」


 すぐさま拾いにかかるが

 金の落ちる音で私の場所を特定したミノタウロスが、私めがけて突進してくる

 お金を拾うことを優先してしまった私にもう助かるすべはなく


「ごめんみんな、ごめんね、お姉ちゃん、もうだめにゃ」


 私は諦めて突っ立っていると


「バカヤロー!死んじまうぞ!」


 あの男が出てきてミノタウロスを一撃で倒した


「おい、怪我無いか?あぁ腕少しかすってるな、青魔法ヒール」


 男は私の傷を治し


「亜人種のキャットピープルか。お前名前は?おれはカイト魔法使いだ。」

「アリですにゃ。」

「そうか、アリ担当直入に言う、金返せ!この泥棒猫め!」


 カイトは会って早々に私を罵ったのであった

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魔法使えないエルフと最強魔法使いの冒険譚 タライ @tarai1999

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