第4話
「昔。この
移り行く季節の中、やがて業平は紀有常の娘と契りを交わし、長きに渡りこの地で暮らしていた。
そんなある日。ふとしたことで
しかし、妻は夫の不義を
『かぜふけば おきつしらなみ たつたやま』
「二人の出会いの時は、それより更にさかのぼります・・・・・・」
女の昔語りはなおも続く。
二人は
しかし時は流れ、成人となった二人には恥じらいの心が生まれてくる。そんなある日のこと、男はかつての
「
自身の成長を告げるその歌には、一つの意味が隠されていた。その真意を悟った女は、同じく一首を返した。
「比べこし 振り分け髪も 肩過ぎぬ 君ならずして
「その二人こそ、伊勢物語に見る業平と、『井筒の女』とも呼ばれし紀有常の娘。その恋物語も今は昔のお話でございます」
「さても詳しく語られることよ」
慈雲はいよいよ不思議の念を抱くと、女にその素性を尋ねてみた。
「あなた様は
「お坊様・・・・・・」
やがて、鮮やかに残る月光を背に、女の姿が段々とおぼろげになっていく。
「さぞ、徳の高き
「然らば、『井筒の女』と申すも」
「私のことでございます」
開く花が段々と萎むように、女の紅き唇と白き肌が闇に吸い込まれて行く。
やがて、
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