第7話 正しい巨大ロボットの降り方
動けない巨大ロボの降り方というのは、次のようなもんである。
1.他の飛べる巨大ロボを2体持ってくる。
2.2体で両脇を抱えて崖まで移動させる。
3.崖に面したところから降りる。
「……」
いや、村から離れたなら別に歩いてもよかったんではないだろうか――と雪野晶虎は思ったが、有無を言わさず引きずっていかれたので文句をつける暇はなかった。
降りた崖の先に男がいた。年の頃は三十路手前か。品のいい顔に背が高く、葦原の軍服に身を包んでいる。
「……改めて、始めまして。ゲルタルダーのパイロットさん。私は引津大理(ひきつだいり)という」
男は手を差し出してきた。
「雪野晶虎です。寝てるのは、妹の巳虎」
晶虎は手を握り返した。手触りがいいが硬い。爪がきれいだった。
「村には今生存者を救助させに行っている。君の知り合いについてもそのうち分かると思う。
こんなことになって申し訳ない。こちらの手抜かりだった」
引津に頭を下げられ、雪虎は一歩下がった。
「……こちらこそ」
「もしよかったら、妹さんの手当をさせて欲しい。君も疲れているだろう? あちらに私達の母艦がある」
「いえ。ここで」
「そうか」
「村が、見えますから」
肩越しに振り返ると、無残に黒く焼け焦げた姿が見える。へたり込みそうになったのをこらえた。
兵隊が2人、かけてきて携帯用の椅子をしつらえてくれた。組み立て式のテーブルとかんたんな天幕が用意され初めた。
「休める場所が欲しくてね。私は茶をいただくが、雪虎くんも付き合ってくれないか」
引津にそう勧められ、雪虎は椅子に腰をおろした。膝に眠る妹を抱く。兵士が茶を二杯持ってきた。
シェラカップに近い簡素なつくりだった。雪虎は涙がこぼれそうになるのを抑えた。前世の父は登山が好きで、小学校に上がる前からよく山に連れて行ってくれた。苦いコーヒーでも父がいれてくれるなら美味しく飲めた。
今そこの中には茶がある。一口含んだ。ゆっくり飲むと落ち着いてきた。
「巳虎。飲むか?」
ゆすると、妹はやっと目を開けた。
「……夢、見てた」
「そうか」
「すごくすごく、大きくなって、それで……兄さんを乗っけて、光を出してたわ」
妹は欠伸をした。「ここ、どこ?」
「寺より上の、峠近くだ」
「そう」
「お茶、飲むか」
「うん」
妹は一口飲んだ。「兄さんは? 大丈夫?」
「ああ」
兄弟の様子を、引津はずっと見ていた。
転生先はロボットパイロットでした~玩具惑星ゲルタルダー さはらさと @ANOVELANOVELZMLEVO
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