第22話『異世界に転移し魔神を倒せ』

 アリスは部屋に入るやいなや興味深そうに部屋にある遺物を見て回っている。まるで、この部屋のことを知っているかのようにあちらこちらを確認していた。



「ここ……私がこの世界で最初に目覚めた時の部屋と似ているわ。そう私がパパに目覚めさせてもらった時に居た部屋がここの部屋とよく似たような部屋だったの。これって偶然かしら?」



「それは偶然ではないのじゃ。これはアリスがこの時代まで生き延びるのに使ったアーティファクト"揺りかご"と同じく時間の流れを限定的に変えるアーティファクトと似た設計思想で造られたアーティファクトじゃ。似ているとはいっても、その性質はまったく異なるものじゃがの」



「時間操作系のアーティファクトということか?」



「いや違う。この部屋に置かれているアーティファクトは”世界”そのものじゃ。これからお主が修行向かう修行する"世界"は旧人類に造物された物じゃ。だが、それでも一個の世界と言えるほどの完成度の世界じゃ」



「世界一つを創り出す? そんなことが可能なのか」



「うむ……。信じられないことなのじゃが、旧人類の叡智をもってすれば可能だったのじゃろうな。まさに太古の昔の人々が造り出した叡智の到達点。本来は、旧人類がこの星を捨て、その世界に移住するための候補地として造られた世界と聞いておる。それは、こことは異なる"異世界"を作り移住するという計画があったそうじゃ」



「つまりは、そこで俺は鍛えれば良いということか?」



「そうじゃ。この世界に存在する物はすべてその異世界には存在するのじゃ。なおかつ、そこではおぬしは永遠に年を取らない、老死することはない。ゆえに、無限に特訓に時間を費やすことができる。じゃが、一つだけ問題があってじゃな……」



「その一つだけの問題というのは?」



「このアーティファクトで異世界に旅立った者は、のじゃ。全員がその"箱舟はこぶね"と呼ばれるアーティファクトのなかで死亡しているのじゃ。その世界でお主の寿命は永遠で老いることはない。じゃが、モンスターに殺されたりすれば普通に死ぬ。そして、その世界で死ぬとこの世界でも死ぬ」



「なるほど。相当な危険度ということだな。この世界に戻ってくるための条件は分かるか?」



「その異世界に存在する魔神と呼ばれる邪悪なる者を打ち倒すこと。それこそが、その世界からこの世界に帰還するための唯一の方法と聞いておる。達成条件を満たせたものがいないということじゃ。つまりは、帰還条件に設定されている”魔神”なる存在が相当の難敵なのは間違いないじゃろう。そちらの世界で十分に鍛えてから挑むと良い」



「誰も生還者のないところへと一人旅。なるほど……確かに、危険な賭けになるというわけだな。……ところで俺は木こりだ、生活をしていくためには木と斧が必要だ。その世界には存在するか?」



「もちろんじゃ。この世界にあるものはほとんどがあると思ってもらって問題ない。もちろん食事もできるし、睡眠も取れる、この世界でできることはすべてできる。人も存在している。これから向かう先の世界は、太古の昔の旧人類によって創り出された虚構の存在じゃ。じゃが、そこに暮らす者達はその世界を本当の世界だと思って暮らしているそうじゃ」



「それなら問題はない。俺は勇者や教会がこの国を攻めてくる前に目覚めなければならない。たとえ強くなったとしても、その時にこの国が滅びていたら全く意味のないことだ。そのあたりは問題ないか?」



「この中は異空間。外界からの時間とは隔絶されておる。ゆえに、おぬしが目的を達成することができるさえすれば、確実に間に合うじゃろう」



「わかった。なら、いますぐに向かおう」



 俺は白い棺のような箱の中に入る。

 まるで棺桶に入ってしまったかのように狭くて冷たい。


 しばらくするとアーティファクトが起動するとき、

 特有の起動音がしそして俺は異世界に飛び立った。

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