第16話 被害7(ツーショット)
RINEを交換してから毎日先輩と夜メッセージのやり取りをしています。まさか、先輩が毎日メッセージをくれるとは思わず嬉しい限りです。最初の方こそ興奮してなかなか寝られませんでしたが、最近は慣れてきて温かい幸せに包まれて安らかに眠れています。
先輩の好みなど色々なことを知れて、毎日夜が彩られてています。ほんの少しではありますが先輩と距離が近づいた気がします。さらに距離を詰めたい私は今日もまた先輩に話しかけに行くんです。
「あ、先輩!」
教室を見回すと先輩がいました。珍しく起きていてこっちを見ていました。まさか待っていてくれたのでしょうか?いや流石にそれはないですね。
目が合ったのが嬉しくて思わず手を振りながら駆け寄ってしまいました。どうにも先輩が関わると嬉しすぎて感情を隠すのが上手くできません……。
先輩に近寄ると、何かを探しているのかキョロキョロと首を振っています。どうかしたのでしょうか?そう思っていると先輩は探す動きをやめ、こちらを見てきました。
「そうだ、雨宮。ツーショット撮ろうぜ。」
「へ?ツーショット?なんでですか?」
突然言われたので変な声が出てしまいました。
「いや、せっかくこうやってRINEするようになったわけだし、その記念にな。」
「なるほど〜。ふっふっふ、先輩は恥ずかしがり屋さんだからそうでも言わないと私を誘えなかったのですね?ちゃんと撮ってあげますから安心して下さい。私のスマホで撮りますね」
やった!先輩と一緒に写真が撮れます!これで、毎日先輩の顔を見れます。土日は会えなくて寂しかったので、これはとても嬉しいです!
ちゃんと先輩の写真を保存しておけるよう、私のスマホで撮るようにしましょう。
「ああ、いいぞ。」
先輩はそう返事するとスタスタと移動して、私の隣に並びます。
「せ、先輩、ちょっと近くないですか?」
先輩が私のかなりに近くに立つので思わず言ってしまいました。近くに来てくれるのは嬉しいのですが、近いのはそれだけで緊張します……。心臓もキュッとなって苦しくなってしまいますし……。
「そんなこと言われてもこれぐらい近づかないと写らないだろ。というかまだ俺の顔写ってないな。」
「先輩って結構身長大きかったんですね…」
普段向かい合って話しているので気付きませんでしたが、隣に並んだ先輩は身長が高く、見上げる形です。
「そうだ、175センチくらいだから身長の小さいお前よりは結構大きいぞ」
「そうだったんですね。やっぱり先輩は男の人なんだなーって思ってしまいました…」
特に先輩が何かしたというわけではありませんが、なぜか少しだけキュンとしてしまいました。それに、やっぱり先輩の目好きです。あの鋭い感じは見てるだけでドキリとさせられます。
隣の先輩に見惚れていると、先輩がグイッと顔を私の顔の横に近づけてきました。
「ちょ、ちょっと、先輩!?流石に近いです!顔が…!」
近い近い!さっきまで見惚れていた先輩の顔が至近距離の位置にあります。ほんの少し頭を傾けるだけで先輩の顔とくっついてしまいそうです。
「うるさい、早く撮れよ。」
「ひゃ、ひゃあ!?」
ちょっと、先輩!?強引に抱き寄せられてしまいました!隣からとてもいい匂いが香ってきます。人肌の熱もじんわりと伝わってきます。
そんな熱と香りが自分が先輩の隣にいることを実感させてきます。胸が苦しいくらいときめいてしまいました。こ、これ、私は何をしたらいいんでしょうか?
頭の中は真っ白で何も考えられません。顔は自分でも分かるくらい赤いし、訳が分からず涙まで出てきてしまいました。と、とりあえず言われた通り写真を撮りましょう。
先輩の指示通り写真を撮ろうとしますが、緊張で体が硬直して上手く動かせません。なんとか頑張り、写真を撮り終わりました。もう耐えきれず急いで先輩から離れます。あれ以上くっついていたら、私の心臓がもちません。
「どうだ、撮れたか?」
私が撮った写真がちゃんと撮れているか確認していると後ろから先輩が声をかけてきます。
「一応撮れましたけど、ダメです。先輩には渡しません!」
「なんでだよ、顔が変だったのか?もう一回撮り直すか?」
「何回撮っても同じです。やっぱりツーショットはなしです!」
「はあ?ふざけんなよ」
先輩は文句を言ってきますが、こればかりは譲れません。ごめんなさい、先輩……。でもツーショット撮ったら、先輩を意識しすぎて私の顔が真っ赤になってるのバレちゃいます……。
先輩を意識していることをバレるわけにはいきません。せっかくここまで上手く距離を詰めたのにまた離れていってしまいます。それはあまりに辛いので、さすがにツーショットの写真を渡すことはできませんでした。
ですが、手に入れたこの写真はありがたくもらっておきます。夜も先輩の顔が見れるなんて幸せです!ふふふ、手に入れた先輩の写真で私はにやけるのを抑えられませんでした。
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