第5話 策略と原点に戻れ俺!!

俺は、国王、爺さん、そしてフィーネの見送りの後第7層へ向かった。

「フィーネのために…」

俺は、俺を救ってくれた恩人を救いたい。少しでも生きてほしい。

でも、この層にも気がかりがあった。

他のエルフが居ないのだ、あの3人の他に。

まぁ、とりあえずは3日以内に戻ること。

それを目指そう…。

そう、心にもう一度決めた俺は、7層への階段を下りた。


「ここが7層か。なんというか視界が悪い。」

昨日の晩、書庫で見つけた地図をもとに、ジャングルのような森を進んだ。

「にしても、靄がすごい。霧と違って湿度¥が濃い訳じゃない。なにか意図的に…」

そう考えながら、歩いていると、クスクスと笑い声が聞こえてきた。

「早く帰った方がいいよ~、フフフ」

「今なら、引き返せるかもよ~、ニシシ」

そう、俺にさっきから囁いてくる。

「だれだ!誰かいるのか!?いるなら出てこい!」

近くに落ちていた木の枝を拾って貧弱にも振るって警戒した。

「だせ…」

自分でも自覚がある。こんなんじゃ魔女が出てきても戦えない。

なにか手はないものか。

さっきの声は遠のき、どこかにいったような気がした。

一応、太めの枝を持って、先に進む。

「こんな天気じゃ、日にちが分からない。いつ日がのぼってるのか…」

ぐぅ…

「腹減った。なにか食う物ないのかよ…」

座り込んだ俺は、俯く。

なにが辛いかって、時間が分からないのが怖い。

「一生このままなのかな。てか、なんで俺が天気の王様なんだよ。一つも力持ってないんじゃ、転生した意味なくね。」

心が折れかけていた。

花も昆虫いない、この層で俺独り。

「いっそ、魔女でてこないかな。」

そう呟いた瞬間

「ばぁ!!」

「やーい、貧弱者~」

物陰から現れたのは

「妖精!?」

ここ、妖精の層じゃなくね!?

