第二章

【色不異空 空不異色 色即是空 空即是色】

『この世界にはいろんなものがあるよな 砂だとか 犬だとか 地球だとか 宇宙だとかさ でも それは白紙のキャンバスにえがかれた『絵』みたいなものなんだな 二千年後くらいになると『ホログラフィック原理』といって 宇宙はがんらい二次元の『膜』であって おれたちの感じる三次元の世界は『膜』がうつしだす低エネルギー領域の『擬似映像』にすぎないとされるんだが ここではわかりやすく『膜』を『白紙』として 『擬似映像』を立体的な『絵』とかんがえてみようぜ おれたちの観ている『絵』は所詮 色のかたまりの『絵』であって その裏側に『白紙』しかないんだよ 『絵』はおれたち画家によってつぎつぎに塗りかえられるんだが この塗りかえられること つまり 変化そのものが世界ってわけさ ちょっと遠回りだが この『絵』すなわち『擬似映像』を『色』といって 『白紙』すなわち『膜』を『空』と名付けてみるぜ そうすれば世界という『色』はすなわちこれ『空』というなにも描かれていない白紙だってわかるだろうし 白紙という『空』がなければおれたちの観ている『色』という絵も描けないことがわかるだろう 『擬似映像』という『色』はすなわちこれ『空』という映像をうつすだけの『膜』だってわかるだろうし スクリーンがわりの『膜』という『空』がなければ『色』という『擬似映像』が体験できないことわかるだろう この『色』は基本的に偽物の物体であって これが『五つの構成要素』のひとつめだ


【受 想 行 識 亦復如是】

そしたら 感覚 表象 意志 知識っていうのこりの四つの構成要素もおなじようにかんがえられるんだよ 感覚は結局『絵』や『擬似映像』にすぎない『色』を感じているつもりにすぎないし 表象は結局『絵』や『擬似映像』にすぎない『色』に反応しているだけだし 意志も結局『絵』や『擬似映像』にすぎない『色』がつくりだしたものだし 知識も結局『絵』や『擬似映像』にすぎない『色』にたいする解釈のかたまりにすぎないことがわかる この四つの構成要素も 物体とおなじように結局『絵』や『擬似映像』にすぎない『色』にたよっているので こいつら五つの構成要素をまとめて やはり『白紙』や『膜』にすぎない『空』だってことがわかるわけさ


【舎利子】

『なあ 舎利子 ちゃんと聴いてるか』



――つづく

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