第14話 鍛冶師ノエル

空に『紫電華』をあげてから一週間が経った。

あれからグリーンさんと何度かレベル上げを行い、21レベルまで到達した。


─────────


 ■STR【ストレングス】174


 ■VIT【バイタリティ】160


 ■INT【インテリジェンス】121


 ■MND【マインド】121


 ■AGI【アジリティ】130


 ■DEX【デクステリティ】128


 ■LUK【ラック】30


 ■リク レベル:21

【木天使ミカエル】


―――――――――


「グリーンさんはこの後も狩り続けますか?」

「いや、もうメイリーンに戻ろうかな。リクも戻るでしょ?」

「はい、じゃあ一緒に戻りましょ」


僕とグリーンさんは『ドーラの洞窟(下層)』から上層に向かい、ポータルでメイリーンまで飛んだ。


◆ ◆ ◆ 


ポータルはいつも通りの賑わいで、喧騒が辺りを包んでいた。


「じゃあ、今日もありがとうございました」

「ああ、今日もまたINするでしょ。またその時ね」

「はい、さようなら」


グリーンさんはこれから用事があるみたいでログアウトしていった。まぁ、今日は日曜日だからしょうがないね。

僕もログアウトしようといつもの宿屋に向かうと、噴水広場でポーションを売っているポーリンさんを見つけた。


「こんにちは、ポーリンさん。久しぶりです」

「おー、リク君か久しぶり。今日は清水買い取れるよ」

「いやいや、今日は持ってないですよ。それより前の『調合セット』ありがとうございました」

「使ってる?」

「ええ、めちゃくちゃ使ってますよ。大活躍です!」


それから少し、牛頭男ミノタウロスの時の話などをして時間をつぶして過ごした。


「まぁ、役に立ったならよかったよ。それで、今日は何を買ってくれるの?」


ポーリンさんは笑いながら、冗談っぽく僕に聞いてくる。


「そうですね、じゃあ今日は僕が売る側になりますよ」

「そう?私の欲しいものを持ってるの?」

「そうですね、何か欲しいものはありますか?」


僕は薬草限定と言う条件を付けて、アイテムボックスの中を確認する。


「そうだね、今は月見華が欲しいかな。俊敏力を上げるポーションを作りたいんだけど中々お目に掛かれなくてね」


僕は最近スキル【万物の創造(薬草)】で発見したことがある。それはメニューからでも薬草を創造することができることだ。

きっかけは暇すぎてメニューをポチポチと弄っていたこと。スキルの整理をしていたら、ふと【万物の創造】を選択してしまった。そしたら「創造しますか?」と表示されたのだ。表示された通りに進めていったら、なんとメニュー欄から薬草が創造することができたのだ。しかも、創造した薬草はそのままアイテムボックスに直行。最初は使い道が分からなかったが、今ならわかる。

僕はメニュー欄から『月見華』を創造する。アイテムボックスを確認するとしっかりと『月見華』があることを確認する。


「これでいいですか?」

「そう、それそれ!いやー、リク君が持っててよかったよ。実はポーションの作成は依頼されてたものだったんだ。ありがと!」

「いえいえ、お役に立ててよかったです」

「じゃあ、これは代金ね」


僕はポーリンさんから代金を受け取り、『月見華』を手渡す。


「ちなみに『月光草』も持ってたりする?」

「えーとっ、ちょっと待ってください」


僕は『月光草』を創造して、確認する。月光草の葉は深緑色、花は紫色、花からは黒いパーティクルが散っている。


「これであってますよね?」

「そう、それそれ!それ売ってくれるの?」

「ええ、もちろん」


その後も、ポーリンさんの欲しい薬草を創造しては売って、を繰り返し小一時間が経った。


「いやー、それにしてもリク君は色々な薬草を持ってるんだね。これとかはどこに咲いてたの?」


ポーリンさんはそう言って『月見草』を手に取って眺めている。


「いやー、それは……。そうそう知人に貰ったんですよ」

「え、そんな物貰ってよかったの?!」

「え、いや、大丈夫ですよ。大丈夫……はは…」


僕は冷や汗をかきながら、何とか言い訳を考える。いやー、これからはどこで採れる薬草かも調べとかないとな。


「ポーリン、今ちょっといい……?」


僕とポーリンさんが話していると、隣から口を挟まれる。


「あ!ノエルじゃん!ごめん、まだ完成してないんだ」

「あ…いや要件はそれじゃなくて……。誰?」


ノエルと呼ばれた女の子は僕を指差して誰何する。


「彼はリク君。薬草を売ってもらってたの。それで、ノエルの要件って何?」

「リクっていうの……。よろしく」


僕はノエルさんに差し出された手を握る。


「よろしくお願いします。ノエルさん」

「ん。よろしくね……」

「そ・れ・で!ノエル、要件は?」

「そうそう…今日はロブス鉱石を売ってほしくて……」

「ロブス鉱石ね、ちょっと待ってて」


ポーリンさんはメニューを開いてアイテムボックスを確認する。数秒するとポーリンさんは難しい顔をして僕に耳打ちをしてくる。


「リク君は『ロブス鉱石』持ってたりする?」

「薬草以外は持ってないですね」

「そうだよねー」


ポーリンさんは額に汗を浮かばせて、ノエルさんの方を振り返る。


「ごめんね。ちょっとロブス鉱石はなかった」

「そっか…まぁ、しょうがない……」


ノエルさんはとぼとぼと噴水広場の外れに歩いて行った。


あっ!


「ちょっと、ノエルさん!待ってください!」

「ノエル!ちょっと待って!」


ポーリンさんも呼び止めてくれたおかげでノエルさんは戻ってきてくれた。


「ノエルさん。ロブス鉱石ってこれですよね?」


僕はアイテムボックスからロブス鉱石を取り出す。以前『ドーラの洞窟』で投擲の練習をしていた時に、そこらへんに落ちてる石を投擲用の玉として確保しておいたのだが、そのうちの一つが『ロブス鉱石』だったみたいだ。見た目は完璧に石と一緒なので鑑定をしないとわからなかった。僕は。


「そう…それ…ありがと……」


ノエルさんは少し微笑んだように見えた。


「今度…工房に来て…リクの装備作ってあげる……」

「いやいや、そんなの悪いですよ」

「リク君、作ってもらいなよ」

「いや、でも」

「私…リクの装備作りたい……」

「じゃあ、お願いします」

「うん…絶対だよ……」


ノエルさんと友達フレンド登録をして、今度こそノエルさんは噴水広場の外れを通って行ってしまった。そっちに工房があるのかな?


「じゃあ、ポーリンさんもありがとうございました」

「またね。今度薬草のお礼したいから見かけたら寄ってね」

「はい、じゃあまた」


僕はポーリンさんと別れていつもの宿屋に向かって行った。





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(新)運営のミスでVRMMOで最強になる 因幡 天兔 @Rabbit_usagi

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