艶やかな二人の巫女~雅華神社物語~

路地裏の本棚

求め合う二人の巫女

 ここは倭国わこく。世界の東の大陸の中心に位置している巨大国家。その首都「華蓮かれん」には、古くから街の治安維持と、街に迫りくる魔物達を退治する役割を担う「雅華神社まさはなじんじゃ」という、神主を含めて女性のみが所属を許される神社があり、そこには百人を超える巫女達が住んでいる。


 今日もまた、一人の巫女が巡回の為に街に繰り出し、多種多様な店が軒を並べる大通りを歩いていた。


「こんにちはっ、愛梨あいり様っ!」

「こんにちは、今日もみんな元気で何よりだわ」


 町娘から声を掛けられた雅華神社の若手の巫女・愛梨はにこやかに手を振りながら返事をした。彼女は今年で十八歳になる巫女で、艶のある、腰まで届くほど長い桃色の髪を風になびかせ、翡翠色の瞳を輝かせる美少女である。

 雅華神社の巫女達は全員が圧倒的な武力と高い呪術を有し、国の並の役人達の手に負えない問題に対処することを任務として請け負っている。その為街の住人達からの信頼と人望も厚く、彼女も例外ではない。


「それにしても、愛梨様は本当にお美しいわね~」

「あの大きな胸と艶やかな肌に黒く美しい髪、同じ女として憧れるわ~」

「雅華神社には、愛梨様に負ける劣らずの美しい巫女が大勢いらっしゃるし、本当に目の保養になるわね~」


 周囲の娘達は、自分達の間を通り過ぎる愛梨を見つめながらひそひそと話していた。雅華神社の巫女達は絶世の美女ばかりであり、外国から来た男達に言い寄られることも多く、中には身体を弄ろうとする者までいるが、大抵の場合は返り討ちに遭い、一度として彼女達が異性と関係を持ったことはない。

 これは雅華神社の規則として、巫女である以上異性と深い関係になることを禁じ、任務に集中することを義務付けられているからだ。


 だが、外国から来た男達が魅了される理由は、彼女達の美貌だけでなく、その巫女装束にもある。彼女達が着用している巫女装束の白衣は袖がなく、肩から胸の谷間までが露になり、更にお腹の部分が露出した大胆なものなのだ。


 その上彼女達が履いている緋袴も、横に腰から膝まで届く大きな切れ目が入っており、そこから艶やかな太ももが大胆に見えているのだ。このような巫女装束は、倭国に数多く存在する神社の中でも雅華神社やその傘下の神社のみである。


 何故巫女装束になっているかというと、露出の多い格好の方が、巫女が扱う呪術の源である霊力を取り込みやすく、また効率的な呪術の行使も出来るからだ。


「愛梨~!」


 すると愛梨の背後から、彼女の名前を呼ぶはつらつとした声が通りに轟いた。振り返ると、愛梨と同じ装束に身を包んだ白銀の髪の麗しい巫女が走りながら向かってきていた。


「間に合ったわ~!」

「もう、あとちょっとで遅刻になるところだったわよ姫華ひめか

「ごめ~ん、昨日の呪術の稽古の疲れで寝坊しちゃって~」


 姫華、と呼ばれた巫女は両手を合わせて琥珀色の瞳で彼女を見つめながら言い訳した。


「最近呪術や武芸の稽古が忙しいのは分かるけど、だからこそちゃんと身体を休めないと、こう言うことになるんだから気を付けるのよ?」

「はいっ! 気を付けます!」


 姫華は愛梨に敬礼しながらそう言った。


「宜しい、じゃあ巡回を続けましょう」


 そう言って姫華の頭を撫でた愛梨は姫華の手を取って繋ぎ、一緒に巡回を続けた。



――――――


 時刻は申の刻になり、一日の巡回を終えた愛梨と姫華は雅華神社に戻って街に問題がなかったことを報告し、二人で住んでいる寮でひと時を過ごしていた。


「はぁ~、今日も疲れた~!」

「お疲れ様、姫華。これどうぞ」


 そう言いながら愛梨は姫華に茶碗を渡した。中に注がれた茶は真紅の眩い輝きを放っていた。


「これって……」

「この間入って来た舶来の紅茶よ」

「西の大陸からのね、これ。高かったでしょ?」

「いつも頑張っている貴方への、私からのささやかなご褒美よ」


 愛梨はにっこり笑いながらそう言うと、姫華は涙目になった。


「ううっ、ありがとう愛梨~!」

「ちょっと姫華ったら、急に抱き着かないでよ~」


 涙目になりながら抱き着いてきた姫華に愛梨はちょっとした反抗をしたが、内心ではとても嬉しくかった。姫華は愛梨の同期であり、公私共にしてきた大切な人なので、このような些細なことであっても無邪気に喜ぶ姫華に癒されるのだ。


