第184話 ダンベーイ地方破壊
メテオストライク作戦。
竜化して、その都市の行政府を担う城に突撃破壊して、混乱状態となった都市へ義勇軍が突撃する。
ゴリ押し戦術であるが、1回目のダンベーイ、2回目のペルシャン共にあっさり成功する。
完全に奇襲戦であるダンベーイはともかく、少なくともペルシャンは上手くいかないと言う考えでいたのだが、
「誰もドラゴンと人間が共闘するなんて考えていませんよ?」
副官を務めているキンカクに笑われるのだった。
「壊れた城と言う証拠があってもか?」
「その証拠を見た奴がこの街に何人いるんですか?」
「ん?」
今一分かりにくい表現だが…。
「我が軍はダンベーイ制圧後、帝国の奪還部隊への対策として2000騎を置いて、そのままペルシャンに向けて移動しましたよね?
閣下の竜化能力が回復するまで1日待機したとは言え、敵方の伝令報告とペルシャン襲撃のどちらが先かと言うところですよ?」
確かに写真電話も何もない世界だからな。
仮に伝わったとしても竜との共闘を信じるかどうかは微妙だし、偶然竜の襲撃があり、うちの軍はその混乱に乗じたと言われた方が連中も納得するかも。
シュミレーションゲームじゃないんだから、占領したらすぐに敵国が防備を固められるわけがない。
しかし、
「ダンベーイに残す兵力とペルシャン襲撃の再編。
王国は最初からペルシャン襲撃までを想定していたな?」
戦功の稼ぎやすさも違うし、守備戦と攻略戦では勝手も違う。
にもかかわらず、あんなにあっさりと再編出来るのは事前に振り分けていた証拠だ。
「宰相閣下と軍務卿閣下はラガート領の話から可能と言う判断でした。
閣下のおっしゃるダンベーイ以降の苦戦は悲観論であろうと言うのが、義勇軍の大半の意見でしたね」
「先に言えよ!」
まさか自分が1番、戦力を過小評価しているとは思わなかった。
…非常に恥ずかしい。
「いえ、指揮官が最悪を想定するのは当然でして…。
それにラーセンでの出来事を真剣に検討していれば、ペルシャン攻略は閣下の想定する事態でしたでしょうし」
「…ダンベーイに竜が現れた時点で沖合いに船を待機させて、撤退かこちらへの再奇襲と言う判断が出来たはずだしな」
ペルシャン行政府への突撃で停留中の船の多くが激しい波に揺られて、航行前の点検が必要になったらしい。
船の無い海兵は戦力にもならずすぐに降伏した。
「これ幸いと投降してきましたね」
「そうだな。…まあ気持ちは分かる」
船が使えない状況になった艦長以下の海兵は守護竜義勇軍への入隊を希望した。
海洋国家であるサザーラントでこのペルシャン海軍は2軍扱いだ。
サザーラントが主に仮想敵国としているのは南の大陸にある旧宗主国や西海岸にある兄弟国家であり、これらの国と制海権を奪い合っているのに対し、ペルシャンから北はアガーム東部まで海岸線に港がない。
マーマ湖を囲う山脈の南端がそのまま海岸線の防壁となり耕地が確保出来ないので入植が進まず、中継港のない航路はあまり発達しなかったのでペルシャンから北への海への防備は海賊対策くらいである。
抑え込むペルシャン行政府の人間がいなくなれば、不満が爆発するのも当然で、しかもそんな2軍扱いのペルシャン海軍だが、義勇軍に参加すれば唯一の海洋戦力である。
雑に使うわけにはいかない。
現役で使わないにしても、教育係としての地位が保証されるわけで…。
「鞍替えしたい気持ちも良く分かる」
「目敏い証拠ですよ」
「ふむ。
…さて、俺はそろそろダンベーイに戻って防備を固めるから、キンカクはペルシャンの防衛を任せるぞ?」
「はい。
竜化は…」
「もちろんしない。
何処にいるか分からないってのはそのまま優位に働くからな。
とは言え絶対を保証できる訳じゃないからな?」
「やむを得ない場合もあると言うことですね?」
「ああ」
航行中に竜に襲われれば一溜りもないのだから、竜がいるかもしれないペルシャンへの攻撃は拒否したいのが本音だろう。
…まあ、1番近い海軍が古都サウザンポート海軍でペルシャンまで来るのは相当に時間が掛かるし、下手に海軍を動かして他国に領海を奪われるのも嫌だろう。
動くのは陸軍オンリーの可能性が高い。
ダンベーイ守備戦から始まる俺達の方が危険性は高いわけだが、どうなることやら。
…少なくともこれからが本番だな。
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