第13話 宙=空

噴水広場の噴水の縁に貧乏揺すりをして腰を掛けている人がいた。その顔はどことなく見たことある顔で、今はむすっとしている。


「よ、よう。空」

「よう、じゃねーよ!いつまで待たせれば気が済むんだよ!チャットも全然繋がらないしよ」


目の前にいる、緑色の髪色をしている空。それ以外は見慣れた顔立ちをしている。鑑定を掛けると所属が『ルシファー』だということが分かった。

交換の話はカフェに行ってからすることにした。


◆ ◆ ◆


メイリーンにある、こじんまりとしたカフェ。客は僕たちを除いて三人しかいない。


「で、本当に『紫電華』持ってるのか?」

「ああ、持ってるよ」


僕たちの話に後ろの三人も反応したように思えたが、今はスルーする。


「まずは見してくれよ」


僕はアイテムボックスから『紫電華』を取り出す。

『紫電華』は紫色の花を付け、ビリビリしている。


「おー、本当に持ってたんだな。てっきり嘘かと思ったよ」


おいおい、そんなつまらないことで嘘なんかつかないよ。それにしても、店内の三人の視線が気になる。

空は『紫電華』を手に取ってうっとりと眺めている。


「とりま落ち着け。店の中だから」

「お、わりぃ。で、これをいくらで譲ってくれるんんだ?」

「あ、それはあげるよ。タダでいいよ」

 

僕がそういうと、店内の雰囲気ががらりと変わった。空もそれに気づいたのか、体をびくりと震わせる。


「いやいや、流石にそれはまずいんじゃね?」

「そうか?」

「ああ、一応露店で買ったら5000G以上はするものだからな」


それから色々と値段のことで議論をすると、最終的に露店で売ってる最安値で売ることになった。


「本当にそんなに安くていいのか?」

「別にいいって」

「そっか。そういえばリクってこれからどうするつもり。またレベル上げでも行くか?」

「まあ、そうしようかなって思ってるけど」

「そっか、じゃあ俺は抜けるから、じゃあな」


空はコップの中身を飲み干すと、店を後にしようとした。


「え?空、宿屋でログアウトしないの?」

「いや、当たり前だろ。そんな金ないし、逆に陸斗は毎回宿屋に泊まってるのか?」「まぁ、まだ二回だけだけど。それとゲームではリクな」

「ごめん。それにしてもお前金持ってんだな。羨ましい限りだ」


空はそう言って店を後にしていった。


僕はその後『ドーラの草原』まで出てレベル上げをして、強制ログアウトでMSQを後にした。




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