第6話 ロボット乗ったけど降り方が分からない

 当てた。

 当てられた。

 氷のせいか炎も静まっていく。


 黒い帆船が凍り付いて堕ちて行く。その有り様を見ながら、雪野晶虎は慌てて叫んだ。


「ど、ど、どこに落ちるんだあれ!」


 浮いているものは何処かに落ちる。転生先でも変わらない。自分が撃ち落とした帆船も何処かに落ちる。川とか山とか。

 下手なところに落ちて山崩れとか起きたら洒落にならない。


『落下地点予測。……現在地点より北北西60キロ』


 無機質な声が応えた。


「ゲルタルダー、お前なのか?!」


 たしかにこのロボットはそれなりに答えてはくれるがここまで柔軟に対話できるとは思わなかった。


『補助AIによる音声回答』


「落下を防ぐ方法……! ああ、一つある! もう一度だ、氷雪光線!!」


 帆船と山ごと狙った。なんとか、落ちていく帆船を柱状の氷の上につなぎとめることができた。


 今度こそ力が抜けてシートに倒れ込んだ。


『……こちら葦原正規軍巨大戦闘機部隊隊長、引津大理だ。ゲルタルダーの乗員、応答してほしい!』


「通信?!」


 晶虎は体を起こした。「ゲルタルダー、繋いでくれ」

『応答を願う。こちら葦原正規軍巨大戦闘機部隊長』

「あ、はい……。こちらゲルタルダーパイロットです」

『良かった、無事でしたか』

 穏やかな声だった。『落ち着いて、ゲルタルダーから降りて下さい。あとは我々軍が引き受けます。

 早く来れなくて申し訳ない。ですが、これからは安心して軍に任せて下さい』

「はあ」

 そこではたと気づいた。

「…ゲルタルダー、降ろしてくれ」

 コクピットの後ろが空いた。冷たい風が入ってくる。妹を抱き上げて後ろに回ったが。

 めちゃくちゃ高い。ロボットの後頭部あたりにいるらしい。そして階段も何もない。

「……」

 どうやって、これ、降りるんだ。

 雪野晶虎は、ゲームにはなかった現実に内心頭を抱えた。


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