最終話 これからの俺の運命

俺は双子の妖精2人を連れて、フィーネの待つ4層へとついた。

時刻は、とうに3日を過ぎていた。

それでも、この2つの物を渡すまではと諦めずに向かった。

エルフの耳はいいらしい。

「候!!」

そう叫んで出てきたフィーネは躓きながらも俺の胸へと飛び込んだ。

後ろで後を追いかけてきた爺さんが泣いている。

自分の孫のように見守ってきたのだろう。

「フィーネ、ただいま…。汚れるぞ。」

そうは慣れようとした俺にフィーネは少し拗ねたように

「帰って来ないかと思ってました。心配してたんですよ!!」

と、さらにギュッと俺の胸に顔をうずめた。

久々の白い肌に滑るような谷間のラインが…。

「俺には刺激が強すぎる…」

とボソッと呟いた。


俺は爺さんに取ってきたものを鑑定と薬の調合を頼んで、風呂に入った。

フィーネも双子の妖精と風呂に入ったらしい。

隣から、キャッキャッとはしゃぐ声が聞こえる。

「仲良くなったみたいだな。」

歳的には近そうだし、友達ができたみたいで嬉しそうだ。

風呂から上がると国王の部屋に俺と双子の兄弟は呼ばれた。

「時刻は過ぎたのになぜ戻った」

険しい表情の国王は、俺に視線を向ける。

妖精2人はびびって動けないようだ。

「フィーネが少しでも長く生きてくれればと思い戻りました。時刻の件は申し訳ありません。約束を破ったのは確かです。この層からの追放なり、牢獄送りなりお好きになさってください。だだ、この2人の妖精はお助け下さい。」

俺は、どうなってもいい。

どうせ、この2人も訳ありなんだろう。

ナーレ、レータだけは助かれば。こいつらには俺らの取引きには関係がない。

「お前はどうなってもいいと。天から召喚された偽善者が。ならばこの層からの追放だ。殺されないだけ、まだましと思えよ。」

その言葉に妖精2人が怒ったように重そうな口を開いた。

「お待ちください、エルフの国王よ!」

「私たちはエルフお嬢様を助けるために懸命に命を張った候をそのような処罰、あんまりです~」

「そうです、この者は私たちも助けてくださいました。フィーネ様も慕っております。私たちが妨害しなければ、こんなにも時間がかからなかったはずです。」

「私たちが死刑でもいい~。処罰を受けます~」

「お前ら・・・」

国王はその言葉に少し頬を緩めた。

「では、本当にフィーネの寿命が延びたならばお前らの処罰を考えるとしよう。」

「それでは…」

「しばし、待たれよ。」

そう言って国王は玉座からいなくなった。

俺たちは、初め来た時の部屋、ツユカさんの部屋に戻ったのだった。

そして俺は怒った。

「なぜ、俺を庇った!お前らには今回の取引きは関係ないはずだ。どうして!」

2人は顔を合わせて笑いながらこう言った。

「あなたと契約したんだもの」

「もう死んだ者と同然だったんだもん~」

「それに、いま殺されようがこの国から出れば、殺されるわ。私たち。魔女様に」

「妖精族の層に戻っても追放されるだけだし~」

「お前たちも闇が深そうだな」

俺はそう言って苦笑いした。

その言葉に2人はまた眼を合わせて話し始めた。

「私たちは、国の王から奴隷として魔女様の層に売り飛ばされたのよ。」

「そして、魔女様の層で掃除や家事をしていたの~。」

「そしてある日呼び出された、あなた達を奴隷から魔女見習いにするって。奴隷は他にもいたけどいろんな種族いたわ。」

「でもやっぱり蛇族はすぐに死んでいった。」

「最下層は雪だもの。太陽に一番近い層でをだったあの種族にとっては真逆。」

「かわいそうよね~」

奴隷ね、そんなに各種族集めて何がしたいんだ。研究かなんかか。

そう話していると、爺さんが入ってきた。

「候様、それに妖精族の御二方。薬ができましたぞ。」

「じゃあ、これより、フィーネ様にお使いいただきます。国王様ももちろん同席です。」

俺は一つの不安を帰り道から拭えずにいた。

俺は恐る恐る口を開こうとすると、ルフが少し寄ってきた。

<あなたの不安わかるわ>

<あのエルフ、死ぬかもって思ってるだろ>

俺は心の中で囁いた

(ああ、どうにか確証が持てなくてな。これで死んだとなれば俺は…)

どうしていいかわからなくなる。

そして、確実に打ち首だろう。

<あなたが願えば、私たちが力を貸さなくもないわよ>

<代償はあるけど>

(なんだ、代償って)

<年齢がこれ以上大きくならない。>

<一生成長しないってことっ>

俺は一生18歳。身長も伸びず、ずっとこのまま。

人間世界に行ったらこんなの嫌だけど、この世界でなら。

(俺はそれでもいい、フィーネを救いたい)

<わかったわ>

そういって一匹の花びらのような物が心臓のあたりに入っていった。

「うっ」

ドクンっと心臓が跳ねあがり、膝をついて倒れ込んだ。

(どうなんだ、あの薬)

俺は自分の体の変化に耐えながら問いかけた。

<うん、見てきたけど成功よ>

(わかった、お前たちを信じる、ありがとう)