混乱して、頭が付いていかない。

「フフフ、私たち見て驚いてる~」

「そりゃそうよ、こいつ、この間転生されたばかりだもの。」

「そうよね~、力持ってないものね~」

そう言いながら、俺の周りをクルクルと飛んでいる。

「お前ら、なぜ7層にいる。3層じゃないのか」

そういった俺に、ケラケラと笑いながら、

「そんな事教えるわけないじゃなーい」

「お前を今のうちに潰しにきたのよ~」

潰す!?どうゆうことだ。


パターンは2つ。

1、何らかの方法で俺がここに来ることを予測し、王になる前の俺を潰し、王の座を略奪するため。

2、魔女の差し金で、俺の肉体を解剖するため、俺を潰しに来た。


どっちだ。

「いや、どっちでもいい!俺はここで死ぬわけにはいかない!」

「そう、じゃあ私たち捕まえてこの先に進めば~」

「まぁ、無理でしょうけど」

そう言って、さらに加速しながら俺の周りをブンブンと飛んでいる。

どうしたら…。

<思い出して、ここに来る前のあなたを>

そう、声が聞こえた。

俺を、馬鹿にしていない声が。

そうだ、俺は、色が分からなかった。

五感の一部が欠けていた。

そう思った俺は、目を閉じた。

「研ぎ澄ませろ、俺の耳を。」

「きゃ~、こいつ目を閉じた~」

「あきらめてくれたのかな!」

そう言って、微かな羽音と糸を張るようなキリキリをした音が聞こえた。

そして、思い出した、誰の近くにでもいるあいつらの存在に。

「お聞きください、我らのルフよ。我に力をお貸しください。その暁には我を授けましょう。」

そう、俺は語りかけた。

「ルフは人間なんかの言葉に応じる訳ないじゃないの」

「無駄、無駄~」

誰の近くにでもいるルフ。俺は、こいつらに頼むしかない。

「ふふふ~、この間の人間。」

「王の器に選ばれし人間。」

「お前と引き換えに我らが従おう」

「仕方ない、面白いから我らも従おう。」

そう言って、ルフたちは、俺に絡まった糸を切っていった。

「うそでしょ!?」

「ありえない~!」

やった、俺の勝ち。

そして、閉じていた目を開けて、妖精たちをパシッと採った。

「え、つかまちゃった!?」

「ヤダヤダ~離して~」

半泣き状態の妖精たちを捕らえた虫用の籠に入れた。

「こんな小汚い中に入れないで!!」

「昆虫じゃない~私たち~」

よく見ると、かわいい顔をしている。

そして、同じような顔。

「お前たち、双子か?」

「そうよ!そんな事より出して!」

幼女をいたぶっているようで少し、悪い事をしているような気分になってきた。

「お前たちは、誰の差し金だ?」

覗き込むように俺は双子を見た。

「それは、言えないわよ!」

「言ったら、殺されちゃう~」

なるほど、魔女か。妖精王か。

「まぁ、今はいいや。俺の仲間にならないか?」

びっくりしたような顔をした妖精たちは作戦会議を始めた。

まぁ、俺は耳を使うけどな。

「どうする、確かに戻っても殺されちゃう。」

「かと言って~貧弱な人間の言うこと聞くのもヤダ~」

「でも、ルフを一人で従えたのよ?」

「確かに認められてた~」

貧弱って。そんなに人間下等生物かよ、こいつらにとって。

「「味方になってやるわ」」

そういった、双子の妖精はここから出せと言わんばかりに泣いていた。

「しかたないな~。じゃあ、ここにサインして」

そういった俺は地面に書いた誓約書に妖精たちに血を垂らせと銘じた。

書庫で読んだ内容にあったのだ。口約束では裏切りが出る場合があると。

人間世界と同じなのだ。

ただ、この世界には警察などいない。

違反したものは、ルフにより、魂を食われると。

「しかたがない、命を懸けるしか…」

「罪が重いよ~、何も悪い事してない~」

そういいながら、籠から出された二人は、近くの木の枝で腕を切って血を垂らした。

「見届けた、人間よ。この妖精たちを共に歩め。」

そう言って、ルフたちは散っていった。


歩きながら、俺の経緯を話した。

そうすると、2人の妖精は笑った。

「勝手転移させられたのにお人よしね」

「エルフだって怖いんだよ~」

そう言って、エルフ国王の真似をした。

「そういえば、お前たちの名前まだだったな。俺は」

「候でしょ、知ってるわよ。儀式の時見てたもの」

「なんだ、知ってるのか」

「私、ナータ~」

「私はレータ、知っておきなさい、人間」

「人間ってやめろよ、レータ。仲間だぞ」

「だって」

「候でいい、だから友達みたいに接してくれ。」

「しかたないわね!」

「わかったよ~こう~」

のんびり屋のナータ

少し上から目線のレータ

2人は飛びながら、洞窟へと連れてきてくれた。

俺的には、妹ができたみたいで嬉しかった。


しばらくすると、洞窟が見えた。

「ここよ、候」

「暗いから、気を付けて~」

枝に火を灯そうと考えた俺は、護身用に持っていた枝に爺さんにもらったマッチに火をつけた。

「ここで、そんなことしたらダメ!」

「昆虫たちが逃げちゃう~」

普通虫って火によって来るものじゃないのか?

