第5話 なんなんだこのモヤモヤは……
「おーい、樫村ー、いーきーてーるーかーーー」
一ノ瀬の声に、目だけで反応する。
藤田先生に告白してから早1週間。なぜ、あの時あんなことを言ってしまったのかは、今でもよく分からない。……変態か俺は。
あの時の告白は、どうやら冗談だと思われたらしい。藤田先生に笑って流された。
でも、結果的にはよかったのかも知れない。俺が教師に告白とか、ホントありえないし。それにあのままだと、あの後の作業が気まずくなってたと思うし。
でも、なんか……なんかモヤモヤすんだよなー。
「何お前、そんなに振られたことショックだった訳? モテモテのお前が? 」
一ノ瀬の言葉におもわず噛み付く。
「ちっげーよ。なんか、こう、モヤモヤするってーか。つか、振られてねーし。」
「いやいや、笑って流されてんじゃん。それって振られたのと同じじゃね? 」
一ノ瀬の言葉を思いっきり無視して、俺は机に突っ伏して頭を掻きむしった。
「んー、なんか、なんかモヤモヤする」
「じゃあ、もっかい告白すれば? 俺を養ってーってさ」
「それは絶対やだ」
「なんでだよ」
「なんでって、なんかやなんだよ」
「あっそう。だったらずっとモヤモヤしてろー」
それだけ言い残して一ノ瀬は、俺の席から離れどっか行ってしまった。
なんだ、なんなんだこのモヤモヤは……。なんで俺はこんな面倒極まりないことで頭を抱えているんだ。なんでこんなにモヤモヤするんだ……
「あっ、一ノ瀬くん」
クラスメイトの女子が話しかけてきた。
「ん? 何? 」
「さっき藤田先生から、今日の放課後も資料整理手伝ってって、伝言もらったから。今伝えたからね」
「……あ、ありがとう」
何とか絞り出したお礼の言葉は、少し掠れていたかもしれない。
あの告白から1週間。なるべく藤田先生と関わらないようにしていたのに……。
今の状態でまた先生と教室で2人っきりになるとか……神様は、俺に死ねと言ってるんでしょうか。
16歳、花の男子高生ですが婚活します〜先生、俺をヒモにして〜 宮野杏 @miyanoanzu
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