第105話 地獄の入り口

 一刀両断。

 巨体を誇るグレーターデーモンではあるが、そのステータスは、


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名前 なし 性別 なし

種族 グレーターデーモン

レベル 24

能力

 生命力 0/162

 魔力  0/322

 腕力  122

 知力  110

 体力  101

 志力  169

 脚力  119

スキル

 技能 闇魔法(4)

    爪術(4)


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 と言う具合に完全な見掛け倒しになっている。

 …いや、これでも俺以外のパーティメンバーと同格だし、十分強いのか?


「さすがです。主様」

「まあ、能力差が大きいからな。

 賢印も周囲の警戒ご苦労」

「いえ、御身と行動する栄誉を与えられた身としては当然の役割でございます」


 俺の言葉に恐縮する5人兄弟の次男。


「うむ。…他の連中は上手くやっているのだろうか?」

「既にこのダンジョンは庭のような物です。

 私達のいる18階層クラスでは危険ですが、10層近辺ならソロでの探索も余裕です」

「それもそうか」


 賢印の言葉に同意し、前に潜った時10層辺りで遭遇したデビルのステータスを思い出す。

 軒並み50後半くらいで、生命力と魔力だけが突出していたはずだ。

 対して、上を探索している連中は、物理系のステータスが100以上、魔術系のステータスが70以上だった。

 あのステータス差なら、集団に襲われてもどうにでもなるだろう。


「高品質応急治療薬ですね。

 これだけでも1人なら1年分の生活費になりますね…」

「うん?

 そうだな。

 だが、マジックアイテムと比べるとかなりショボい収入に感じる」

「桁が1つ上がりますからね…。

 誰もが危険を承知で縦穴に接続していない階層を目指すわけです」

「そうだな…」

「どうかされましたか?」

「今お前の手にあるアイテムな。

 それさえラーセンの『鬼の祠』では高価な換金アイテムだ。

 …どんだけバランスの悪いダンジョンだったんだ?」

「『鬼の祠』が稼げないダンジョンと言うのは有名みたいですよ?」

「そうなのか?

 ラーセンでは有名だったが?」

「どの冒険者も口を揃えて言います。

 浅い層ではゴブリンしかでないダメなダンジョンだと…」


 確かにその通りだな。

 今は賑わっているのだろうか?


「そういえばレンターとジンバル侯が相談していたな。

 マジックバッグを献上したら男爵位を与えると公示するらしい」

「それはまた思い切りましたね」

「ああ。

 しかもご丁寧に26層のゴブリンポーターがドロップすることも発表するらしい」

「…多くの犠牲者が出そうですが?」

「それほど魅力的と言うことだ。

 それに26層まで行けば稼げるダンジョンなのは間違いない。

 そうやってダンジョン探索を活性化すれば、貴重なアイテムが集まり国力が増すわけだな」

「そういえば、店の方にも各国の密偵が顔を覗かせているようです」

「そうか。思ったより早いな」

「…マナの方は大丈夫か?」

「むしろそういう連中が盾になっている雰囲気があります」

「それなら良い。

 『ディープライトニング』を誘導し、『フォックステイル』がこの街一番の冒険者になるように画策した甲斐がある」

「それでマジックバッグの情報を彼らに伝えたのですね?

 ずいぶんアッサリと言われたと思っておりました」


 このダンジョンで出会ってすぐにバラしたことを誰かに聞いたのかな?


「他にも目的はあったがな。

 王都でのレンター生存の信憑性を上げるとか…。

 そっちは無駄に終わったが、未だに『ディープライトニング』がラーセンにしがみついているって噂を聞く限り、誘導は成功していそうだ」

「さすがです」

「そう褒められることでもない。

 それよりもう少し下の階層を目指すぞ?

 領地開発時に金貨を20万枚くらいは持っていきたい」

「はい。

 フロアボスに挑まれてはいかがですか?」

「20層だろ?

 どんな相手だろうな?」

「分かりませんがよほど問題はないのでは?」


 賢印の信頼が痛い。

 けど、確かにグレーターデーモンでこの程度だろ?


「…行ってみるかな。

 どちらにしろ19階層以下までは潜る予定だし、20層以下の雑魚は問題なかったからな」

「お供します」

「…狙いはユニークスキルか?」

「実は…」


 豊姫から聞いた話では霊狐達はレベル35前後でユニークスキルを獲得することが多いらしい。

 そしてこの賢印はレベル33。

 ならば俺と一緒に潜っている間に獲得する可能性があるし、フロアボスを目指すなら必然的に時間も長くなる。


「正直な奴だ。

 そういう奴は相手するのも楽で良い」


 兄弟でユニークスキル一番乗りをしたいのだろうが、コイツらが互いに争うわけでもない以上は手を貸してやろう。

 コイツがそのスキルで兄弟を助けることは回り回って俺の利益となるのだから。

 俺はそう思って下層を目指した。

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