第7話 折鶴

「あら?鶴なんて折ってたの?」

「え?」

 看護師さんの目線の先を追うと、例の少女がいない代わりに一羽の黄色い折り鶴があった。あの黒猫が置いていったのだろうか、いつの間に……

「ええ……まぁ、はい」

 看護師さんの不思議そうな表情から察するに『こういうのって普通、お見舞いで折ってもらう物じゃない?』なんて思ってるんだろうな。俺だってそう思う。

 看護師さんが病室を出て行ったのを見届けて、深いため息をつく。

「た……助かった」

 落ち着いたところで、折り鶴をまじまじと見る。見たところただの折り鶴のように見える……が。

「なんだこれ?」

 折り鶴の胴体にあたる、首の下の折り重なった部分がわずかに赤黒く変色していた。まぁ、必死に考えたところでどうせ答えは出ないだろう。深く考えるのはやめた。ただ特にやることはない。とりあえずベッドに横になる。そういえば入院してから、それまで考えられないほど早寝早起き、超規則正しい生活を送っている。まぁ。特にやることもないし、そりゃそうか。ははは……

「立派な満月だなぁ……」

 

 なんて思ってたら朝だ。まぶしい陽の光が窓からこちらに差し込んでくる。暑くもなく寒くもなく、早く起きると一番朝が心地いいことに気づかされる。素晴らしい朝。だけど、あいつもやってきた。

「おっはよー!千鶴ちゃん参上だよっ☆」

あぁ、今更だけど千鶴っていうのか。

「早速いっくよー!最初はグー!」

えっ、何?なんの前ふりもなしにいきなり始まったんだけど。しかも、じゃんけん?!ちょっと待って心の準備が……

「じゃんけんぽんっ!」


千鶴:パー

俺:グー


負けた……せっかく昨日は勝ったっていうのに。勝利の波には乗れなかった。ゲームとか漫画の世界だったら

『大ピンチこそ、大チャンスなんだ。だってさ、絶体絶命の状況ってだけでもわくわくしてくるよな!』

なんてセリフを言っていたところなんだろうけど、実際に目の当たりにするとそうも言っていられない。ピンチはピンチだ。それに、これだけストレスがかかってたら仮に折り鶴を揃えて完治させたとしても寿命は縮んでるだろうな。

「じゃあ、まったね~♪」

 いや、それでも完治させないと話にならない。勝たなければ1ヶ月すら生きられないのだから。それに……





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