第202話 真竜、途方にくれる
「……」
視線を上に向ければ、針のような小さな穴が見える。
俺が落ちるサイズだから直径1メートル以上のサイズがあるはずだが、その穴があれほど小さいとなるとここは地下数十メートルと言う所だろう。
俺の立つドーム状の地下空間の中はおびただしい血の海と化している。
先程まで竜化した俺が芋虫状の魔物の大群相手に大暴れしていたのだから当然かもしれないが……。
「ミルト台地はこのイビルワームの作った巣の外壁だったと言うことか…」
最初はドーム状の外壁だったのが砂や土砂で徐々に横へ広がり、登頂部は削れて台地状になったと言うことだろうと推測する。
疑問解消出来て、スッキリ!
…とはいかない。
出るだけなら、3日待って竜化して飛んでいくだけだが、ここに都市を置く予定の俺としては、この巣の規模と残っているイビルワームの殲滅が必須である。
放置して場所を移動したワームがイグダードやゼイム、グリンダ方面に巣を作ったら大変困るし、台地の調査にやって来た調査団が俺と同様にフリーフォール体験したら、まず助からんだろう。
「1人で迷路状の魔物の巣を探索して…。
魔物を根絶やしにして脱出。
…しんどい」
今頃は野生動物を狩って、のんびりとアウトドアをしている予定だったのに。
「適当に行くかな」
ドームの脇にある穴の中で最初は目についたものを目指して歩き出す。
ゲームのイベントみたいだと思いながら……。
洞窟の上下左右から襲ってくるワームを捌きつつ、宛もなくさ迷う。
既にどちらから来たか分からない…。
どうやら、葉脈のような斜めに合流している交差点が大量にあったらしく、数分歩いて引き返そうとした時には手遅れとなっていた。
「せめて広い空間に出なければ…」
竜化できる空間さえ確保すれば、そこで数日過ごして、天井をぶち抜くと言う解決策もある。
、とと!
上から降ってきたワームを切り伏せる。
? 気のせいか?
身体能力が上がっている気がする…。
「……」
やはり、レベルが急速に上がっている。
それで能力値が急上昇しているようだが…。
大して強くもないし、気にせず倒しまくったがこのワームには何か秘密が?
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名前 なし 性別 男
種族 イビルワーム
レベル 82
称号 悪意を持つマナ
能力
生命力 0/814
魔力 0/3044
腕力 221
知力 37
体力 388
志力 1133
脚力 233
スキル
技能 貯蓄
ユニークスキル
カオスフィールド
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「…ユニークスキル『カオスフィールド』。
不安定な魔力をまとうことで強力な魔術耐性を発揮し、志力を3倍に引き上げる」
これだろうな。
ワームを倒した時に不安定な魔力がワーム体内の経験値と一緒に相手に吸収されて相手のレベルを上げやすくしているのだろう。
メ◯ルスライムだな。
普通の一流冒険者だと瞬殺されるレベルの強力なモンスターだが。
「常時魔力を放射しているのに元気に動き回っていると言うことは、常時補充されていると言うことだろうし、供給源を破壊すれば解決かな?」
…常に魔力を供給される魔物が徘徊する坑道、ダンジョンと同じじゃねえか!
まあいい。
速やかに魔力源を破壊して脱出することにする。
レベルが高い奴が出て来た方を目指せば辿り着けるだろうと考え、…結局、宛もなくさ迷うのだった。
それから2日後。
更に宛もなくさ迷い続けた俺は、たまに仮眠を取りつつ探索を続けた。
意外なことにワームは洞窟の片隅で静かにしていると襲ってこないので休息そのものは短時間ながら確保出来たのだが。
やはりそろそろまとまった休憩時間がほしいと思っていた俺の眼前に、広い空間とそこに大小連なるビル群のような人工物が広がった。
「…そんな気はしてた」
自然の洞窟内に魔力源とそれを源とするワームが自然発生するなら、今頃この大陸はワーム天国と化しているだろうと考え、ここにしかワームの国がないなら原因となる特殊な何かがあると考えられた。
そういうパターンで一番多いのが古代の都市のインフラ設備が劣化して魔力漏れを起こしているだろうと推測出来ていただけに、古代遺跡を見つけた感動はないのだった。
むしろ、自分のレベルが28まで上がったことに驚いたくらいだった。
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