第7話 おっさんが冒険者になると馬鹿にされ、……ないの?
朝早くに起こされた俺は食堂に通されて、同じ時間に起きているロッド翁の憐れむ視線を受けながら食事を取り。
革製の服と防具を纏わされ、鉄の剣を鞘ごと渡されて、屋敷を出発。
日の出前にギルドの中にいた。
「私達の冒険者登録をお願いします!」
お膳立てを整えた青年は受付嬢に目を輝かせながら、依頼をしている。
「お前さん、あれか?
貴族に付き合わされて潜る騎士か何か。
大変だよな。お役所勤めは。
気を付けろよ?
ダンジョンは外とは大分違うぞ」
近くの冒険者が肩に手を回して囁く。山賊面のわりに良い奴だったらしくアドバイスをくれる。
どうやら、ロベルトを貴族のどら息子。俺達をその付き人と思ったようだ。
……乗っておくか。
「ああ、ありがたい」
「へえ。素直に受け取るとは見込みはありそうだな」
「どう言うことかね?」
「騎士様のほとんどは戦いを専門にしてるから、俺等みたいな何でも屋の言うことなんて聞きはしねえ。
ダンジョンじゃそういう奴から死んでいくのさ」
「なるほど肝に命じておく。他に何かあるかね?」
「食料は忘れんなよ。
ダンジョンは不思議と明るい。ランタンは要らねえし、貴族の付き人なら浅い階層でレベル上げだろうから、中層みたいに亀裂を降りる必要もない、ロープも要らん。
その分、水と食料を詰め込みな。
迷って数日出てこれないこともある」
「助言感謝する」
「へん。良いってことよ無事に帰ってきたら一杯奢ってくれ」
「……忘れなければな」
おう! と言って去っていくおっさんを見送っているとロベルトが手招きをする。
「祐介さん。冒険者登録をしますので、ここに記名してください」
「分かった」
日本語感覚で異世界の文字を書きつつ、名前に迷う。
日本人の名前は違和感があるだろうし、ユースケ、ユース。
……ユーリス・マウントホークで良いか。
「これで良いか?」
「はい大丈夫です。
…こちらの水晶に手をかざしてください」
名前を書いた紙を隣の台にセットした受付嬢が水晶を指差すので、そちらに手をかざすと白く輝く。
「……今からでも冒険者登録は取り消せますよ?」
「どういう意味だ?」
「白色は戦闘系の才能が無い者の特徴です」
「なんだ、そんなことか。俺は鑑定スキルを持っているから知ってる。…問題ない」
「ちょっと待ってください!
鑑定スキル持ちなら引く手あまたでしょうに何で冒険者になろうとするんですか!
なんなら、ギルド長に言えばここでだって」
「いや、ダンジョンに用事があるんだ。そう言う訳にはいかない」
「そうですか。残念です」
鑑定は食うに困らないスキルだと判明した。
とは言え、俺はダンジョンを利用して元の世界に戻るのが目的。
選択は冒険者一択だった。
それ以降はトラブルもなく、ある程度の食料を買い込んだら、ダンジョンに直行することになった。
30後半のおっさんが新米冒険者になるのにてんで絡まれないのが不思議だったが。
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