第4話

無機質な白い部屋、周りに置いてある難しそうな機械。私はまだこの光景に慣れていない。

小児科からこの特別病棟に移ってきて1年と少し。この1人部屋の病室に来て初めに思ったことは、何もない、それだけだった。小児科にいた頃は、看護師さんがせっせとカラフルな画用紙で作ってくれていたキャラクターや、お花などが沢山飾られていた。そして、プレイルームから聞こえてくる子供たちの声があった。しかし、ここにはそんなものは少しもなくて。まぁ当然だろう。本来、病院、と言われたら真っ白な病室を思い浮かべるだろう。でも、幼い頃から病院にお世話になっていた自分からしてみれば、カラフルで何かしら物がたくさんある、というのが普通だった。難しそうな機械にもぬいぐるみが乗っていたりして、かわいい、なんて思えるほどだった。だから、この病室に移ってきたばかりの頃は寂しくて仕方がなかった。今頃になってやっと少し寂しさが薄れたような気がした。

いつまでこんな所に閉じ込められればいいのだろうか。一時退院や外出許可などで病院から出られたとしても学校では保健室登校が当たり前。念には念を。なんて言われて教室に入れてくれない。いつからだろう。自分が普通の人とは全く違うところで生きていることを知ってしまったのは。もう、治ることなんてないんだと悟ってしまった時だろうか。昔は私も病気が治るのだと信じていた。苦しくて辛い治療も薬を飲むことも、頑張って乗り越えれば元気になれるのだと。けれどそれは結局口先だけ。自分の身体は自分の思い通りに動いてくれるはずもなかった。


全身性エリテマトーデス(SLE)


私の病気の名前。自己免疫疾患の中の1つの病気である。自己免疫疾患とは、簡単に言うと自分の身体が自分自身によって傷つけられていく病気の総称。もともと先天性心疾患という生まれつきの心臓の病気を持っていた。しかし、中学に入った年の夏。明らかに今までになかった症状が出始めた。初めは風邪だと思っていた。検査を病院で受けてみたら、全身性エリテマトーデスという病気にかかっていることが判明した。名前だけ聞いたらなんなのか訳が分からなくて頭の中が真っ白になった。また病気が増えた。どうしてこんなにも自分の身体は弱いのかと辛くなった。

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証。 雨野 道(あまの どう) @milky_way04

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