《第一章》契約

......ここは?

気がつくと俺は草原に横たわっていた。

起き上がり辺りを見渡すもただ地平線まで同じ風景が続く。

俺、なんでこんなとこ居るんだ?

記憶が混濁しているのかよく思い出せない。

確か部活帰り、手塚と吉岡さんと一緒に......

何か重要な事を忘れている気がする。

......そうだ、確か俺、殺され

「ッ‼︎」

恐怖が、屈辱が、後悔が、俺を支配する、


気づけば俺は膝を抱えていた。



どれぐらい経っただろうか?

やっと少し落ち着いてきた。

俺はよろめきながら立ち上がる。

しかしここは何処なんだ?

俺は......死んだはず、ここがあの天国なのか?

とりあえず人を探そう。

俺は誰かを見つける為に走りだす。


「おーい! 誰かいないのか‼︎」


どうなってんだよ、誰もいない......いや何もねぇ‼︎まさか俺、植物状態ってやつか? 

ギリギリ生きてたとか?

植物状態ってこんな感じの幻想見んのかな?


何も無い空間にただ一人、その状況に俺は少し焦りを覚えだす。



いくら走れどただひたすらに同じ景色

「はぁ......はぁ......どうなってんだよ‼︎」

俺は一生ここで過ごす事になるのか?

食事は?

水は?

......まさかあの化物の能力?

もう嫌だ! なんで俺がこんな目に‼︎

絶望感を覚え始めた。

その時、目の前に突然大量の光が発生する。


なんだ!?


光はやがて人の形に、

暫くするとそれは綺麗な女の人になった。


「......ヒト!?」


純白の衣装に身を包んだとても綺麗な女性。


「我は女神、ここは天界」


......女神? 何言ってんだこの人。


「この宇宙の創造主それが私、杉田海斗汝は本来、幸福な人生を過ごすはずでした、しかし其方の世界に奴が侵入し汝の人生を狂わせたのです」


創造主、天界?


女神と名乗る女性は無表情で俺に語りかける

綺麗な顔だからこそ余計に不気味だ


「世界は何千もの世界で構築されています、奴は自由に次元移動が可能、汝は一度死にました、私が汝を蘇生しここに召喚しました」


......信用できるのか?


アニメに出て来そうな女神、以前の俺なら歓喜していただろう。

しかしここは現実だぞ? 本当に女神なんか存在するのか?

化物に殺されたばかり、俺はいつも以上に疑心暗鬼になっているのかも知れないな。


「奴は汝の両親、友、全てを奪いました」


女神と名乗る女性は俺の心を読んでいるかの様に話し始める。


「両親も......?」


追憶ドロー


突然女神と名乗る女性がそう告げると、俺の頭にナニカが流れ込んでくるのを感じる。


これは......記憶?


 「息子だけは......息子だけは見逃してください」

  

  「クヒヒヒィィィ‼︎ ガキは殺しテも面白くなイ 

   生に執着シだす貴様ら大人を嬲り殺スのが

   楽しいのダァァァ‼︎」


  「「ギャアァァァァァァァァ」」

                     』


あれは......! 父さんと母さん‼︎


それにアイツは‼︎


化物が地面に頭を擦り付ける両親を痛ぶる記憶。

  

許せない‼︎ 許せない‼︎ 許せない‼︎ 許さないッッッ‼︎‼︎


「これは我が記憶、奴は最大級の危険で有る創造主をも超える特異存在、常に我が監視してあります」


............監視してある?


