第307話 件の辺境伯は……
「……そもそも出口があるのか?」
「……ダンジョンに出口がないパターン何てあるのかよ」
遂に最悪の想定を口にしたテイファ。
これまでかなりの時間を割いて、見当を付けた付近をずっと探しているが出入り口が見当たらないので、俺も徐々にそんな気はしていたが敢えて言わなかったことなのに!
「ああ。
ロテッシオの想定では生まれたてのダンジョンは、出入り口がないらしい。
ある程度育つとダンジョン内の魔力が飽和して、外部へと裂け、出入り口になる。
……いや、自ら逃げ道を用意するのだったか?」
「どちらでも良い……。
今肝心なのは、ここが若くて出入り口がないかもしれないと言う事実だ」
最初からロティを同行者に加えるべきだったかと軽く後悔しながら、今後の行動を考える。
「良くないぞ?
ただの裂傷ならダンジョンと外界の最も距離が近い箇所だろうが、ダンジョンが逃げ道として用意するなら、魔力の薄い場所になる。
私達が暴れるのは不味い」
つまり、自分達で出入り口発生箇所の目測を台無しにしていた可能性があると言うことだが……。
「……なあ、何でお前は何時も何時も肝心な情報を切迫してから出すの?」
「そんなの普段それで困ら。……何故だろうな?」
「いや、そこまで言ったらもう隠せないから!
やっぱり脳筋じゃないか!」
脳筋発言を途中で止めて誤魔化そうとする
「うるさい! "第一章の主"!
お前にだけは脳筋呼ばわりされたくないぞ!」
「何を!
……ってやめだ!
どうにも手が出そうになる……」
「……そうだな。
お互い"必殺技"しかもっていないからな……」
こちらの傷を抉ってくる嫌な妹に反論し掛けて、すぐに頭を冷やす。
テイファも自分の能力に恐れがあるようで、こちらの停戦にすぐ従ってくれるから助かるが、実際のところ、
「どうだろうな?
テイファは俺に勝てるイメージある?」
「……。
……難しいな。
正面衝突なら、そちらの魔力切れで拒絶が消えると同時に直撃かと思うが……。
ユーリスなら、2つ3つと拒絶力場を制御出来るよな?」
「……どうだろう?
テイファの攻撃を止めながら、それだけのリソースを用意できるかな?」
テイファの能力は簡単に言えば、最強の矛。
物理、事象はもちろん概念すら穿ち穴を開ける。
単純で強力な能力。
対して、俺の能力は概念すらも阻む拒絶の力。
互いにぶつかり合えば文字通り矛盾でしかない。
おそらく正面からのぶつかり合いでは、永遠に決着が付かないだろうが、双方の魔力総量に差があるので基本的に俺が負ける。
だから勝つための立ち回りをするわけだが……。
どう考えても、殺し合いにしかならん。
「……そうか。
さて、現実的な話に戻そう。
まず、大前提ここは本当にダンジョンか?」
「おーい。
いきなりこれまでの行動を全否定かよ?」
「しかし、検討の余地がある。
良いか?
ここはお前のスマホとやらを介して、私達の意志が混じった精神領域ではないか?
と少し考えてもみたんだが……」
いきなりぶっ飛んだ方向に話が進むと思ったが、確かに1度立ち止まって再検討するべきだ。
何せ、
「それだと良いな。
もう何日経ってるんだろ……。
絶対にシュールが怒っているだろ。これ……」
「こっちも姉上にネチネチと嫌みを言われるんだろうな……。
やめぃ!
嫌な現実を思い出させるな!
それよりも考察だ!」
「ない!
俺とお前の2人の精神防御を破る精神汚染が可能か?」
「……ないな。
残念だが……」
現実逃避だと切り捨てて現実を突き付ける。
幾つテイファの能力でも本人の精神汚染は不可能だろうと……。
「次、ここは異世界」
「なし!
最も繋がる可能性が高いのは地球だ。
それ以外への接続は考えにくいし、ランダムで選ばれた先がスマホ内のゲームと酷似?
しかも俺達の魔力には干渉しないなんてあり得ない」
「じゃあ何だ!
お前も意見を出せ!」
「俺のスマホを核にしたダンジョン」
「他を出せよぉぉ!!」
逆ギレ気味に文句を言うので、1番確率が高い推測を出す。
……無茶言うな!
「どうすれば良いんだ?
ユーリスは役に立たんし!」
「大きなお世話だ!
お前だって謎解きでは役に立たん!
……先ほどの情報をもっと早く出してほしかったぞ?」
「どういうことだ?」
「……良いか?
ダンジョンが育っていないから、出入り口がないなら?」
「!
ダンジョンが育てば良い!
お前、天才か?」
「……やめよう。
何かテイファに手放しで称賛されると失敗する気がするんだよな……」
「失礼な奴だな!
さっさと向かうぞ!」
冗談だと捉えているテイファが、これまでとは逆方面へ進み始めるが、俺はマジで不安である。
……まあ、行くしかないんだがな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます