第203話 迎撃ガーディアン

 都市群に入ってからはワームの攻撃が水平方向のみとなり、かなり楽になった。

 土の中を泳ぐように移動してくるワームもさすがに空は飛べず、また舗装された地面もぶち抜けないようなのだ。


「…純粋に古代の技術が優れているだけだろうがな」


 舗装に使われているアスファルトもどきにしろ、ビル群に使われているコンクリートもどきにしろ、俺の斬撃で少し傷を付けるのが精一杯の強固な防御性能を誇っている。

 窓枠にはめられたガラスもどきも異様に硬いし、古代の技術が現代より相当高度だった証拠だろう。


「住んでいたのは現代の人間と大して変わらない背格好だろうがな…」


 ビル群の入口にエレベーターらしい設備の造りやボタン、取っ手の位置が日本で慣れ親しんだ構造に近いので身体の構造が違うとは思いがたい。

 ……まあ目玉の数は違ったみたいだが。

 ビルの上階層には結構な数のミイラが転がっていた。

 こう言う廃墟ってのは何もないか、白骨死体のどちらかだろうにと文句を言いながら、自身の驚きを誤魔化した。


「考えてみれば当たり前の話だったんだがな。

 この街は何らかの形で急な災厄に見舞われ、住民は避難出来なかった。

 そんであのワームが発生してビル上層に孤立。

 食糧もない状況で餓死して、ビル群は衛生的にも気温的にも安定していたのだろう。

 日本の即身仏のようなミイラが出来上がった。

 …ワームどもは音に反応するようだな」


 暗い地中で視覚が発達しなかったか退化したのは当然として、嗅覚も鈍い。

 上層にいる人の匂いが辿れないくらいだから人間と同等以下と言うところだ。


「さて、そんな都市の考察はこれくらいにして、中央部に辿り着いたんだが…」


 …公園である。

 こういうののパターンとして、中央部には明らかに未来的なデザインのタワーみたいなのがあったりするんだが?

 ランドマーク的な奴があるんじゃないのか?


「魔力源となる設備を都市の他の位置に配置?

 …効率が悪いな」


 沸いて出てくるワームを切り伏せながら、考えを巡らせる。

 外壁が反っていたので円形の都市と考えたが違うのか?

 それとも送電線みたいな物で街に動力を供給?


「鬱陶しい!」


 人が考え事をしている最中にもワームが襲ってくる。

 これまで以上の数が本当に鬱陶しい!

 …あ、そうか!

 ワームが沸くならそこに魔力源があるのが必然っと言うわけで、


「あそこか!」


 ワームが出てくるのは地下鉄の駅口のような設備。

 ウジャウジャいるワームを蹴散らしながらそこへ突撃する。




「…偽装だな」


 地下鉄の駅口のような形状は地上部だけで階段を2回折り返すと宇宙船の中のような近未来的なデザインの通路に出た。

 降りた先から公園の真下付近となる方向をみれば、巨大な水晶の塔が立ち、その前にデカイロボットが見える。

 どうやら、この街はそれなりの知性体と戦う防衛都市だったようだ。

 地上部に目立つ塔があれば攻撃されると分かっていて地下に造り、その上で迎撃用のガーディアン。

 地上部にあった街で敵性存在は飛行能力を有する可能性ありと言う具合か?

 同族間の戦争、…ではないな。

 地下設備への移動口よりも大きい存在だろう。

 同族同士なら間単にここへ辿り着ける可能性が高い。

 …大型の飛行能力持ちの知性体。

 ドラゴンじゃないだろうな?

 条件が該当しすぎている。


「はあ。

 どちらにしろ、…行くしかない」


 あのガーディアンロボットと戦う可能性も高いが、あれを放置する選択肢はない。

 ゲームで言えばイベントボスバトルだろうな。

 倒さないとイベントが解決しないのだから、しょうがない。


『アラート! アラート!

 敵性魔力を感知!

 魔力波長から"女王"である可能性が著しく高い!

 対応パターン5を適用とする!』


 勇んで進めば、やはりイベントボス戦を想像させる電子音声が響く。

 …女王と言うのが良く分からないが?


『都市中枢の自爆による"女王"の足止めを実施。

 防衛都市トラープに住む住民へ、総督府からメッセージあり。

 諸君らの犠牲は人類存亡の礎となる。君達の死を無駄にはしないと約束する!』


 電子音声の最後に低い声のおっさん声が響くが、それどころではない。

 慌てて竜化を行い、衝撃波に備えるのだった。

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