鎧?変身?

 夜明け前アルメリアは作業台の上に不思議な形の腕輪を置いた


 腕輪は二つの宝石を入れるような穴がありその穴の周りには女神と神の意匠が凝らされていた。


「これでおかしな融合は起こらないはずです」


 その腕輪をアルメリアは左手につけると馬の形をした駒とホーンラビットの真石を取り出した。


「変幻」


 力ある言葉でそう言って女神な穴に馬、神の穴にホーンラビットの真石を入れると無機質な声で


「ナイト、ホーンラビット

ラビットナイト」


 と腕輪が声を上げてアルメリアは光に包まれた。

 それは一瞬の事で、光が消えた後には兎耳と尻尾が印象的なウサギ獣人になったアルメリアがホーンラビットのツノを大きくしたような長槍を持って立っていた。


「うん、変身はちゃんと出来てるね」


 鏡に写った自分を確かめると、庭に出て思い切り跳躍すると家の屋根が見える高さまで簡単に飛ぶ事が出来た。


「わー、ウサギさんになるとこんなに飛べるんだ」


 長い滞空時間にも驚きつつ、着地した後少し緊張しつつ、腕輪の二つの石を外す。


 再び光に包まれ元のアルメリアの姿に戻ると、ほっとしたように息を吐いて


「実験は成功です

後は……」


 そう言ってアルメリアは腕輪を鞄に仕舞い込んだ


 これは古代黄金文明に失敗したと言われる変幻の腕輪

 元は真石や魔石を入れて種族を一時的に変える事の出来る腕輪だったのだが結局は元に戻ることが出来ず、その折に獣人族や魔族が生まれたと言われている。


 アルメリアはその失敗は対となら物が無かったからだと推測していた。

 王子の婚約者時代は実験出来なかったが、今なら良いかと自分の理論を詰め込んでこの腕輪を作成したのだった。


今の所作れた対となる駒は

ポーン 人形下級の真石、魔石用

ナイト 下級獣型の真石、魔石用

ビショップ 下級無機物型の真石、魔石用


 この駒こそが融合を防ぐ僕は気になるのだった。

 このアイテムは古代黄金文明の後に作られたアイテムで、体の周りに簡易な結界と鎧を生み出すアイテムだったが、何故か能力を引き出すことが出来ずに見捨てられたアイテムだった。


 アルメリアはその性質に目をつけてひょっとしたら駒には能力が付与されていないのではないか?

 だとしたら人と融合するほどの影響があるこの変幻の腕輪とが合わせたらと。


 結果実験は成功したが、戦闘経験の無いアルメリアではその性能を引き出せるわけでもなく。


 結果、戦闘経験のありそうなクオーツに頼もうと決めていた。


 そして少し時が進みアルメリアの説明を聞いたクオーツは唖然として机の上の腕輪を見つめていた。


 獣人化の腕輪はロイター王家に伝わると言われている人を獣人に出来る神秘の腕輪として伝わっていたが人には戻らず獣人になれば理性を失った獣として動く者が居なくなるか己が死ぬまで戦い続ける戦争用の最終兵器と言われている。


 それがまさか目の前に人に戻れるわ理性がある状態になれる最高のアイテムとして存在している。


「これを着けても大丈夫なんだね?」


「もちろんです、私で実験しましたから」


 心の中で実感するなよと思いつつも震える手で腕輪を取り右手に着ける


「まずはナイトの駒を入れて……

ホーンラビットの真石っと」


「ナイト、ホーンラビット

ラビットナイト」


 無機質な声が聞こえると光がクオーツを包み込んでそれが消えると兎耳を生やしたクオーツが槍を持って立っていた。


 そしておもむろに動きを確かめるように動き槍をふるい一通り動きを確かめると今度は変幻を解除する。


「アル……アンタ魔剣よりもヤバいもん作ったね

 これ量産なんてしたら世界が火の海に包まれるわ!

 なんだよあれ?スピードとった型なんだろけど、早すぎるよ!

 ってかこの槍!なんで突くとかなら向こうの岩に穴が開くんだよ!

 しかも、簡単に変幻できるじゃないか」


「あ、それ持ち主登録出来ますよ、それに空を飛ばないので世界を火の海には出来まてんよ」


 そう言う問題じゃないとクオーツは頭を抱えるがのほほんとしたアルメリアはもう一つの秘密の魔石を取り出す


「これはストーンナイトの魔石です、どうなるかやってもらえませんか?」


「良いけど、なんか嫌な予感がするなぁ」


「ビショップ、ストーンナイト

ストーンビショップ」


 光がクオーツを包み込み光が消えると岩の大盾を持ち、同じく岩の鎧を纏った騎士のような姿をしたクオーツが姿を現した。


「これは、ヤバいなんだい、身体から溢れる力は?」


「これは下級魔石の中でも中級に近い物なんです」


「ところでこんな物を作って一体何をするつもりなんだい?」


「え?伯爵が攻めてきた時に使おうと思って」


「あ、あのね、前伯爵はまだ話せる人だからいきなり戦闘になんてならないよ」


「そうなんですか?」


「大柄な貴族とは違うんだよ、それにこんななの力を向けたら、一瞬でミンチだろうね」


 その後の話し合いでよほどのことがない限り使わないと言う事で決着がついた。



















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祝福された公女と呪われた国 たぬまる @tanurin

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