第18話 被害8(ビデオ通話)

 先輩の写真を手に入れたことでにやけていると先輩から声をかけられました。


「わかった、雨宮。ツーショットはなしでいい。その代わり今日の夜、いや今週のどこかでいいからビデオ通話しないか?」


「ツーショットの次はテレビ電話ですか?別にいいですけど何でですか?」

 

 ツーショットの次はビデオ通話を提案されました。これまた突然です。一体、今日の先輩はどうしたのでしょうか?


「ああ、実は大事な話があってな。夜どうしても話したいんだ。ビデオ通話なら顔を見せて話せるし。」


「だ、大事な話ですか?それって私じゃないとダメな話なんですか?」


 大事な話?それってもしかして……。


「ああ、お前に言わなきゃ意味がない。別に今日じゃなくてもいい。都合のつく日で構わない。」


「い、いえ!別に今日で大丈夫です!わかりました。今日の夜楽しみにしています。それではそろそろお暇しますね。バイバイです、先輩!」


 どうしましょう、どうしましょう!もしかして告白でしょうか!?いやいや、あの先輩に限ってそれはありえません。ですが、私じゃないと意味がない大事な話って他にあるのでしょうか?


 ああ、もう!全然分かりません!なんで先輩は曖昧なことを言うんでしょう。その言葉1つで私は振り回されてしまうというのに。気になって気になって仕方がないじゃないですか!


 もしも、もしもですよ?告白だったら……。夜のことを考え、緊張しながら私は自分の教室は戻りました。


〈夜、自宅〉


 夜、私はお風呂でこのあと予定されている先輩との電話のことを考えていました。

 

 はぁ、この後は先輩と電話です。想像するだけでドキドキします……。一体何を言われるのでしょう? 昼休み終わってからずっとこればっかり考えています。気になりすぎて午後の授業、集中出来ませんでした。

 

 やっぱり告白なんでしょうか?いえ、もちろん先輩が私のことを嫌っているのは分かっています。でも、やっぱり最近少しだけ私に対する態度が柔らかくなった気がするんです。


 もしかしたら気のせいかもしれません。でももし本当に少し態度が柔らかくなっていたとしたら、千が一、いや万が一だとしても期待してしまいます。期待してはいけないと分かっていても。

 考えに集中していてお風呂に入りすぎたせいか、のぼせながらお風呂から出ました。


 あ、私顔赤い……。お風呂上がりの自分の顔が鏡に写っています。のぼせて上気しただけでなく、先輩をどれだけ意識しているかを再認識させられ、ますますドキドキしてきました……。


 カメラに映るので、鏡を見て念入りに髪を整えながら乾かします。少しは綺麗と思ってもらえるでしょうか……。ふぅ、準備は整いました。あとは先輩からの連絡を待つだけです。

 ちょうど先輩からメッセージが来ました。準備が終わっているので承諾のメッセージを返します。


 プルル、プルル


 少し経つと着信音が鳴り出し始めました。わ、わあ!?どうしましょう!とうとう電話がかかってきました!

 心臓がうるさいくらい鳴っています。緊張で口が乾き、思わずゴクリと飲み込んでしまいました。震える手で通話にします。


「はい、雨宮です。」


「…っ!よ、よう、雨宮。昼以来だな」


「そ、そうですね、先輩」


 夜なのに先輩と話しています。緊張で声が変に出てしまいます……。


「せ、先輩!そ、それで大事な話というは…?」


 あ、やってしまいました……。焦りすぎて勝手に口が…。もう少し覚悟してからって思ってたのに、こんないきなり聞いてしまうなんて。

 失敗による焦りと、この先の期待でどんどん顔が赤くなっていくのが自分でも分かります。もう、こんなの完全に先輩に気付かれてしまいます……。


「あ、ああ、すまない。本当は大事な話などないんだ。こうやって雨宮と面と向かって話してみたくてだな…。」


「へ?大事な話は何もなかったんですか?」


 え?え!?ビデオ通話するための方便だったってことですか?驚きすぎて間抜けな声が出てしまいました。


「あ、ああ。こうやって話すために言っただけなんだ。大事な話と言えば雨宮なら断らないだろうと思ってな」


「んーーーっもう!!それならそう言ってくださいよ!先輩の誘いならそんなこと言われなくても断るわけないじゃないですか!妙なこと考えて、変に緊張しちゃったじゃないですか…」


 一気に緊張が解けて、思わず息を吐きました。

 今まで悩んでいたのはなんだったんでしょう。告白じゃなかったのは残念でしたが、振られなかっただけ良かったです。


「妙なこと?ってなんだよ」


「え!?そ、それは、もしかしたら告白されるのかなーなんて…」


 そ、そこを聞いちゃいますか!?勘違いで告白だと思っていたなんて恥ずかしすぎます……。


「悪い、上手く聞こえなかった。もう一回頼む」


「もういいですから!それより今後はそんな嘘やめてくださいよ!?本当に私の心臓に悪いですから…」


 本当にどれだけ私が考えていたことか。緊張で死にそうでしたよ。もうあんなにドキドキするのは当分大丈夫です……。


「悪かった。今後はやめておく。」


「はい、そうしてください。あ、でもビデオ通話のお誘いはとても嬉しかったです。今後もお誘い待ってますよ?先輩?」


 ドキドキで大変でしたが先輩からはまた誘われたいです。やはり素直にはなれず私はからかうように言ってしまうのでした。

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