<人間なんかにお礼言われてもうれしくない>

<こんなの朝飯前だ>

そう言ってルフたちは散って行った。

「候、大丈夫?!」

「候、顔色悪い~」

そう言って、ナーレとレータが心配そうに肩に乗った。

「大丈夫。みんな助かる。」

「どうゆうこと」

レータがそう聞いてくる間にも目の前でフィーネと国王が並んでいる。

「これより、この小瓶の物をフィーネ様に飲んでいいただきます。」

爺さんがそういい、フィーネに小瓶を渡した。

「フィーネ、それを飲めば体がよくなる。」

「お父様、これはどううゆう。」

困惑しているフィーネに無理やり飲ませようとしている国王。

まるで、未成年に大人が酒を共有しているようだ。

やれやれと俺は呆れて叫んだ。

「フィーネ!!それは俺の世界の薬だ。さらに綺麗になるぞ!安心していい」

そういった俺を見てびっくりしたフィーネは困惑しながらも一気に飲んだ。

飲んだとたん、フィーネはコトンと瓶を落とし、国王の方に倒れ込んだ。

国王は、怒りを露わにして、地響きと濃い霧を瞬く間に呼び寄せた。

みんな、国王の恐ろしさにひれ伏し、フィーネを爺さんに渡して叫んだ。

「この三人を今から殺せ!!!」

その言葉にさすがに俺は目を閉じた。

ルフを信じたのは俺の馬鹿だったのか?

(おい、ルフたち、どうなってる)

俺の心臓に入ったルフが答えた。

<少し待ちなよ~。>

と。俺は今にも殺されそうなのに、待てるか!!

そう思いながらも、フィーネが目を覚ますのを待った。

兵士達の剣が一目散に切りかかりそうなとき

「お、お父様?私…」

そうやってやってきたフィーネに国王がやめろと叫んだ。

「こぇ~、マジ危なかった~」

「「怖かった~」」

そう言って安堵した俺たちはフィーネを見た。

白い肌はさらに透明感が増し、大人の女性になったという感じだった。

「胸もさらにでかく…」

そう囁いた俺にレータが頭を叩いた。

ナーレはクスクスを笑っている。


俺たちはツユカさんの部屋に戻ってきて、俺は手帳を見返した。

「この消えかかっている文字なんなんだ」

「しかたないな~」

めずらしく、ナーレが背中の羽を震わせ、手帳の上に乗った。

そして、羽から粉のような物を手帳に振りかける。

「妖精の粉?てか、汚れるだ…ろ?」

そう言って手帳を見て粉を振り落そうとすると文字が浮かび上がった。

「なんだこれ」

「それは私が教えるわ」

レータも飛んできて粉について話してくれた。

「妖精の粉はごく一部の妖精だけしか出せないの。私たちの先祖は出せたらしく、珍しいと言われたわ。」

「これを使えることを知った妖精王はだれにも知られまいと私たちを隔離したんだけど~」

「魔女様に見つかって、妖精族を人質に私たちを手放した。そして、粉は定時に採取され、悪用されたってわけ。」

妖精族の力…

「お前たちの親はどうなったんだ。他にその力を持ったものはいなかったのか」

「私たちの知る限りいないの~」

「親は殺されたわ。子供をもう産めないと分かった時点でね」

「ひでぇ。」

俺はあまりの惨さとこの世界の闇の深さをさらに痛感したのだった。

「これが私たちが話せる全てよ。」

「ちなみに魔女様のことは知らないの~」

「顔すら見たことないわ。」

俺の心を読んだかのように魔女の事を教えてくれた。

そんな重たい話の中でコンコンと隣の壁からノックが聞こえた。

俺はすぐ、それに気が付き、ノックを返した。


今度は爺さんがノックして入ってきて、国王が待っていると伝えた。

「国王様、3人をお呼び致しました。」

「うむ」

玉座にふんぞり返っている国王は俺たちを見て微笑みながらこう答えた。

「ありがとう」

と。そう一言。そして、爺さんが俺に紙と1つの茶色の石を渡してくれた。

俺は不思議そうに問うと

「それをお前にやる。わしの力の一部だ。霧の」

そして紙は契約書だった。

「「エルフ国王 モル・キースは選ばれし青年、候に霧の力を受け渡しし、交友関係であることを認める。」」

「妖精族が読んだ通りだ。俺はお前を認める。この世界を救う器に」

俺は茫然とし、開いた口が塞がらなくなってしまった。

「ちょっと!候!!」

「しっかりして~」

2人に呼ばれて、改めて気が付く。

1つのミッションクリアなんだと。

「あ、ありがとうございます。しかし、切り離さなくても。」

「いいんだ、俺が持っても霧が濃くなるだけ。お前の力として使ってほしい。サインしてくれぬか?」

「国王様がよろしいのであれば、喜んで授かります。」

そういって、ナイフで腕を切り、血を垂らした。


俺は、湖で踊るフィーネ、牢獄から出されたエルフたちを眺めながら思った。

ツユカさんの願いを叶えようと。

1500年たった今、俺にできる事。

せっかく色が見える美しいフィーネが手を振っている。

俺も振り返す。

せっかく転生したのだから、魔女から恐れない、みんなが笑って暮らせる世界を作る王になろう。

俺は手帳を握りしめた。


((この世界を壊して、そして平等な国に))



「ふふ、候くん、次はどうやって遊ぼうかしら。」

そう言って、地層の地図に矢を射した。

「鱗ちゃんたちを呼んで」





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人間辞めて他の種族になりてぇ!けど、なんか違くね!?~霧の中のお嬢様編~ 若木澄空 @fujikisora

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