The strange dream of gley and blue

むらさき毒きのこ

第1話 奇妙な夢について

 回廊型の高層マンションは古びていて、鉄製の赤いドアに丸いドアノブ。施錠しようとするたびに鍵穴に突っ込まれる指を潰す勢いで、鍵をかける。


 ドアの向こうにいる子供たちは油断ならない、なぜなら親がいないからだ。私は私の家族のことだけで精いっぱい。部屋は薄暗く、汚い。


 何もない部屋にいるわけにもいかず外に出ようとドアを開けると、子供たちがドアノブを掴んで引っ張るので無理やり施錠する。廊下に置かれた大きなポリバケツに、死んだ人の顔の皮が捨てられている。


 回廊の真ん中に階段があり、その周辺に置かれたストレッチャーに男が横たわっている。手当するのは普段着の年取った男だ。その周りに、何となくそこにいるような子供たちが立っている。


 どこもかしこも青灰色の、同じような目をした人しかいないマンション。


      *      *      *     *


 おそらくその居住区の外側だろうか、長い髪、白地にボタニカル柄のワンピース、薄手のコートを羽織った女と、その友人二名が夜の道をお喋りしながら歩く。リムジンが彼女らの横をゆっくり走り抜け、その車体を見た瞬間、「彼だわ!」と叫び車を追いかける長い髪の女。

 やがてリムジンは止まり、女が車内に乗り込むのを友人二名は後方から見届けた。


      *      *      *      *


 住む世界が違う、風景が違う、色彩が、見た目が違う。文化が違う、何が、違うというんだろう、そこは、一つの玉ねぎでしかない、薄皮の壁でできた、断絶。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

The strange dream of gley and blue むらさき毒きのこ @666x666

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