壱 黒猫と烏

それはまるで黒猫とからすの様。目は暗闇に慣れ始めたあの頃の話。雨降りの路地裏、腐敗した匂いが漂う場所に座り佇む孤児。名は快斗かいと。本来は人だった獣人。ボロボロな白いパーカーと黒いズボン。冷徹な様を映すかの如く、青い瞳は光を反射することをとっくのうに諦めていた。白髪が些細な風に揺れる。空腹からか腹のむしが鳴く。

「そこで一人。何してるんだい。」

突然の声に聞こえた方向に顔を上げる。そこにいるは同じく孤児。緋色の目が淡い光を反射するのにも関わらずそれは何処どこか鋭く切り裂くかのような瞳を見せる。その名は颯天そうま。少々傷んだ黒いパーカーに白いズボン。まるで何処かへといざなうかのように優しく包み込む様に話してくる颯天の口調。

「何だよ…」

全く知らない人間に突然話し掛けられて、少し恐怖を感じた。

「僕は颯天。宜しくね。君の名前は?」

突然話し掛けて、名前をたずねる。まるで不穏な誘い方。

「俺は、快斗。」

この時、名前を言ってしまったことが最悪の選択だった。とことん馬鹿なんだと自分に自責する。黒猫と烏。勝つのはどちらか。そんなもん知らんけど。もしそれをある人として例えるとならば、簡単だろう。結果は既に見せてあるからな。

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贖罪 SKY LAND @skyrand

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