映画

今夜、ロマンス劇場で

映画館に観に行かなかったことを後悔した。

この作品ほど、こう思った映画はない。近頃観た映画の中で、一番好きな作品だ。


予想以上に、泣ける!幸せな気持ちになる!完全オリジナル作品だから、先が読めない。邦画もまだまだ捨てたもんじゃないな、と思えた。


あらすじは、昭和35年に映画青年の健司(坂口健太郎)には憧れの人がいた。それが、映画の中のヒロイン、美雪(綾瀬はるか)。そんな彼女が映画から抜け出てきた!…というもの。


とにかく、カラー映画を観られる時代に生まれてよかった、と思えるほど色彩が美しい。主人公の美雪はモノクロの世界にいた映画の中のお姫さま、という設定なので、色を知らない。なので、彼女に色を教えるため、綺麗な色の花、かき氷、緑などが登場する。きっとスクリーンで観ると、美雪が藤の花の下で傘を構えるシーンは、画面いっぱいに紫が広がって、さぞ美しかったことだろう。


また、美雪の服装も色鮮やかでオシャレ。元々、お姫さまなので、昭和35年の世界でも、レトロで可愛いお姫さまのような洋装を着ている。オードリー・ヘップバーンが映画で着ていたようなドレスや洋装。つばの広がった黄色の帽子、赤や緑のワンピースなど…。衣装を見るだけでも楽しい。


目で観て美しいのも、この映画の魅力だが、ストーリーも素晴らしい。



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注意!!)以下、ネタバレ・結末の記載がございます。まだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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映画から憧れのお姫さまが出てきた!というところまでは、どこかで観たような話。だが、このお姫さま。人のぬくもりに触れたら消えてしまう、という条件で、健司のいる世界に来てしまっていたのだ。


ここで私は、映画を観に行く前に諦めてしまった。

あー…それはたぶん、最後にお姫さまが消えて終わるんやろうな。じゃあ、テレビで放送されてからでも観るか♪なんて思ってしまっていた。あの時の私をひどく後悔している。そして、こう言いたい。

「諦めるな!映画館で観た方が絶対によかったよ!」と。


そう。予想を180°裏切られ、なんと健司は「愛する美雪に触れられなくても一緒にいる。」という選択をする。


いやー!ムリだろう!それは出来ないよ…。だけど、映画だから成り立つし、それが美しい。


実は映画の冒頭にも出てきた、病室の老人が、映画の半ばや後半にも出てくる。彼は、晩年の健司(加藤剛)だ。

また、映画の冒頭で、看護師さんが

「(健司が)倒れても起こしてくれない、きっと遺産目当ての孫がいる。」

と言っていた。

実はその"孫"こそが、美雪だったのだ!


つまり、美雪は歳を取らず、若いまま。倒れても起こせないのは、触れられないから。映画の冒頭に、美雪がずっと健司と一緒にいたことをヒントとして出していたのだ!これを知ったとき、なんだか嬉しかった。健司は変わらず美雪を愛していて、美雪も側にいたんだと思うと、なんだかこの二人が愛しく思えた。


映画では、ここまで至った経緯を、海辺を歩く美雪と健司で表している。美雪は健司からもらった指輪をしているので、恐らく二人は結婚したのだろう。手は繋げないので、健司はハンカチを出し、お互いはじっこを持って、海辺を歩く。最初は青年の健司。少し年月が経った健司。そして現在の老人の健司。美雪の姿は変わらないが、健司だけは歳をとっ ていく。最初は夫婦に見えていたが、気づけば"孫"になっていた。


健司は映画の脚本を、病室で書いていた。美雪が喜ぶ幸せな結末にすると約束した。そして、それを書き終えた時…。






健司は病床で静かに息を引き取った。それを見た美雪は、初めて健司に触れ、健司を抱き締めた。初めての温もりに、美雪は笑顔を浮かべ、幸せそうに消えていった…。








とにかく号泣しました。ここまででも泣けて、十分すぎるラスト!と思ったけど。この映画は、切ないだけでは終わらない。


美雪が消えたあとは、健司が書いた映画の脚本「今夜、ロマンス劇場で」の世界。


モノクロの世界で、美雪が元いたお城の舞踏会?のようなシーンで、ドレスやタキシードを着た人々をかき分け、青年の健司が美雪に向かって歩いてくる。健司が差し出した一輪のバラを美雪が受け取った瞬間、世界が鮮やかな色に染められていく。そのあとは、恋愛物語の定番、キス!鮮やかな色彩の中、拍手喝采でハッピーエンド!!!!!!


いや~!本当によかった!

泣いたけど、ラストは幸せな気持ちになった。

綾瀬はるかのちょっと高飛車なお姫さまもぴったり!だし、衣装も着こなしてた!この役は、本当に華のある彼女だからこそ、成り立ったと思う!


坂口健太郎もお姫さまに命令されるような気弱で優しい役柄がぴったりだった。お姫さまに色を教え、触れられなくても彼女を愛し抜く。彼が演じたことで、この人だったら、本当にそういう愛し方をするのかもしれない、という説得力のあるキャスティングでした。


そして、この二人だけでなく、私は晩年の健司を演じた加藤剛を推したい。残念ながら、遺作となってしまったが、加藤剛の俳優人生の最後の映画がこの作品で本当によかったと、個人的には思う。坂口健太郎から、加藤剛になる流れを自然に演じてたし、お姫さまに語りかける雰囲気も優しくて、きっと加藤剛さんのありのままの優しい姿をそのまま反映した役なのかな、と思った。再度言うが、他の役者さんではなく、加藤剛でよかった。ありがとうございます。


ラストのシェネルの歌も、映画の感動の余韻を残したまま、美雪の鮮やかな衣装だったり、名場面を流した映像で素敵です。


歌も逃さず、最後の最後まで観てほしい!

そんな素敵な映画に出会えたことを嬉しく思います。



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ラブ・ラフ ストーリー 桜琴(さこと) @whitedevil0122

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