第4話
「よう、ゴミ助。お前の姿なんか二度と見たくなかったよ。」
教室に入ると、奥からそんな声が聞こえた。吐き捨てるようなその台詞を言うのは、鋭く冷たいつららように心に 突き刺さるようなことを言うのは、中学時代からの相棒である、大腰柄沙(おおこし つかさ)に違いない。
「けっけっけ。嘘だよ、そして安心しな。情報は集めて来た。」
[嘘だよ]と言われても、流石にその言い方は酷すぎじゃないですか?
まあ、確かに言われてもしょうがないけれども。
「まあでもその前に、少し話でもしようぜ。」
ショートボブの髪を揺らしながら、手を掴まれ、そのまま連れていかれたのは、かなりの面積を取っているにもかかわらず、おおよその人間は使っていない、というか存在にも気づいていない、図書室だった。
他の高校ではどうか知らないが、我が校の図書室は、外から見た2、3倍くらい中が広く、
中に置いてある本は、題名すら書いてないような本も少なくない。おまけに中身は、この世界の文字ではないような文字がつらつら並んでいたり、いろいろな破損が多過ぎて、本としての本分を果たしていないのもあったりして、図書室じゃなくて、資料室に名前を変えても誰も異論を言わなさそうである。
ここで、休めるからいいじゃないかと思った読者諸君もいるだろうが、本を取ったはずの
場所が埋まっていたり、老婆の笑い声が聞こえたり、と気味の悪い噂が絶えないのだ。
まあ、俺が噂を流したのだが。
これを踏まえて、入りたいと思う人なんてまずいないだろう。つまり、この図書室は、
俺たち以外誰も使わないのだ。
とりあえずそんなことで、不気味な図書室に2人は入ったのであった。
「いえあ!!!!
入ってすぐに奇声を発する柄沙。
「って書いてるパーカー、まだ来てるんだな。」
「ん?ああ、これね。雰囲気づくりだよ。
依頼人が緊張しないようにね。ラフに行かないと。」
「学校休んでる時点でラフだろ。」
ごもっともである。
「でもこのTシャツ気にいってるから…」
「それ、側から見たら…ダサいぞ。」
「ガーン」
「なんで擬音口に出すんだよ。」
「擬音を口に出す?京都人じゃあるまいし」
「それは祇園な
「そもそも祇園だとして口に出すってなんだよ。」
「よ…ヨット?」
「いきなりしりとり始めて誤魔化すんじゃねえよ、小学生かよ。って小学生ですらそんな下手な話の逸らし方しないぜ?」
何故伝わったんだ……
「ごめんなさい……」
「別に謝れってわけでもないけどさ…
「あ、こんなこと話してる場合じゃないんだった」
「まったく、このおっちょこちょいさんが…」
その瞬間、ブチィッ!とまるで堪忍袋の尾でも切れたような音がきこえた気がするので真剣になって話を聞いた。
今のも別に謝れってことではないと思うので、謝らなかった。
「最近、夜が深くなると謎の群勢が町をウロチョロしてるらしい。ハッキリと見えるわけじゃなくて、雨の日に、一ヶ所だけ雨が当たってなかったり、変な影が動いているって話だ。」
「なるほど。それで、依頼料はいくらだ?」
「出せて十万だそうだ。」
「………………………………………
呆気に取られて、少し沈黙する。
「え、十万?聞き間違い?」
「十万だ。」
「…………………………………………
「ふ っ ざ け ん じ ゃ
ね え ぞ ! ! !
「待て、交渉人と話をつける。
「誰だ?そんな小金で交渉しようってやつは。」
今までの報酬は軽く見積もったって50万は超えていた。
いくらなんでも十万はおかしい。
飯を食っていけないぞ。
「それが、相手が相手で…」
「なんだよ、とりあえず言ってみろよ。」
「校長先生だ。」
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