「父さんと母さん......手塚に吉岡さんを見殺しにしたって言うのか‼︎‼︎‼︎」


「......申し訳ありません、私では奴を倒す事など不可能なのです、それに創造主が出向く事など出来ません」


女神に当たっても仕方ない......そんなの分かってる......‼︎ けど、この気持ち‼︎ どうすりゃ良いんだよ‼︎


俺は幾度も自問自答するが明確な答えが見出せない

......たしか女神は俺の魂は蘇生できたと言っていた。


「雄太や吉岡さんの魂は!?」


「喰らわれた魂は蘇生できません」


 やはり、ダメなのか......。


「ただし......方法が一つ」


「ッ‼︎」


咄嗟に顔を上げる、


光が、希望が込み上げて来る。


「奴を倒す事」


「あ......え?」


 アレを倒す......?


「そんなの......できるわけがないッ‼︎」


 できない......絶対に、


 思い出すだけで......今でも血が、芯が凍える。


 絶望感が俺を支配していく。


「奴には勝てません」


「そんなの‼︎ わかってんだよォォォ‼︎‼︎」


叫ぶ、何処にもぶつけられない気持ち。


地面を踏み鳴らし嗚咽する。


「えっぐ......くそ.....くそ‼︎」


気づけば涙が流れている。

八つ当たりしかできない自分への失望感。助けられなかった絶望感。憎しみ。


もう......どうすることも出来ない。


「故に我の加護と最強の身体を与えます」


「......え?」


「聞こえませんでしたか?」


「いや待ってくれ、少し整理させてくれ」


加護? 身体? 

完全にアニメの話だ、アニメは二次元、創作普通そうだろ。

しかし違うッ‼︎ これは現実ッ‼︎

女神は複数の世界が存在すると明言した。

......試してみるか

俺はおかしな事を思い付き、女神に質問する。


「なあ、俺が生きてきた世界にはアニメや漫画と呼ばれる物語があるのは知ってるよな?」


「はい、それにその世界は幾つかは実在します」


本当に......⁉︎


「......なら話は早い、グランドエスケープって題名のアニメの世界は存在するのか?」


「はい」


「......‼︎」


グランドエスケープが存在する、その事実に俺の心は踊る


「まじかよ‼︎ じゃあキャルルも皆存在するってのか⁉︎」


アニメをよく見る俺だからこそこの状況を受け入れられるのかもしれない。


「はいそうです、それでは加護を授けます、宜しいですね?」


「ああ‼︎ あの化物を倒せるなら......‼︎ なんだってやってやるさ‼︎」


アニメの世界が存在する、その事実はアニメオタクの俺を奮い立たせるのに十分な要因だった。

俺は拳を高く挙げ女神に豪語した。


勇者降誕ブレイブイノセンス‼︎」


女神がそう叫び両手を俺に向けると轟音と共に文字が俺に流れ込んでくる。


「うお‼︎ うるさ‼︎」


......暫くすると何事も無かったかのように静けさを取り戻す。


 身体は何も変わった感じがしない、本当に何か変化があるのか?


「女神......様、どうして俺にここまでしてくれるんですか?」


今更だが女神様の言っている事は本当なのかも知れない。

......今までの俺の口調失礼だったな。


「汝がこの宇宙で唯一、奴に対抗できる素質を持つのです」


俺だけが唯一? 何で?いや、考えてても仕方ない


「何で俺だけなん......ですか?」


「いずれわかります」


なんだよそれ......


「奴の名は堕天神ルシファー、次元を超越する力を持ち全ての魔の者を従える王、世界の命運は汝次第です‼︎ 宇宙を救ってください‼︎」


女神様が頭を下げる、これは余程の事なんだろうな。


「強くなるのに最適な世界に送還致します、ルシファーは超越者、貴方も世界を超越しなければ奴を倒すことなど不可能、世界を超越すればヤツの住む根城まで自力で行けるはずです」


「......」


 気持ちが強くなる、死ぬ前ならこの状況に動揺していたのだろうが、加護の影響だろうか?


「頼みましたよ......」


女神様が俺に手をかざす


「え、最強の身体は? 最適な世界って?」

ちょ......意識が......あ..................

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ぬいぐるみが最強の世界〜加護と知識で無双〜 うっちー @00056565656

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