第3話
目が覚めた。最初に気づいたのはもう暗くなっていて夜だということ。そして首を回して辺りを見ると、着替えや勉強道具、本などが机の上に置いてあった。母に持ってきて欲しいものを伝えてあったので、きっと仕事終わりに持ってきてくれたのだろう。せっかく来てくれたのに呑気に寝ていたことが少し恥ずかしい。起こしてくれればよかったのに。足を痛めないようにしながらむくっと体を起こしてみれば今まで変わらずだった視界が少し変化して新鮮な感じがした。
体を起こしたことで見えた次の物に少々驚いた。時計だ。ほんの少しのズレも許さないようなデジタル時計が示していた時間は4:36。自分はてっきりまだ日を跨いでいないくらいの夜中だと思っていたが、これではもうほとんど朝ではないか。一体何時間眠りこけっていたのか。確かに最近は部活と勉強で疲れていた。しかし、それでも寝すぎじゃないか。本日1回目のため息をこんな早朝に吐きつつ、もうこれ以上は眠れそうにない。そう思っては気分転換に、と病室を抜け出してみることにした。少し気味が悪いような気もするが行けるところまで探検してみようと松葉杖をつきながら病室をでた。この病院は病棟を線でつなぐとひし形のような形になるように設計されているらしく、一般病棟と特別病棟が端と端にあり中庭を囲むように小児病棟と検査病棟が向き合っている。それぞれが行き来出来るように病棟と病棟は回廊で繋がっているみたいだ。何もすることがなくて病院のパンフレットばかり見ていたせいか、大体の院内地図は覚えてしまった。地図を思い出しながら歩いていれば、中庭が見えるところまでやって来て。この辺で引き返そうか、そんなふうに思っていたら、向かいの特別病棟に誰かがいるのが見えた。一瞬幽霊かとも思ったが自分はそういう類は見えるタイプではないので違うだろうと思い、目を凝らして見てみた。すると、それは少女であることが分かり、こんな時間に何してるのか気になった。少しの好奇心だった。予定と少し変わってしまうが、自然と足はそちらの方へと向いて。何だか彼女は危なかっかしい感じがした。あのまま放っておこうなんて自分にはできない気がした。だんだんと彼女が近づく。すると、微かに声が聞こえた。彼女は確かに1人だった。独り言だろうか。気になって少し足を早めた。カタ、カタ。松葉杖をつく音が響く。音が鳴っているのに気づいたがもう遅かった。そして、こちらの音で彼女が振り向く。
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