第8話 訂正

それに......ここで死んだら俺が好きなゲームの新作が買えないもんな。うん、生きないと。

まぁ10回勝てばいいのだから、トータル勝利数で言えば正直余裕だ。問題は3連敗しても駄目という点。時間自体は腐るほどあるが、どんな勝負を挑まれるのか分からない以上、対策はほとんど不可能に近い。ましてや、今日のようにジャンケンまで入ってくるとなると尚更だ。そう考えると、意外とたった10回と思っていたけど余裕でもないのか......

あぁ、いけない。悲観的になっては死亡フラグが立ちかねない。頬を叩き、気合を入れ直す。別にこれが効果があるわけではないとは思うけど、精神的問題だけでもクリア出来ればそれで良い。あと9回、9回勝てばそれで......

ガラッ

突然勝手に窓が開いた。まぁもうこれくらいでは驚かない。外にはあの黒猫がいるし、ろくなことは起こらないんだろうけど......はぁ。

「やぁやぁ、悪いね。実は君に謝らなきゃいけないことがあって」

「えっ?」

「最初、ルールで10回勝てばいいって言ってたんだけどね。やっぱりなんか31/10はヌルすぎるって上からの通達があって」

「う、上?」

死神にも上司なんているのか。って、いやいやそれよりも......今ヌルすぎるって言った?

「31羽集めてもらうことにしたから」

いやいやいやいやいやいやいやいやいや!

「それじゃ、無理ゲーじゃん!余命1か月で1日1回しか勝負ないのに俺もう2回負けてんだよ?!」

「そう、そこでだ。5の倍数の日にチャンスゲームと称して、勝てば通常の5倍、つまり5羽折り鶴をゲットできるようにしたんだ。これなら文句ないでしょ?」

「ま......まぁそれなら」

「あ、ただそのチャンスゲームに失敗したら1羽没収ね」

「......」

「じゃあ、そういうことだから!まったねー☆」

そう言うと、黒猫は窓の外へ飛び出した。

読みかけの本を開く。よくある冒険ファンタジー小説で、ちょうど主人公がピンチに陥っているところだった。

『大ピンチこそ、大チャンスなんだ。だってさ、絶体絶命の状況ってだけでもわくわくしてくるよな!』

苦笑いをして、そっと本を閉じた。



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31羽の折り鶴 國春 茉奈 @kokuharu_mana

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