第4話入寮式ーメガネくん
前にも言ったけど、寮塔は三種類ある。
王族の暮らす超豪華な作りの【月塔】。貴族の暮らすそれなりに豪華な作りの【光塔】。平民の暮らす、頑丈だけれど木造建てな【草塔】。
月塔と光塔が石やレンガ造りであるのに対し、草塔だけは木造なのだ。
なんだ。名前だけに、平民は草でも食っておけと?
…まぁいいか。それよりも入寮式だ。
「ど、どんな感じだろうね。にゅ、入寮式…」
「不安?」
「ちょ、ちょっとだけ…」
へにゃっと笑うリラちゃん。
チラッとリラちゃんの手元を見れば、服の裾をぎゅっと握りしめていた。
そっと、その手に私の手を重ねる。
「ふ、フラちゃん?」
「大丈夫だよ。きっと楽しいよ?」
「……うんっ、ふ、フラちゃんもいるしね」
「そうそう!」
ふふっ、と笑い合う。
少しすると前の方から足音が聞こえなくなる。どうやら寮についたみたいだった。
「さて。寮についたわけだが…」
3回ほど扉をノックした後、私たちの方へ振り返る寮長。
「今日は楽しむ日!みんなでこの学園に入学できたことを喜ぼう!ようこそ!草塔へ!」
ガチャッ
パパーン!!
「「「「「「「ようこそ!」」」」」」」
扉を開けたら、まず見えたのはたくさんの雪の結晶。魔法で作り出されたものだ。それが空を舞い、光に反射してとても綺麗だ。
次に草塔の先輩たち。笑顔で出迎えてくれている。
「わ、ぁ!!」
「すごいね…」
リラちゃんや他の生徒が、上を見て目をキラキラとさせる。
すごく綺麗だ。というか、これだけ細かく大量に魔力を分けられることがすごいと思う。
何がすごいのか、って?
そうだなぁ…おもちゃ箱があるとする。その箱は自分の体。おもちゃが魔力。
おもちゃ箱から、おもちゃをザバーって一気に大量に出すのは、簡単だよね。それこそ、赤ちゃんでもできる時がある。
でも、おもちゃ箱からおもちゃを一個ずつ、丁寧に出していくのって、大変で疲れるよね。
しかも、それを短い時間でやれって言われたら、すごく難しい。
そんな感じ…かな?
私はいつも感覚でやってるから、説明は上手くないけどな…ははっ…。
「すごい、すごいね!」
「そうだね。こんなに細かく魔力を分散できるなんて…」
先輩方の魔法に驚きつつも喜んでいると、パンパンッと音が聞こえた。
音の主は私たちを寮塔に連れてきた寮長だった。
「新入生諸君。まずは入学、本当におめでとう!共に学ぶ仲間が増えて、俺たちはすごく嬉しいぞ!さっき言ったように、今日は楽しむ日!美味しい料理を食べて、一緒に遊ぼう!以上!」
それだけ言うと、寮長はまだ緊張して固まってる新入生たちの元へ行く。
他の生徒たちもバラバラになり、料理を食べたり踊ったりをし始めた。
「リラちゃん、私たちもご飯食べよ」
「う、うん!そうだねっ」
一緒に料理がある方へ行く。
お皿を取り、少しずつ取り分けていく。
「う、うーん…」
色々取って回っていると、何かに迷っているメガネくんがいた。
リラちゃんが人見知りなのかあわあわとしている。
「どうしたの?」
なるべく明るい声で話しかける。
メガネくんはビクッと肩を揺らし、素早く振り向く。
「あ、ごご、ごめんなさいぃ!お、お肉!どれ取るかままま迷っててぇぇ!!」
これを早口で言い切るメガネくん。
それに反応したのは、リラちゃん。
「そ、そそ、そうなんですかぁ!お、オススメは、こ、この、たれ、タレ漬けですよぉ!」
「ご、ご丁寧にありがとうございますぅ!」
「ど、どど、どういたしましてぇぇ!!」
「………」
どうしよう。
めちゃくちゃうざい。
「2人とも、落ち着いて?とりあえず、テーブル行こっか」
「「は、はいぃ!」」
波長ピッタリか。
まぁ、とにかく椅子に座らせて自己紹介をする。
「はじめまして。私はフラ。よろしくね」
「あ、わた、私はリラ・ティリカと言います、よろ、よろしく、お願いしますっ!」
「あ、あぁ!ぼ、僕はクラン。よ、よろしくお願いします!」
「よろしくね。クラン」
「こ、こちらこそ!フラさん!」
…とりあえず、この2人の喋り方をどうにかしたい。
マジックシャドー ひかげ @0208hina
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