コロサレ

鷹角彰来(たかずみ・しょうき)

コロサレ

 ねぇ知ってる?

 

 誰かに対して、強烈な殺意を持っていると、コロサレが現れるんだって。


 コロサレは黒髪でTシャツを着ていて、「コロサレテェ、コロサレテェ」だけ言うそうだよ。


 コロサレはその人が殺したいと思っている相手の顔になるから、見ててイライラするよ。


「正しく」殺せば消えてくれるから、なるべく早く殺してあげようね。


※※※


 数日前から、中村(仮名)の部屋にはコロサレがいた。


「コロサレテェ」

「はいはい、わかってるよ。今考えてるから、ちょっと待てよ」


 中村に憑いたコロサレは、かつて彼が付き合っていた女性だ。

 

 彼にたくさんの金を使わせ、別れる理由が「飽きたから」、SNS上で彼の行動をキモいと発言する、中村の人生史上最悪最低、吐き気を催す邪悪、ゲロ以下の臭い、ゴキブリ級の生命力の女だ。


「どうやって殺そうか」


 彼は色々な殺し方を思案する。


 包丁で刺殺。ベタすぎる。一瞬で終わって面白くない。


 じわじわと体が苦しくなる毒で殺害。いや、そんな毒は手に入らない。


 ロープで絞殺。これなら長時間かけて殺せるが、顔がエグイことになるそうだから、やめておこう。


 いい案が思いつかないので、彼はスマホや本をあさり、リーズナブルで相手が苦しむ殺し方を検索する。その中で、肺に穴を開けると長時間苦しみながら死ぬという方法を見つけた。彼はそれを元にして、殺人計画を塗った。


 彼は意気揚々と彼女の頭を金属バットで殴り、青いたんこぶを作る。幽体が実体化しているので、かなり生々しい。彼はそれを見て舌なめずりする。


 続いて、カッターで手首・足首を切る。彼女を身ぐるみはがして、両手足に手錠をかけて、ベッドの上で大の字にさせる。尻の穴に焼き立ての芋を突き刺す。


 彼女は喘ぎ声を出して、鼻水や唾を垂らして「コロサレテェ」と連呼する。


「ああ、殺してやるとも。もっと苦しんでからな」


 彼女の手首・足首の傷にからしを塗りたくり、鼻の穴に納豆を入れる。「コロサレ」が耳障りになってきたので、舌を包丁で切断する。


「よぉし、最後の仕上げだ」


 彼女の肺をたくさん針で突いて、空気の穴を作る。彼女はまともな息が出来ず、のたうち回る。彼はそれを見て、吉本新喜劇の客のように笑い転げる。


「ハハハハハハハ。いい気味だぜぇ」


 半時間後に、彼女は息を引き取る。これでコロサレから解放されると、彼は伸びをして風呂場へ向かう。


「コロサレテェ、コロサレテェ!」

「なっ、話が違う……」


 コロサレが貞子のように這いつくばったまま近づいてくる。彼は金縛りにあったように、身動きが出来ない。コロサレの鼻が彼の鼻とくっつくぐらい接近する。


「テメェ、コロサレ」


 彼が最期に見たのは、コロサレの作り笑顔の極みであった。


※※※


 言い忘れるところだった。


 コロサレを殺す時は、必ず「1つ」の方法で殺してあげてね。


 複数の方法で殺すと、君が殺されちゃうよ。


 じゃあ、君の元にコロサレが来たらよろしくね。


(完)

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コロサレ 鷹角彰来(たかずみ・しょうき) @shtakasugi

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