──

僕はある1つの罪を最後に犯しました。

それらは、他のどの罪よりも重たいものかも知れません。


──僕は生前、ひとつの命を救いました。


おかげで、たくさんの人を笑顔にしました。


それでも、この罪は消えません。


──僕は生前、ひとつの命を終わらせました。


まだ、助かる命を終わらせました。


まだ、生きれる命を終わらせました。


おかげで、たくさんの大切な人を悲しませました。


──そして僕は、死後たくさんの未来これからを壊しました。


そんな、僕には素晴らしい名前がありました。

でも、今は名乗る事は出来ません。

何故ならば、僕は罪人でありながらあたかも英談の様に誇らしげに自身の罪を語り、自身を偽りの中に住まわせ全てから逃げた。僕にはもう、自ら名乗る資格がありません。

これから様々な人とすれ違いながら、名を聞かれながら、僕はここで待たなければなりません。

どれ程泣いても、謝罪しても、償っても。

僕はここで、待たなければなりません。

壊れる事も許されず、吹っ切れることも出来るはずもないまま、僕はここで⋯⋯待たなければなりません。


僕の名前が呼ばれる、その時まで。




その時が来るまで──


それまで、僕の名前は──

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親不孝息子 柊ツカサ @Tujasa-Hiiragi

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