第24話 異世界人は争乱を呼ぶ
ダンジョンを出た俺達は、こっそりと逃げ出すロランド王子と護衛を見逃して、ボーク侯爵家に戻った。
随行人数がかなり増えたがしょうがない。
戻ってすぐに出迎えてくれたメイドに勇者組を託して、セイル経由で老侯爵とその嫡男を集めてもらう。
事情を説明した2人は共に難しい顔をする。
「まさかダンジョンに行って、勇者を持ち帰るとは思わなんだ。
何をやっとるんじゃ?」
「うむ。『ダンジョンに出会いを求めるのは間違ってる』はずなんだがな」
「なんじゃそれは?」
「気にするな。
勇者がまともだったから見捨てるのは忍びなくなった。
それは事実だが。
それ以上にあの駄目王子に勇者を預けておけば、その内クーデターを起こしただろうと思う」
「そんなことが本当に?」
「やるな。あれは状況を無視して、自分が最も偉いと常に思っているタイプだ。
将来、領地を得てから爆発されるより、早い段階で爆破処理した方が被害が少ない」
「性急すぎないかい?」
アストルの言い分も分かる。
あえて藪をつつくのは危険だ。
だが、いつか爆発するなら、事前にコントロールした方がコストと被害の両面でマシだ。
それに、
「別に今日や明日爆発させる訳じゃない。
しっかり脅してあるから、2月くらいは持つと思う」
「何をやっとるんじゃ。仮にも王族を」
「それはこの国の人間だから言えることだ。
俺達の感覚ではただの加害者に過ぎない」
「じゃが」
「そこは文化の違いだと割り切ってくれ」
「いや、父さんも祐介殿も落ち着いて、それより脅しが効きすぎて長く力を溜め込む結果になったら危ないだろ? そっちが問題じゃあ…」
興奮しそうなロッド翁の言い分を遮ると、アストルが懸念を口にする。
「それはない。
あの王子自身はそれで良いかもしれないが、その下に付いてる貴族にはそんな余裕がない。
反主流派の連中はここでロランドが王位を得ないと困窮していくことになると不安を募らせるからな。
1ヶ月以上3ヶ月未満と言うところだろう」
「時間がないではないか!」
「これでも延ばした方だ。
勇者が王子の元を何も言わずに離れれば、そこから数日で暴走が始まっていただろう」
「しかし、その間に何が出来る!」
「腹案はある。
まず明日から数日は俺は勇者と共にダンジョンに籠る。
勇者がある程度実力を着けたら、第2王子の私的な護衛になってもらう。
それで王位継承権の有る者がいなくなると言う最悪の事態は回避できるだろう」
それが起きたら、俺達の完全敗北だ。
俺は家族を連れて、この国から逃亡することになるだろうし、ロッド翁達は良くて隠居、悪ければ暗殺されかねない。
「次いで、派閥の貴族にそれとなく注意をしてほしい。
最悪の場合、王都は内乱状態になる」
「それなら騎士団に国境の強化を依頼しておくべきだな」
「そうじゃな。シモンとジャックにも内情を伝えよう」
「おいおい、下手な知り合いに言って向こうを刺激すれば最悪時期が早まるぞ?」
「シモンとジャックは息子達じゃよ。安心せい」
「それなら…。大丈夫だろうか?」
次男と三男ってことは、将来兄(アストル)に使われる立場になるわけだろ?
そんな連中が好機を逃すかね?
まあその辺の心配は俺の領分ではない。
「明日は朝一でガンツのところで装備を見繕って勇者達とダンジョンに籠る。
ロベルト達は通常の業務に戻してもらえるか?」
「そうじゃな。手配しよう」
「それじゃあ、俺は娘の機嫌を取ってくる」
「ハハハ。お主でも娘には勝てんか?」
「当たり前だろ?
大事な一人娘だぞ?」
そう言って執務室を後にした。
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