第22話 勇者対オーガ
巻き込まれのおっちゃんと合流した俺達は、それまでの苦労が嘘のようにサクサクと進み、フロアボスのところまで来ていた。
話を聞いた感じだと既に1度討伐を成功させているって言うし、このおっちゃんは絶対チートで何か隠してるに違いない。
他の皆も同意見なのか、すんなりおっちゃんに付いていくことに決まった。
「俺が左、ロベルト達が中央で、勇者組が右の1体ずつで良いか?」
おっちゃんが気楽そうに割り当てをして、一緒に来ていた騎士達が大丈夫だと返事をしていた。
て、言うか。
あの化け物を1人で、倒せるのかよ!
「おう。勇者組は御影がメインで壁役をやって、他の者がアタッカーだ。能力値的には戦えるし、俺がフォローもするから焦るな」
「了解! おっちゃんこそしくじるなよ?」
「誰に言っている。やるぞ」
御影がおっちゃんへの確認を兼ねて、問い掛けるが平然としてるし。
気楽そうに向かっていくおっちゃんに呆気にとられた俺達も急いで反対側のオーガに向かう。
「掛かってこい!」
おっちゃんと一緒に来ていた騎士の1人が叫ぶ。
あっちは自分達のところまで誘き寄せる気だろう。
……え?
こっちに向いていた目が騎士に向いた?
何で? って疑問もあるけどひとまず斬り付ける。
こっちにヘイト集めないとヤバいし。
……超硬い。
動物より木を斬り付けたような感触だった。
「オーガのやつ、怒り状態になってるな」
「何で急に?」
「ロベルトが原因だと思うが……」
不意におっちゃんがオーガの状態を呟いて、更にその原因を口にする。
「あいつ、いつの間にか挑発のスキルをゲットしてやがる。
あれが発動したんだ!」
「それってヤバイんじゃ!」
「ああ。だがな、ロベルトどうする?
1体貰って良いか?」
盾で受けるのに必死の騎士に問い掛けてる。
いや、死にそうじゃん!
「あなたは本当に悪魔ですか!
私達が3体同時に相手して勝てるわけないでしょ!
助けてください!」
「よし、言質取った。最初の予定通りにやるぞ」
「おっちゃんだけ余裕かましすぎじゃない?
……別に良いけど」
御影の呟きに内心で同意しつつ、元々、割り当てられてた1体を背後から攻撃する。
しっかり腰を落として、気合いを入れた一撃でも殆ど、表面しか削れていない。
……硬い。
これは斧とか重量武器で叩き潰す相手だ。
「ハガッァ!」
そんなことを思っていると、駄目王子が変な奇声を上げていた。
……あいつ手伝う気もないのかよ。
「さて、勇者組は。
……余裕かな。
ロベルトは無理かな?
最初に体勢を崩されたまま立て直せていない。
せめて、1体になれば、良いんだろうが……」
「勇者がオーガを仕留めるのが早いか。はたまた、ロベルトが一発貰うのが早いか……。
……当然ロベルトがやられる方が早いわな」
おっちゃんは呑気な声を上げていた。
何をしてるんだよ!
割り当て分のオーガがいるだろうに、……いない?
「さて、悪いがロベルト。俺も参戦するぞ?」
おっちゃんが騎士に声を掛けた。内容的にも自分の割り当ては始末したみたいな言い方。
……マジかよ。
「いえ、大丈夫です。もうすぐですから!」
「もうすぐ? ……ああ」
騎士とおっちゃんの言い合いに気を取られていたら、オーガがこちらを振り向いた!
ヤベェェ!
すぐに後ろに下がって構え直す。
俺達がいた辺りにこん棒の振り下ろしが炸裂したのはその直後だった。
「勇者にとってのラッキータイム終了。ロベルト達はよっぽど大丈夫だろうし……。
俺は先に宝箱開けているから、ピンチになったら呼べよ?」
冷や汗を掻いてる俺達におっちゃんが呑気に声を掛けてきたけど……。
「どう考えても今が一番ピンチだよね?」
呆れた声を出す大池に激しく同意だ。
「御影頼む!」
「やってみる!」
中野が御影に頼んで前に出てもらう。
おっちゃんが事前に言っていた通りのフォーメーションになりそうだ。
そして一撃だけ受けて、
「ごめん、無理!」
と言って避け始める御影。
一撃を受けた盾は大きくへこんでいた。
「こんな普通の盾じゃ話にならない。あの騎士みたいな大盾がいる!」
「どうするんだよ!」
「避けまくって隙を突くしかないよ。グレンデル戦だと思って!」
「バカ野郎。ゲームじゃないんだぞ!
一撃食らったら死ぬかも知れないのに!」
DSのボス戦で例えてくるけど、あっちは予備動作の大きい大攻撃だけ避ければ良かった。
こっちはただの振り下ろしが必殺攻撃になってる。
どう考えてもこっちの方がヤバい。
「……荷が重かったか。
ほいっと」
いつの間にか、オーガの前にいたおっちゃんが、大剣を振り下ろして、逆にオーガを両断して斬り伏せる。
やっぱりこのおっちゃん強すぎる。
敵に回さないように気を付けよ。
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