12話 ハンター試験開始
雲一つない快晴の空。
あまりの眩しさに、もう部屋に帰って寝たくなってきた。
元引き籠もりで幽閉されてた身としては、日差しは厳しいものがある。
私達は王都ロマニ近郊にあるダンジョン「セラーナン」に向かっている最中。
地下に一層あるだけの初心者ご用達のダンジョンらしく、今回のようなハンター試験で新人のテストでよく使用されている場所らしい。
ダンジョンの最奥にある場所に置かれている宝箱の中に入っている証を取ってくるだけという簡単なクエスト。
道中にはモンスターも出るので、新人のテストには丁度良い感じなんだと思う。
「あそこが目標の場所みたいだな」
「ええ」
「……」
私達と4人パーティーで試験を受けている。
男1人に私を含めて3人が女性のハーレムパーティー。
ギルドでされた自己紹介を思い出す。
ガイナム・ホーガン
メインの武器は槍。斬ったり、突いたり、薙ぎ払ったり出来る。
青色のツンツンとした髪型に少年らしい幼いと生意気さがある糞ガキだ。
まぁ前線で私の分も含めて頑張って欲しいので、煽てて調子に乗って貰おうと思う。
メイリン・ハーフイナ
メインの武器は杖。攻撃方法は魔法。得意なのは火炎らしい。
憧れは火炎系最強の使い手とされる『炎皇』エヴァンジェリン・ヴァインツィアール。
ガイナムとは幼馴染みのようで、見た感じは好意を寄せているのが分かる。因みにガイナムは気づいていないようだ。これだから難聴系男子は困る。
ナイル・ホーカス
メイン武器は拳。亜人。猫人族らしい。因みにシドニーは狼人族。
私は猫よりもイヌ派だけど、猫も悪くないと思う。
常に気を張っている。自己紹介の時も最低限の言葉だけで、それ以上は何も言わなかった。
猫みたいに信用してくれたら、打ち解けてくれるかもしれないけど、試験中の関係だけだと難しいかもしれない。たぶんツンデレさん(願望)
ダンジョン「セラーナン」の入り口は、大きな石が積み重なって出来ていた。
直ぐに地下に降りる階段がある。
私達は警戒しながらゆっくりと階段を降りる。
ダンジョンの中は、光がないため真っ暗だ。
メイリンは杖を掲げて呪文を唱えると、炎の塊が5つほど現れた。
前に3個。後ろに2個移動した。
「どうして1個じゃないの?」
「1個だとその場しか対応してないでしょう。暗闇だと居場所を知らせることになるから、複数個出して、奇襲をできるだけ防ぐようにする為よ」
「なるほど」
私は頷いた。
色々と考えてるんだ……。
「こんな場所にいる魔物なんて、俺が瞬殺してやるぜ!」
「うん。期待してる」
「ああ。お前の出番はないから、後ろでゆっくりしてるんだな!!」
私は頷いた。
糞ガキとか思ってごめん。
私の分も含めて頑張ってね。私は基本戦闘はしたくない。理由は面倒なのと疲れるから。
「ガイナム! 大口叩くのは良いけど、油断しないでよ」
「……するわけないだろ。もし、万が一があったとしても、お前が後ろで支援してくれるだろ?」
「全く。調子良いんだから」
顔を赤らめて言うメイリン。
ラブコメ。ラブコメですか?
やっても良いけど、私がいない場所でしてくれないかな?
リア充イベってゲームとかは良いけど、実際に見ると苛つくんだよね。
特に私のような恋愛経験ゼロには、余計に――ね。妬ましい。
「――」
しばらく何事も無く進んで行ってると、突然、ナイルが地面を蹴り斜めに跳んだ。
左側の壁に足をつけて、もう一度跳び、天井にいる物に攻撃を仕掛けた。
たぶん小悪魔――グレムリンだ。
緑色の身体に悪魔のような黒い翼を生やしている。
蝙蝠のように天井で寝ていた所に、ナイルが奇襲を仕掛けた形だ。
「雷拳」
バチバチと音を立て青白く光る拳をグレムリンの腹部を殴る。
小さく悲鳴をあげグレムリンは地面へ真っ逆さまに落ちた。
「天拳」
追撃するように天井を再び蹴り、拳を握りしめ、落下速度をつけてグレムリンへ止めのの一撃を食らわした。
地面は凹み、亀裂が少し走る。
オーバーキルじゃない?
