第3話学園長ー心理魔法力
台に上がってきたお爺さんは、モサモサと髭を動かしながら話す。
『えー、まず初めに、私の名はアルクス・オード。ここ、王立魔法学園の学園長である。』
学園長なんだ…
『これから5年間、よろしくな。…なぁに、そんな退屈そうな顔をすることはない!私のこの挨拶と、少しの話だけでこの入学式は終了だ!そのあとはどんちゃん騒ぎの入寮・歓迎式が待っておるぞ』
なんか…声っていうか、言い方が、「なぁに、お前にもたんまり財宝を分けてやるぞぅ?」って感じで、なんか、うん…悪じじいみたいな
『お?誰か私のことを“じじい”と言ったな?失礼な!私はこれでもピチピチの169歳だ!』
じじいやん!
というか何でわかったの!?怖っ!
『失礼な娘子よのう。私はこれでも、世にも珍しい心理魔法力を持ってるんだ!どうだ!凄かろう?羨ましかろう?ふはははは!崇め讃えろひれ伏せぇ!』
「学園長ぉ〜!キャラ変わってますよー!」
『んお?これはすまぬ。熱くなってしまったな。』
えぇ、それはもう結構。
『まぁ、それはさておき…諸君。入学、おめでとう。君たちは難度の高い試験を潜り抜けてきた強者たちだ。そこに平民も貴族も関係ない。皆、手を取り合い、仲間を信じ、前を見て進むように!では、上級生たちもソワソワしていることだし、』「ほい、解散」
軽い!早い!もう最後の声小さかった!
声拡張の魔法解いちゃったの!?
「な、なんか、す、すごい学園長さん、だね」
「うん…キャラが濃いわ」
リラちゃんが苦笑しながらそう言うので、私も同意する。
インパクトのある学園長だったからか、何なのか、広場はザワザワとうるさくなる。
学園長が上っていた台の近くにいた生徒たちが、少し集まって話をしているらしかった。
少しして、
「【草塔】の寮生はこっちは集まってー!」
「【光塔】の寮生はこちらへー!」
「【月塔】の方々はこちらへお集まりくださーい!」
それぞれの寮の寮長が、召集をかける。
草塔の寮長は男子だ。黒の膝丈ズボンに白いシャツ、そして生徒の証である青いリボンを首元に付けていた。
光塔の寮長は女子で、長めの髪を高い位置で一つ結びにしていた。貴族っぽく、少し上等そうな服を着ていた。
月塔の寮長は確か、マクガーディア公爵家の方…だったかな?女性の方だった。シンプルだけど、見るからに高級そうなワンピースを着ていた。
私とリラちゃんはもちろん、草塔の方へ集まる。
「それにしても、学園長は誰の心を読み取ったんだろうね」
「さぁ?娘って言ってたから、女じゃない?」
「…」
「ふ、フラちゃん?」
私の前に立つ男子生徒2名の言葉を聞き、思わず無表情になってしまう。
それを心配してくれるリラちゃん。とても良い子だ。
「何でもないよ、リラちゃん。さ、行こ」
「う、うん!行こっ」
心理魔法力というのはとても珍しいもの、というかそもそも、精神干渉系の魔法力保持者が少ないのだ。
学園長のような“心理”に特化している人は、他人の許可を得なくとも、その人の心の底まで読めてしまうらしい。
というか169歳って、すっごい老人だなぁ…
「(健康第一か)」
あくびを噛み殺しながら寮塔へと向かう。
考えることが思いつかないので、学園長の魔法力についてまた考え出す。
あれ?
【他人の許可を得なくとも、その人の心の底まで読める】?
は?
それって、もしかしなくとも…。
あの時読まれていたのは、絶対的に私だった。
じゃあ、もしかしたら………
「ふ、フラちゃん?」
「え?あ、リラちゃん、どうしたの?」
「ぼ、ぼーっと、してたからさ。もう着くよ?」
「本当だ。ありがとう、リラちゃん」
優しく微笑めば、リラちゃんも笑ってくれる。
とりあえずは、まぁ、良いか。
物理的干渉がないうちは、放っておこう。
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