第8話 ダンジョンに立つ(現在5層目だけど)
一通りの準備を整えた俺達はダンジョンに入り、直ぐに定番のゴブリンを倒した。
……騎士としてモンスター退治をしてきたロベルトの助言で遠めに石を投げて相手の注意を引くことで整えた陣形に誘い込むと言う作戦を実行したら、俺の投げた石で直線上の3匹が頭を爆散、恐慌状態のゴブリンを背後から襲うどっちがモンスターか分からない状況だったが。
その後もサクサクと進み、5階層のフロアボス前の扉で一休み。←現在ここ。
「ダンジョンってこんな簡単にフロアボスまで着けるもんなのか?」
「あなたが強すぎるだけでしょ!
ゴブリンだって私が相手にすれば倒すまでに3回は斬り付けないと無理なのに、一振りで数匹まとめて輪切りとかどんな攻撃力ですか?!」
「いや、そんなこと言われても。
それにロベルトも途中から2回の斬り付けで倒せるようになっただろ?」
ベックが淹れてくれたお茶を飲みつつ呟くと、ロベルトがツッコミを入れてきたので軽くあしらう。
ダンジョンは下の階層に行くほど広がっていくらしい。
だから上の方の階層は突破に1時間も掛からない。
……戦闘力さえあれば。
一番最初、ゴブリン3体を相手にする戦闘で俺を除くロベルト達は10分以上の戦闘を行い、その倍近い休憩を必要とした。
1戦闘に30分で1層辺り4から5戦闘。移動時間を1時間としても、1層攻略に半日掛かる計算。
加えて、戦闘以外での大休止を考えると1日に2層進めれば順調なペースとなる。
対して今回の俺達は1戦闘を2から3分で終わらせて、追撃戦による精神的疲労はごくわずか。
2度ほど大休止を取ったがそれも30分程度でしかない。
結果、約6時間でここまで辿り着いた計算になる。
「ダンジョン攻略ってこんなものじゃないはずだ。
いくつもの苦戦を強いられ、心を削ってそれでも前を向く者に幸運の女神が微笑んで……」
「あ、『剣聖ベインの冒険』ですね!
私も大好きですよ!」
「良い話ですよね。現実はそんな簡単にはいきませんが…」
どうにもこの世界で人気の演劇らしい。
貧乏な少年がスラムの仲間達と共にダンジョンで成り上がる、この世界の少年少女のバイブル的存在と。
その話で盛り上がる仲間を放置して、鑑定スキルを発動させる。
対象は、ロベルト。入る前と比べると、
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名前 ロベルト・フォート 性別 男
種族 人間
職業 騎士
レベル 9→12
能力
生命力 48/48→58/62
魔力 11/11→11/11
腕力 19→26
知力 14→15
体力 28→37
志力 10→12
脚力 25→34
スキル
才能 剣士の才(2→3)
技能 剣術(3→7)
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となっている。対して、ベックは、
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名前 ベック 性別 男
種族 人間
職業 兵士
レベル 27→39
能力
生命力 28/28→35/35
魔力 3/3→4/4
腕力 12→18
知力 12→13
体力 20→26
志力 4→7
脚力 18→21
スキル
才能
技能
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となっている。ベックは基本的に戦闘に参加せず、倒した魔物の魔石を回収していた。
にも関わらず最もレベルが上がっている点から、経験値はパーティ全員に入り、レベルアップはステータスが低いほど早いと言う情報とレベルアップが早い者は能力の上昇値も低いと言う情報が手に入った。
そして全く上がらなかった俺のレベル。……困った。
「祐介殿、どうしたんですか? 黙っちゃって」
「祐介と呼ぶな。俺は『剣聖ベインの冒険』って話を知らないから話題に入れないだけだ」
「あ、すみません」
「『剣聖ベインの冒険』を知らないんですか?!
世の中にはすごい人がいるんですね!」
この中で唯一俺の素性を知らないヒーラーのアリエスが純粋に驚き、一瞬イラッとくる。
「ああ、休憩はこれくらいにして先に進みません?」
「まあ良い。
……先に進むのか?
フロアボスに挑むのは無謀じゃないか?」
「大丈夫です。ここのフロアボスはオーガで、出現数は大抵1から2体。
我々のパーティなら余裕ですよ!」
ロベルトの太鼓判って不安だが…、周囲はやる気に満ちているし、行くしかないか。
……不安だが。
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