初撃で倒せてた気がするけど……。まぁ、倒した気でいるより必ず殺した方が、後々の事を考えるといいのか。
RPGみたいに相手の残りHPとか分かれば楽なんだけどねぇ。
《予測と推察からある程度は導き出す事は可能》
うーん、とりあえずはいいや。今のところは戦う予定はない。
ガイナムとナイルがいれば、戦う必要性はないよね?
私はマッピングを頑張ります。流石に何もしないのは悪いかなぁと思って、マッピング担当に志願していた。
本当はギルドで、このダンジョンの地図は売ってるんだけど、試験ということで購入することはできなかった。試験だし仕方ないか。
ただ割とやり応えがある。これが何十層ものダンジョンは飽きてイヤになるだろうけどね。
「おい! 攻撃する前に一言ぐらい言ったらどうだ!」
「……気づかないのが悪い。私達はダンジョン攻略に来てるの。ピクニックじゃ無い」
「なんだと!」
「まぁ、まぁ、2人とも。アリティナもなんか言ってよ」
「え。――そうだね。なら、二人で魔物を倒した数を競えばいいんじゃない?」
私は凄く楽が出来て、マッピングに集中する事が出来る。
「いいぜ。やってやる」
「――構わない」
タイミングが良いと言うべきか悪いというべきか。
さっきの音と、私達の声に反応して、奥から魔物がやって来た。
魔物はゴブリンが5体。
先に攻撃を仕掛けたのは、ガイナムだった。
ゴブリンに向けて自慢の槍裁きで突撃する。
でも、この狭い空間だと槍で出来る事は突くぐらいないんだよね。
このダンジョンの横幅し、私が両手を広げて1メートルほど余裕がある程度しかない。薙ぎ払う等の動作は厳しい。
その点、拳がメインのナイルはこの狭さだからこそ機動力を生かせて、先ほど見せた瞬発力で縦横無尽に攻撃できる。
……よほどの事がなければ、私的にはナイルが勝つ気がする。
「くそっ。放せよ!!」
ゴブリンの一体が急所を外れていたのか、身体を貫かれた槍を握りしめて放そうとしない。
同時に上空からグレムリン三体がやってくる。手にはショートシードを持っていた。
メイリンは前方にある火炎球を3個を放つ。しかし、一体には当たるけど、他は外れてしまった。
後ろにある2個を使うわけにはいかない。使用すれば、暗闇になって私達は不利になる。
「雷霆拳」
ナイルは両手から雷の閃光を放った。
――この子、ド○ゴ○ボー○次元の人なの?
雷霆拳の光の渦に巻き込まれたグレムリンは、黒焦げとなり地面へと落ちた。
ガイナムは槍を思いっきり引き抜いた。
それでメイリンとナイルに一度視線を向けてばつが悪そうに言った。
「……すまなかった。油断した。これからは気をつける」
意外ときちんと謝れる子だった。
幼馴染みで慣れているメイリンは「別にいいよ」といい、ナイルは何も言わなかったが頷いた。
なんだか、ハーレムパーティーを将来は組みそうな気がする。
私的にはやめておいた方が良いと思うよ。フラグ管理が面倒くさいし、何人もの女性と付き合って赦されるのは屋根裏に住む怪盗ぐらいだからね?
まぁ私の勝手な老婆心は置いておくとして。
一つ気になる事がある。
さっきの魔物達は連携していたように思う。
後からグレムリンが来ることが分かってなかったら、ゴブリンも自分の身体を貫いた槍を手で掴んだ
たまたまだといいなぁ。
何かボス的な魔物がいるような気がする。
でも、初心者で新人用のダンジョンにボスキャラを配置するかな?
妙にイヤな予感がするけど、所詮は私の感でしかない。
マッピング担当として周辺に気を配りながら進むことにした。
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