「それより、早くお茶飲んで、食堂に行きましょうよ。夕食まだだし……」

「夕食ならぁ~……」


 すると姫華はおもむろに愛梨の背後に回り込み、彼女の緋袴の切れ込みに左手を入れて太ももを揉み始め、右手で胸を触り始めた。


「ちょ、姫華、まだ早い……」

「だめ、もう我慢できない。ずっとこうしたかったから……」


 戸惑う愛梨の耳元でそうつぶやいた姫華。姫華はこの一週間、任務や武芸の稽古のせいで愛梨と触れ合えず、寂しさと恋しさが募っていたのだ。それは愛梨も同じであったが、あまりに急なことだったので驚きを隠せなかったのだ。


 雅華神社は規則で異性との恋愛は禁じられているが、人間である以上そう言った類の欲求と無縁でいられるはずもなく、このように巫女同士で恋愛関係になるのは、雅華神社ではありふれた事なのだ。


「もう、姫華ったら……」

「愛梨の胸、本当に大きくて柔らかいわ~。それに太もももすべすべしてて……♡」


 量の手で愛梨の身体を触る姫華は恍惚とした表情になっていた。無論、触られている愛梨も同様だった。


「ふふっ、こうしたらどうなるのかな~?」


 すると姫華は太ももを急にくすぐり始めた。


「く、くすぐったい……‼」


 笑いを必死に堪える愛梨。


「愛梨って柔らかくて安心する……」


 こうなると姫華は止められなくなる。心が満たされるまで愛梨の身体を堪能し続けるのだ。


「この装束、いろんなとこから手を入れられるから便利よね~♡」


 この装束は霊力を集めやすくする為のものなのだが、副次的な効果として、巫女同士の触れ合いを過剰に進めてしまうのだ。と言うのも、この巫女装束は初代の女神主が霊力の関係のみならず、同性に興味を持っていた自らの趣味も多分に盛り込んで製作しているのだ。


「そ、そろそろいいでしょ?」

「う~ん、もうちょっと~」

「ひ、姫華……」


 すると愛梨は身体を先程以上にフルフル震え始めた。


「愛梨?」

「も、もう私……」


 直後、愛梨は姫華の両手を取り、そのまま巧みな体術で彼女を押し倒してた。


「私も、もう我慢できないっ‼」


 その瞬間、愛梨は姫華のおなかに顔を埋め、両手を緋袴の切れ込みから丸出しになっている太ももを触り始めた。


「あ、愛梨っ⁉」

「私だって甘えたいんだものっ‼」


 そう言いながら愛梨は彼女のお腹に顔を埋めた。


「姫華のお腹、すべすべしてて気持ちいい……♡」


 姫華のお腹を優しく撫で、太ももを揉み続ける愛梨。


「あ、愛梨、怒ってる?」

「ええ。だからお返しよ♡」


 そう言いながら愛梨は彼女に顔を近づけ、徐々に徐々に距離が縮まっていき……


 ガラガラッ!


「愛梨~!姫華~! そろそろ食堂に行こうよって……」


 勢いよく開かれた扉から、別の部屋の同期の巫女が二人を食堂に誘おうとやってきたが、あまりにも間が悪かった。


「えっ、え~っと……」

「あ、後で、いくわ……」


 頬を指先でぽりぽり掻きながら苦笑いする巫女に、愛梨は必死に声を絞り出した


「じゃあごゆっくり~。でもあんまり激しくして、動けなくならないようにね~」


 巫女はちょっといたずらっ気のある表情をして戸を閉めた。


「……どうする? 姫華」

「もう少しいいわよ」

「じゃあ、そうするっ♡」


 私はそれから十五分、姫華にたっぷりと甘えた。

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