温かな日々
椎名由騎
彼女との時間
温かな春の陽気に照らされて桜の並木道を彼女の隣を歩きながら学校へと向かう。今年から大学に進学し同じ高校から付き合っている彼女と大学進学を機に同居をすることがになった。
「
「しねーよ。てか
「減っても同じ家に帰るんだから最初から詰めるわよ」
女性に【誠人】と呼ばれた男性、
「それだけ時間がお互いに合わなくなるだろ」
医学部と工学部では講義数も変わり、医学部に関しては研修として附属病院にいることが多い。生活リズムが変わってくる為、そんな彼女を支えたいという気持ちは彼にはあるもののどうしても納得が出来ない部分もある。
「それは仕方ないでしょ。家でもお願いだから納得して」
「だってなぁ」
彼は彼女の手に手を伸ばして繋ぐと指を絡める。
「好きで仕方ないんだって」
「それは私もだけど……夢の為には仕方ないことで」
高校の時から人一倍勉強を頑張っていたことは知っており、医者になることが彼女の夢であることは周知の事実。だから高校の担任に彼の成績では無理と言われた大学も彼女のそばにいる為に頑張った。特に何かをやりたいと思って入ったわけではないが、興味のあるものがあった為同じ大学にした。
「わかってる。だから少しでも一緒に入れるように同棲を考えてくれたことは感謝してる」
「説得は大変だったけどね」
大学生で同棲をすることに彼女の両親は大反対であった。一人暮らしならまだしもまだ未成年の二人では駄目だと反対し、彼女と彼はしばらく会えない日々を過ごした。そこで彼女がどうにか親類たちと一緒に両親を説得し、学業で常に上位をキープすることと彼が仕事につけるような夢を見つけることが課題となった。
「だから誠人も何か夢を見つけてね」
「ちょっと考えてることは……なくもない」
「もうどっちよ!」
少しじゃれ合いながら並木道を歩きながら大学へと進む。この先大変なことがあっても二人なら乗り越えられるそんな気持ちがこの時の二人にはあった。
温かな日々 椎名由騎 @shiinayosiki
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