第204話 脱出と大幅なレベルアップ

 轟音と衝撃から身を丸めて耐え忍んだ俺は半球状の窪地の底で目を覚ます。

 身体の節々に痛みを感じるものの致命傷には程遠いダメージ量であったらしいと安堵する。


 見るからに強そうなガーディアンロボットがいたのにいきなり施設ごと自爆と言う最終手段に出るとは想像もしなかった。

 自爆間際のアナウンスを思い出す。

 …魔力の質が古代人達の敵である"女王"とやらと一緒だったと言っていたが、それは竜気のことだろうし、古代人達は竜種と敵対関係にあったと言うことだろう。

 そんな敵の軍事施設中枢に足を踏み入れたおバカな真竜とそれを敵の上位存在だろう"女王"とやらと勘違いした間抜けな中枢制御装置の空回りは、台地を完全に消し去り、巨大なクレーターを作り出すと言う結果を巻き起こした。

 将来的には巨大な湖にでもなるのではないか? と思いつつ、グリンダ平野側の平地まですり鉢状の地面を登る。


「…レベル42。

 急に上がったが何が原因だろうか?

 …まあいいか」


 巻き込まれたイビルワームの経験値かもしれないし、トラープとか言う都市の自爆のエネルギーを吸収したのかもしれないが、2度と同じ経験をする機会もないだろうし、無駄な考察は諦める。

 検証出来ない現象は回答を求めようもないので、諦めた方が早いのだ。

 それよりも、


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前 ゼファート 性別 男

種族 命竜(人化)

レベル 42

称号 聖なる盃を司る王竜

能力

 生命力 9219/9444

 魔力  8990/11020

 腕力  3434

 知力  3554

 体力  5777

 志力  3323

 脚力  1754

スキル

 技能 鑑定(18)

    解析(2)

    剣術(17)

    エナジーブレス(2)

    ヒールレイン(4)

    ライフギフト(7)

    慈悲の燐光(ー)

ユニークスキル

    竜へ至る魂(60)

     アビリティ

      竜の心臓(ー) 竜の鱗(ー) 

      竜の瞳(ー)  竜の爪(ー)

      竜の翼(0)  竜の角(0)     

     エキストラアビリティ

      人化(ー)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 種族がついに逆転して竜になる人間から、人間に変身する竜に変わり、人の姿の戦闘力が4桁に到達している点こそ問題だ。

 …いよいよ怪物染みてきた。


「名前がゼファートになっているのも気になる。

 まだユーリスなら理解出来るのだが…」


 知名度の問題か?

 竜形態で暴れすぎたせいで、ユーリスよりもゼファートの知名度が上がった?

 …考えるだけ無駄か。

 今やるべきことはさっさと駐屯地に戻って今後の対応をすることだ。

 正式に譲渡されていない土地を破壊した以上は、賠償金を払う必要が出てくるかもしれない。

 まあ、まともに統治もされていなかった土地だし、雀の涙程度の賠償金だろうが、こっちが払わされたと言う事実が厄介だ。

 額の大小よりもこっちにも落ち度があったと言う既成事実が出来上がる方に問題がある。

 敗戦の事実と絡めて、終戦交渉で譲歩させられたような空気が出来るのは好ましくない。

 侮られると言うのはそれだけ不利益を被りやすい状況となる要因だ。

 それよりも管理責任を問い質して向こうから取る賠償額を引き上げるように交渉しないとダメだな。

 それも交渉が成立する前に…。

 下手に成立した後に、乱暴な引き上げ交渉をしたなどと言う噂が立てば、我々との交渉自体が嫌煙されかねない。

 そうなったら、潔く賠償金をこっちからも払った事実を受け入れよう。

 誰だってすぐに卓袱台返しをする人間とまともに取引しようなど考えないからな。


「今日が交渉開始から5日目くらいのはず。

 急げば十分間に合うはずだ」


 そう、普通に考えれば双方の膨大な被害状況の精査と条件の擦り合わせが、数日で終わるはずがない。


「極端に優秀な官僚とかが来なければ問題ない」


 と、フラグになりそうなことを呟いて…。

 ファーラシアとサザーラントに挟まれた立地で国を支えてきたゼイムの官僚が来ることに一抹の不安を感じる。


「ゼイム王国自体が両国の干渉地帯だったはずだ。

 そこまで優秀な官僚がいるとも思えない…」


 そう言いながらも東に向かって急いで走り出した俺だった。

 しかも、この出来事が各地にもたらした被害とその結果を後日受け取ることになるとはこの時点で思っていなかった。

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