不思議そうな顔をしていると

「ここは靄の中。洞窟内の靄に引火して火事になってしまうわ!」

「昆虫たちは、この空気を好んで生きてるの~、余計逃げちゃうよ~」

「なるほど。じゃ、どうやって探せば…」

「私たちにはわからないわ、そんな能力ないもの。吸血族じゃあるまいし」

「吸血族は、できるのか?」

「超音波で音を洞窟内の音を反響させて見つけることが可能~」

「音ね…」

何か手はないものかと考え込んで洞窟の入り口に座り込んだ。

それを見た双子も飛ぶのをやめて、俺の両肩に座わった。

気が付いた。

双子の羽音が止まったことで微かにだが音だ聞こえる。

そして、この靄。

こんな日の射さない温かくも寒くもない場所に花は咲くのだろうか。

草木は生えていたとしても、花が咲くとは到底思えない。

どこかに水と光があるはずだ。

「洞窟の奥に進もう。」

そう立ち上がった俺にまた飛び始めた二人にこう言った。

「二人は、俺の肩に乗ったままにしてくれないだろうか。バランスとるのが大変なら、手の上でもいい。」

「何か、策があるのかしら。」

「肩の上でも大丈夫だよ~」

そう言って、2人は素直に肩に座りなおした。

俺は、微かにカサカサと聞こえる音に耳を澄ませながら進んだ。

そして、地面が少し濡れている部分を見つけた。

俺は俺を指で撫でて、舐めた。

俺の行動に驚いたレータが黙っていた口を開く

「なに、地面舐めてるのよ、頭おかしいんじゃないの!?」

「少し黙っててくれ」

俺の言葉に口を閉じた。

あまりに、真剣な顔をしていたのだろう。

殺気すら、感じたらしい。

ナーレが震えてる。

俺はそれを見て、二人の頭を撫でた。

「ごめん、もう少しだからな」

コクンと頷いた2人は、前を見た。

ここか。

そこには池があった。俺は池の水を舐めて確信した。

多分上の層から落ちてきた水だろう。

「レータ、上は人魚族が住んでるんだよな。」

「そうよ、一日中曇りの続く人魚族の湖があるはずよ」

「わかった」

上から、ポタポタと水が落ちてきている。

近くにあった石を俺は、頭上に投げた。

次の瞬間!

水の雨が降ってきた。

地層が耐えられなくなっていたのだろう。

「崩れ落ちるのも時間の問題だ」

「「なにしてるの!!」」

2人とも慌ててもブンブンと飛び回っている。

「大丈夫だ、信じろ、俺を」

そう言った俺の言葉にピタリと動きを止め、俺の言葉を待った。

「二人ともこれをもって入り口まで戻れ。必ず虫がそっちまで逃げるはずだ。」

「どうして、それが分かるの。」

「花は~?」

「花は俺が摘んでくる、2人は、さっき俺を巻き付けたい糸で虫を頼む。地面を張って歩いていくはずだ。」

「どうして、それが分かるの」

「それは帰り道にでも言おう。今は時間がない、さあ、行け!」

「わかったわよ!」

「候も気を付けてね~」

「おう!」

「さーて、俺も」

そう言って、池に飛び込んだ。

そこまで深くなく、すぐにそこに付いた。

「あった」

俺はすぐに花を摘み、水面に戻る。

「ぶはっ!」

そして、走った。崩れる前に。


一方

「候のやつ何考えてるのよ!!」

「しかたないよ~、今は従うしか~」

「そうだけど!」

文句を言いながらも二人は入り口に戻り、地面近くに糸を張った。

すると、昆虫が一目散に逃げてきて、糸に引っ掛かり、ひっくり返った。

「つかまえた!!」

「やったね、レータ~」

「候を待つわよ!」



走ってきた候と合流し、エルフの層に戻ったのだった。

2人に種明かしをすると、驚いた顔をして笑った。

「この世界壊れちゃう。」

「もう、いいんじゃない?」

と。

次の反感を買うだろう。

しかし、俺はこの世界になぜ俺が選ばれたのかまだしるよしもなかった。




「報告します、人間を捕らえるのを失敗した模様です」

「やっぱりね。妖精じゃ、小さすぎるものね」

「次は、どのように致しましょう、女王」

「そうね、壊されたお魚ちゃんたちをつかいましょうか」

「かしこまりました」

そう言って、グラスの中の物を飲み干した。

不定期な笑みを浮かべて。




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