第2話 水ぶくれ

「私はただ、死なないように、指先を炙っていただけです。炎は、私を……平和に流されてしまいそうな私を、地獄に引き戻してくれる。あの地獄が、私には一番に落ち着くのです。無様に生き残ってしまった道具が自らを戒めているだけの事です。」


「もうそんな必要はないと言っただろう。君の指が壊れるだけだ。」


「壊れるなら、それが本望です。自分を罰し、私の代わりに散ってしまった人たちを忘れないことが一番の弔いだと教えてくれたのは、あなたではありませんか。」


「それは、平和が訪れた今でもか。」


「道具には命令あるのみ。贅沢は無用。それがあなたに教えていただいた、私の生き方です。」


「今もそんなに悲しみを背負っているのに、何も感じないというのか。君は、君に対してどこまでも薄情なのだな。」


「申し訳ありません。」


「これからは贅沢をしろ。これが最後の命令だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

365文字の愛 ユメハ @yumeha01

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