第4話 先生、俺を養ってよ

放課後、俺は先生から資料整理を頼まれた。

「これを3枚重ねてホッチキスで止めてほしいんだけど」

「わかりました。じゃ、俺やっておきますね」

「いや、私も一緒にやるから。1人じゃさすがに大変でしょ」

「……ありがとうございます」


そして、今俺は、教室で藤田先生と2人きりである。もう一度言う、2人きりである。


『いっその事藤田先生にすれば?』


一ノ瀬の言葉が頭の中を流れる。


『スタイルも顔もそこそこで、性格だって、そんなに悪くないじゃん』


確かに、一般的に見れば、藤田先生は悪くない。3次元にしては、なかなかに美人だと思う。先生じゃなかったら、俺も好きになってたかも知れない。


「樫村くんってさ、なんで部活入ってないの?」

「えっ?」

「だって、運動神経いいでしょ。せっかくだから入ればいいのに」

「いや、俺は……」


どうしよう。部活に入るとオタク活動に興じる時間が無くなるから入ってません、だなんて絶対いえないしなー。


「なんとなくですかねー……」

「あ、そう」


「………」

「………」


ヤバイ、会話が続かない。どうした、いつものコミュ力高い俺!いつものごとく猫をかぶれ!


『いっその事藤田先生にすれば?』


あーもううるさい。消えろ消えろ。一ノ瀬の言葉なんか消えろ。


『スタイルも顔もそこそこで、性格だって、そんなに悪くないじゃん』


「……先生、今彼氏いるの?」


気がついたらそう聞いていた。


「えっ、彼氏?さー、どうだろうねー」


「結婚してるの?」


「結婚はしてない」


「じゃあさ先生、俺と結婚して。俺を一生養ってよ」


何を血迷ったのか、俺はこの時、こんなことを口走っていた。


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